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息抜きと閃き

宿に帰ってきたのはいいがまだ昼間で正直暇である。ならもう少し狩りを続けたほうがよかったのではと思うかもしれんが危険に長時間身を晒すと精神が疲れるのでほどほどにしているのだ。


「というわけでデートをしよう」

「……へ?」


俺はアイシャに今思った暇つぶしについて伝える。彼女とは毎日一緒に行動しているわけだがデートなんてしたこともなかった。

折角の少し態度が偉そうなものの従順な女奴隷なのだ、こういうのもありだろう。


「まあ、そのいいけど……。ご主人様の話って唐突よね」

「そこに関しては否定しない」

『ちなみに私のアドバイスはいりますか?』


いらん。心の中でそう返す。本当はお互い楽しむために頼るのが正解なのだろうが頼ったら負けな気がしてならない。だからその上品な笑い方はやめてくれ、俺の中のお前のイメージがぶれる。


『ではご武運を』


本当にこいつは茶々入れるのが好きだな。まあ今はユニのことではなくアイシャのことに集中しよう。この1週間一緒に生活してきて思ったのはこいつは乙女だということだ。

やたら恥ずかしがるだけでなく、恐らくべたなデート展開が好きだと言えよう。


「そ、それでどこに行きたいの?」


この質問からもわかるようにどこに行きたい?と聞かれるより手を引っ張られるくらいのが好きなようだ。だがこの質問は文字通りの意味でないと俺は読む。これは俺がアイシャのことをどれだけ理解しているか試されているのだ。


「とりあえず外に出るか、宿の人に飯がいらないってのも伝えとかないといけないしな」


その言葉にほんのりと顔を染める彼女に疑問を抱きながらも手を握り一緒に部屋を出る。


「レンの坊主、いつの間に帰ってきてたんだ?」

「さっきな、気が付かなかっただけだろう、今日は外で食べてくるから食事はなしでいい」

「お、デートか、楽しんで来いよ。相変わらずアイシャちゃんの扱いは奴隷にみえねーな」

「ああ、これでも大切にしてるんでな」


宿の親父に送り出されたわけだがさっきよりアイシャの顔が赤い。……ああ、そういうことか。本当にべたなのが好きだな。


「その、ご主人様?わざわざ変な言い回しをしなくても」

「いや、これ素だったんだが」

「立ち悪すぎ!?」


これも神的な容姿があってこそ許されるというものだ、創造主よ感謝します。自分で自分に祈りをささげてからのんびりと街を見て回る。本当のところは俺もまだ考えていなかったから時間稼ぎをしているのだ。


「決めてから出たらよかったのに」

「なんでバレた」


あっさりと考えを読まれる。つい1週間前までは俺に振り回されてばかりだったのに少しだけ彼女との仲の進展を見られたようでうれしく思うが流石にこの気分は見抜かれなかったようだ。


「まあ決めてなかったのも本当だがゆっくりとアイシャと二人で街を見て回りたかったのも本当だしな」


というよりアイシャはきっとそういうのが好きだろうと決めつけていただけだが。もっと言えば俺自身がそういうゆっくりとした日常を好きだからでもある。『俺』としては休暇のつもりなのだろうしこの感情は正しいのだろう。


「まあ、私もこういうの好きだからいいけど」


俺たちは日が暮れるまで結局街を見て回ったり、適当な店に行って商品を見たりして過ごした。そして俺は彼女との出会いの場所に行く。


「ねえ、ご主人様」

「なんだ、突然ドスの効いた声出して」

「普通奴隷商にデートで来る?神様だったから感性が人間離れしてるわけ?」

「まあ、その、買い物というか」


俺の目的をちょろっと口走るとアイシャの視線がゴミを見るようなものに変わる。直接攻撃をしてこない辺り本当にいい子だな……正直俺からしても誤魔化そうとはしたが殴られても文句言えないと思う。


「別にアイシャを売りに来たわけじゃない、新しい奴隷を買いに来ただけだ」

「わ、私じゃ満足できない?」


満足も何も別にそういう関係ではないだろう。ただ理由くらいは話さないといけないな。俺はエルフならギリギリ拾えるくらいのボリュームまで声を落として会話を続ける。


「アイシャがここにいたってことはここは違法奴隷も扱ってるってことだ」

「……そうね」

「つまり、ここならドワーフの奴隷が手に入る可能性がある」


ドワーフは鍛冶の才能を種族単位で持っているので同じだけ鍛冶スキルを上げても普通のヒューマンよりずっといいものが作られるのだ。そして彼女もドワーフという言葉でふくれっ面を戻してくれる、何が目的か分かったからだろう。

そう、今日へし折れた武器の代わりを手に入れるためだ。市販で買うか自作しろと思うかもしれないが、創造の魔法は物凄く燃費が悪い。しかもアイシャの例を見るとわかるように俺のレベル上昇が遅いのでドワーフに優れたユニークをつけてレベルを上げた方がいいものが作れたりするのだ。

そして俺が男奴隷なんて買わないことを知っているアイシャは……もしかしたら妬いてくれているのかもしれないな。そう思うとちょっとだけうれしい、元凶なのにとは言わない約束だ。


「それならデートなんて言わずに普通にいえばよかったのに」

「すまん、正直デート中に武器屋を見かけて思いついてそのまま来ただけで」


やばい、なんだか今のアイシャを見ていると心が痛い。なんだか凄い悪いことをしている気分になってしまう。一応明確な上下関係があるはずなのにどうしてだろうか。


「……さっきまでは楽しかったし許してあげる、でもあんまり無闇に増やさないでね」


その言葉に罪悪感が出た俺はほどほどにしておこうと決意するのであった。

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