1週間の成果
地上にやってきて、つまり俺が生まれてから1週間が経過した。その間にやっていたことは特に代わり映えのしない。アイシャがまだ恥ずかしがるものの一緒に眠ること自体に一々抵抗しなくなった事とルシエに土産と称してスライムから落ちたゼリーをあげていることが日課になったことくらいだろう。
スライム自体とはここ数日戦っていないが前に大量に倒した時のストックがあるのだ。一応レアアイテムに分類されているのだが食用品なのでおっさんにも伝えてない。毎回おいしそうに食べているので美味なのだろうが実は俺も食べたことがないので正確な味がわからない。
「もう俺がやった方がよくね」
「そんなこと言うならご主人様変わってよ!」
今俺たちはオーク狩りを行っている、こいつはDランクの魔物で経験値はスライムよりずっとおいしい。もっとも今回はそれが目的ではないのだがやはりアイシャではアイテムが落ちないか。
「神の奇跡をもってしても治せないお前の運が悪い」
「それ私のせいじゃないじゃない」
その通りなのだがまさかアイシャの幸運をあげるのに3桁もスキルポイントを要求されるとは思わなかった。今後は長所を伸ばす方向で成長させていこう。既にかなり成長しているがオーク相手では強さを見せつけられないだろう。
しょうがないと思いながら俺は彼女と変わる。ちなみにこのオークの狩場は少々あの町から離れているので本来日帰りは不可能だ。俺は例外だから今日も街に帰るけどな。
「魔法が使えないから接近戦するしかないんだよな」
実は俺たちは今日初めてオークと戦っている。色んな敵からアイテム集めをしているので毎日敵が変わっているのだ。この豚は接近戦に向いているステータスがあるので正直面倒である。
「ぶひゃあ」
醜い顔面の豚が俺に向かって棍棒を振り下ろす。でっぷりと膨れた腹に似合わず俊敏だが今の俺にとっては遅いレベルである。奴の突っ込んでくる勢いを利用して脳天に剣を突き刺すとあっさりと絶命する。
「やっぱご主人様ってレベル詐欺よね。まあ正体を知っていれば当然といえば当然か」
「お前も人のこと言えないからな?むしろ単純スペックなら一部一部は俺より強いだろ」
そう、センスの差があるというのに俺のレベル上昇が遅いせいで今やアイシャのほうが器用に関しては高い。まあ1人で全てが完璧より人間っぽいからいいか。
索敵しながら反応があるたびに接近してぼこぼこにする。スライムの時ほどではないが正直弱い者いじめをしている気分になってくる。
「倒し方がえげつない……」
「おい、アイシャみたいに爆散させてないだけまだグロさが少ないだろ」
アイシャの場合は当たった魔力矢が爆散して頭を吹き飛ばすところを俺なら頭に風穴が空くだけだ。
「ぶひゃ」
また豚の首が飛ぶ、最近アイシャに習得させた【無限収納】でそれを回収させていく。なんなく異空間にアイテムを収納していくのを見ると勇者スキルは本当に便利だ。俺と違って魔力も使わないので魔力切れの心配をしなくていいのでアイシャが荷物持ちになるのも定番だ。
本人はとても不満そうだがそう思うならもっと運がよくなって欲しい。今回もアイテムを十分に集めたことだしそこにいる豚を一匹片づけたら帰るとしよう。俺は少し調子に乗って豚の正面に突っ込んで首に向かって全力で剣を振りあげた。
この時俺は忘れていたのだ。この剣はアイシャの武器を作った時に使い捨てのつもりで作った粗悪品だと。完璧にとらえたはずの首を切り飛ばすことなく俺の剣は真ん中からへし折れて豚の棍棒が直撃する。
「ご、ご主人様!?『我、癒しを与えん。ヒール!』」
流石に腕力が凄まじいオークの攻撃は痛かったがアイシャの回復魔法で助けられる。彼女がヒールの前に言っているのは詠唱で【詠唱省略】がないと魔法を使うのに必須である。俺はいつも通り例外だがな。
「わり、助かった」
アイシャに感謝を伝えてから彼女の弓を借り受けて豚の顔面を爆散させた。何でも使えるというのはこういう時便利なものだ。改めて彼女を見てみると少し目が涙ぐんでいる、俺と1週間過ごして情でも移り始めたのかもしれない。元から話しやすかったが更に生き生きとするようになってくれた。
彼女に心配かけまいと軽く頭をぽんぽんと撫でてもう一度感謝を伝えると少し顔を赤くしてどういたしましてと返す彼女はやはり可愛らしいものである。いつまでもこういう初心なところを忘れないでいただきたいものだ。
『ふふ、流石レン様。ナデポを使いこなしていらっしゃいますね』
ナデポってのはよくわからんが何となく馬鹿にされているのは分かる。そいういえばアイテム集めは俺がこいつに頼らずに決めた初めての行動かもしれない。俺はこいつに甘えているフシがあるので頭が上がらない面があるのも事実だ。
『慕ってくれるのはありがたいですが…私には体がありませんし夢でなら相手をしてあげられるのですが』
誰がお前に手を出すなんて言った。お前の性格をこれだけ知ってるとたとえアイシャクラスの見た目だとしてもおことわりしたいところだ。俺がそんなことを考えていたのにいつもと違って奴は俺にこれ以上話しかけてこなかった。何考えてるのやら。
「さて帰るぞアイシャ」
アイシャの手を握り、俺は借りている部屋に向けてのテレポートを発動させて街へと帰宅した。




