神への感謝
ミナと対面してから誤魔化しには苦労するだろう、そう思っていたが実際はそんなことはなくあっさりとそうなんですねと納得された。正直俺がミナ側だった場合何かあるのではと疑うところだが楽に越したことはないので正直この反応はありがたい。
昨日とはまた違う沢山の人で賑わっている大衆食堂へと向かい、3人で食事をしながら雑談しているとミナが質問を投げかけてきた。
「そういえばレンさんのステータスは人にばれないようにしてくれると助かります。私も協力しますから」
俺の偽装ステータスのことか、別に騙す用のステータスなのでバレてもいいと思っているのだが何か問題でもあるのか。
「その顔は分からないということなのでしょうが、普通はあんなに急にレベルが上がることなんてありません。レンさんはともかくアイシャさんは上がりすぎです」
あぁ、それは確かにそうだ。つまり俺とアイシャに【隠蔽】のスキルをとるように勧めているのだろう。汎用スキルはセンスと同じようにランクがあってスキルポイントを使ってあげることができる。大体レベル70とかのベテランになって初めて自分に必要なスキルを全部Sまで上げることができるのだ。そしてランクが上がると能力が強化されていく。
例えばおっさんの【鑑定】はSランク、つまりSランクまでのアイテムやAランクまでの【隠蔽】を無視できる。……まずい。そういえばユニが意識していないと【鑑定】などは弾くのがデフォルトだって最初に言ってたな、おっさんには俺がモンスターと戦うのに戦闘以外にSランクスキルを所持している強者に見えたことだろう。
「あ、ああ。戦闘スキルより先にとっておくよ」
まあAランクくらいにしておけば危機感は持っていると思われるだろう、戦闘職は基本【鑑定】なんて割に合わないスキル取らないしな。
それにしてもミナはレベルが上がった理由の方は聞いてこないので助かる。本当は気になるのだろうが俺が話さないので意識しないようにしてくれているのだろう。
ちなみにテイム経験値のお陰で狩りの後に跳ね上がったので俺が15レべ、アイシャが28レべである。アイシャが上がりすぎてて確かにこれは目立つなと理解させられた。
「分かってくれたならいいです、アイシャさんもお願いしますね」
「分かったわ。……ミナも大変ね」
アイシャの苦笑しながらの発言にミナは分かってくれたという顔をしている。
「ご主人様、あなたは非常識なのを理解しておくべきなの。自重しないスタイルなのはいいけど凄く目立つから」
「わかったよ、緊急時以外は目立たないようにするからその目をやめてくれ」
アイシャの綺麗な顔でにらまれると結構なレベルで怖いのでやめて欲しい。そんな俺たちを見てミナがくすくすと笑う。そのうちミナには話してもいいかもな、なんて甘いことを考えたりしながら食事会という名の雑談会は終わりを告げた。
ミナを送ってから俺たちは宿へと戻る。そのうち王都に向かって余っているアイテムを全部売りさばきたいものだ。スライムからエリクサークラスのアイテムが落ちるのだからもっと上のランクの敵からであればもっとレアなものが手に入るだろう。
とりあえずはやく大金を手に入れて家が欲しいのだ。管理はアイシャ以外に奴隷でも買ってやらせたらいいしいちいち消音魔法なんて使わなくて済むからな。
「というわけでアイシャ、明日からしばらく依頼も受けるが金稼ぎだ」
俺はアイシャに必要そうなスキルを割り振る。偽装効果ではなく【隠蔽:S】を習得したので見られる心配もないだろう。勇者スキルのおかげでアイシャに汎用スキルをSランクでいくつかつけることに成功したしこれからもっと快適になるだろう。
「家かー、ご主人様ってこの街に定住する気なの?」
定住といえば間違ってはいないが冒険者なのに冒険しないわけがないのである。俺にはほかの奴と違う絶対的な特権があるからこそ可能ともいえるが。
「まあ、この街に住むってのは間違ってないが旅はするさ。なにせ」
俺はかっこつけて指を鳴らすと同時にアイシャの背後にジャンプして抱きしめる。セクハラは奴隷には適応されないのだよ。
「ひゃ!?」
「時空魔法『テレポート』って奴だ。消費魔力が移動距離に応じて変わるから遠くに行くと魔法は使えなくなるんだけどな」
顔を真っ赤にしているアイシャの耳元で囁きかけると体をびくびく震わせていた。そういえばエルフは耳が敏感だとかユニが言ってたな。あいつは今やたら静かにしているように見えるがうるさいくらいに隙ができるたびに俺に話しかけてくる。その内容は大抵どうでもいい話なので聞き流し気味だったから油断した。
「汚された……」
「人聞きが悪すぎるだろ、せめてもう少し考えて言葉使えよ!」
そもそもいつ汚されても文句が言えない立場の癖に。いっそこのまま致してやろうか。そんな邪な考えをしていたがなんとなく窓に目を向けたら関心が移ったのでやめにする。
アイシャもこのままされるかと思ってたのか固まっていたが俺の雰囲気が変わったのを感じて俺の方を向いてくる、そんな彼女に目で外を見るように誘導すると彼女は感嘆の声を漏らした。
「わー!綺麗ねあの星」
「ああ、本当にな」
窓から見えたのは昨日はなかった天に輝く青い星。しかもこの反応からしてエルフ族の一般常識ではないものなのか。
『あれは魔性星といいます。魔王の力が強くなってくると現れて人々の希望になるようにレン様が考えたものですね』
なるほど、自分で追いこんで自分で慰めるとは誑しの考えだな、でもこれは記憶をなくしていたからこそ感動できたのだろう。俺は恐らく本当の意味で初めて『レン』に感謝した。
俺をこの世界に落としてくれてありがとうとな。




