アアロンAARONの発見まで
文字を、アルファベットのもつ意味を、人格として表現する。
――神とは、この世界の一部を切り取った現象の擬人化であり、神話や建国物語は、その神の威光を借りた政治・教育・情報伝達手段として機能する方便である。
また、宗教における訓話や戒律は、過去に生きた先人たちが歩んだ道、すなわちこの世界の法則や災害に対する処世術を後世に残すものとして機能する。——
と考えるなら、文字を擬人化し、その擬人化したキャラクターたちで物語を編むことができたならば、人類が発明し大いなる発展を遂げてきた言葉という道具の成長の「部分的な中間報告」として機能するのではないか。
私は日本人であり、英語をほぼ独学で学び、その他の言語などは齧った程度しか知らず、海外渡航経験などは皆無に等しいが、日本語と英語の対極性を考慮すれば…堅実かつ建設的な学問としてではないが知的な娯楽として…
前置き(自分語り)が長い。
とにかくアルファベットを擬人化してみようと思い付き、ならばそれぞれのアルファベットで始まる名前をつけてやらねばとなり、どんなものをと考えたらば、覚えやすさ・親しみやすさが最優先だと思われた。
英語の魅力の1つは、そのシンプルさにある。
それは英語が、長い時を経て洗練された結果であると言える。
そのイメージは日本語の「大和言葉」にも存在する。
なぜ平仮名や片仮名でなくアルファベットを、ということについては、擬人化しやすそうだったからとしか言いようがない。
母音だけ、子音だけの状態だから、と考えられる。
私は半端なカタカナ語に軽い嫌悪感をもち、カタカナ語を一切排した小説を書いてみたいと思っていたほどだが、英語などの外国語への興味も強く、それが宇宙を深く知るための窓口のように思われた。
つまりはこの物語は、私が宇宙を知るための活動の副産物と言える。
本質的に、私はこの世界そのものをもっと知りたかった。
人生のほとんどをそのことに費やしてきたとも言えるほどに。
自分語りが長い。
それほどこの作品は私自身と結びついている。
英語にあまり触れず育った日本人にとって、アルファベットはどうしても馴染みにくいものであり、アリスと言う名は分かれども、すぐにはALICEの綴りが出てこない人がいるだろう。
ラ行のカタカナはLなのかRなのか、すぐに分からないという問題。
これと同じような問題が、サ行のCとS、バ行のBとV、カ行のCとKとQなどにも生じている。
それがどうした?アアロンの話をしろ。
アナグラムである。
アナグラムを利用して、それぞれの名前に別次元の意味を持たせることで、脳内のシナプス間の連携を強めるイメージで、その人格を補強できると私は考えた。
アナグラムとは文字の入れ替え遊びであり、文字の順序をある程度入れ替えても、言葉の本質的な部分はある程度保たれるので、近いイメージをもった別の言葉へと連想が可能となり、それがその名前をもつ人の人格やその本来の意味、ひいてはアルファベット自体の意味、そして言葉とは何かという根源的な理解まで結びつく、というイメージをもつことができた。
ちょっとムズい話だね。
例えば、「R」の擬人化であるロデリカRODERICAは、RACEROID (レイサロイド、走り屋ロボット)というアナグラムをもち、それは彼女の、彼女の名前の、「R」のイメージと強く結びついている。
RUN (走る、流れる)、「流」、RACE (競争、急流)。
「R」には「流(リュウ、ル)」「輪」といったイメージがある。
言葉を構成するアルファベットを入れ替え、異なる文字列にしてみても、個々のパーツはその持ち味を失うわけではなく、全体として、カレーCURRYをライスRICEと混ぜたようなものとして存在するのである。
RODERICAから部分的にアルファベットを抽出すれば、ROAD (道)やREAR (後ろ)といった言葉も作れる。
これにハマった。
楽しかった。
次々にキャラクターが生まれていった。
Aについては、A-Z(全て)や『オズの魔法使い』のオズOzから連想した「アルファベットを究めた者」を表すAzという称号を思いつき、アズサAZUSA、アナグラムU AS Az(君がアズとして)という名前を候補にしていた。 (アズサに関してはそれ以前に思い付いていた名前ではあるし、アナグラムはちょっと気に入ってなかった。)
そしていざ物語に、という段階で、ふと思った。
「主役が1人だけじゃ寂しくね?」
どうも物語としてのイメージに膨らまない。
しばらくして
「Aで始まり、各アルファベットが2番目にくる名前で、準主役をそれぞれのアルファベットに対して作れるんじゃね?」
つまり、リーリャLILYAが主役のLの物語に、準主役としてアリスALICEを登場させてはどうか、ということである。
なんという閃き。
いや当然の帰結。
正直に言うと、当時の私はアナグラムの魅力に完全にハマっており、「A」というアルファベットの万能さも感じていたがゆえに「これイケるんじゃないの。へへ」と思っていた。
実際に「B」にはアベルABEL、アナグラムABLE (可能な)、「C」にはアキレスACHILLES、アナグラムI'LL CHASE (私が追おう)といった名前が決まってゆき、物語としての構想も膨らんだが、ここでやっと、アアロンAARONの話に繋がるのである。
「しかし、これだとAはAAで始まる名前にしないとバランスとれないな。AAで始まる名前なんて、ないんじゃないか。どうすんだ」
AAで始まる名前?
アーならAHじゃないか?詰んだか。
無知である。
アアロン(アロン)は聖書に登場し、辞書にも載っていて、現代でも使用されているのである。
しかし、直感としてなかなかいい線をいってるのも確かであった。
AAで始まる名前は、アアロンAARON以外、なかなか見つけることができない珍しい名前だ。
(ちなみに日本の苗字には「阿相」さんが存在する)
とにかくこの名を英和辞典で見つけたときに、「ああ」という声が漏れたとか、漏れなかったとか。
はい。
次回は『FINAL FANTASY X』のアーロンさんについて。




