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悪役令息のほしいものリスト  作者: ボアの本棚


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62話 ついに来た!お泊り会!


夏休みも後半。


ついにお泊まり会の日が来た!


俺の家に、アロア、レオン、クライヴ、ローザが集まった。


みんな大きな荷物を持っている。


なんか、それだけで特別な日みたいでワクワクする。


俺たちは、お菓子や飲み物がいっぱい置いてある部屋に集まった。


「で? みんな、夏休みは何してた?」


「俺から!」


すぐにレオンが手を上げた。


「俺は騎士団の訓練場に行きました!」


「騎士団!?」


俺はびっくりして、レオンのほうに体を乗り出した。


「はい! 父上に連れて行ってもらいました!」


レオンはとっても嬉しそうだった。


「本物の騎士をいっぱい見ました! みんな鎧を着ていて、剣もすっごく大きかったです!」


「それで、剣を持たせてもらいました!」


「すっごく重かったです!」


レオンは両手を広げて、剣の大きさを教えてくれた。


「それから、俺も騎士見習いの訓練に参加しました!」


「騎士見習いって、何やんの?」


俺はセイジを思い出しながら聞いた。


セイジとエレノアは、最近バロック公爵家の養子になったらしい。


俺はチラッとアロアの後ろにいるエレノアを見る。


なんか、前よりすごい人っぽくなってる気がする。


「みんなで走ったり、剣を振ったりしました!」


「それで、手合わせもしました……」


あれ?


急に元気がなくなった。


「どうした? 手合わせで何かあったのか?」


レオンがムッとした顔になった。


「アイツ、公爵家になったのに! 俺たちに気を使いすぎなんです!」


「五歳も年上だからって、俺を赤ちゃん扱いするんです!」


俺はよく分からなかったけど、とりあえず頷いた。


「まだあります!」


レオンが急に大きな声を出した。


「馬が逃げました!」


「うん」


「それをアイツが、バッ! って乗って、グッ! ってして止めたんです!」


「?」


俺には何を言ってるのか、よく分からない。


「カッコよかったですとも!」


レオンの目がキラキラしている。


「なのにアイツは、『当たり前のことをしただけです』って言うんです!」


俺はエレノアを見る。


するとエレノアが頭を下げた。


「皆様、発言をお許しください」


みんながエレノアを見る。


「レオン様は、お父上様と一緒に騎士団の訓練場へ行かれました」


エレノアは順番に説明してくれた。


「本物の騎士たちの訓練を見学され、大きな剣や鎧を見られました。それから騎士の剣を持たせてもらい、その重さに驚かれました」


「その後は、騎士見習いの訓練にも参加されました」


「みんなと一緒に走ったり、木の剣を振ったりしたそうです」


「最後には、セイジ様と手合わせもされました」


「ただ、セイジ様はレオン様が怪我をしないように、すごく手加減をされたそうです」


「そのため、レオン様は子供扱いされたように感じてしまったのですね」


「それから、訓練中に馬が逃げました」


「セイジ様はすぐに追いかけ、走っている馬に飛び乗って手綱を掴み、馬を止められたそうです」


「その姿を見たレオン様は、セイジ様をとてもカッコいいと思われました」


「ですが、セイジ様が『当たり前のことをしただけです』と答えたため、もっと自慢していいのに、と思われたのです」


「ふふっ」


ローザが笑った。


「でも本当にすごかったんですよ!」


レオンが言う。


「馬がビューンって走っていくところを、一番近くで見たんですから!」


「そりゃセイジに憧れるな」


俺もセイジはすごいと思う。


本物の馬がビューンって走っているところ、俺も見てみたい。


「次はクライヴ様どうぞ!」


レオンに言われて、クライヴが話し始めた。


「僕は、領地の村へ行きました」


「クライヴの家の領地って、どこだっけ?」


「北のルナフェスです」


「ああ! 一年中、雪があるところだ!」


「はい。お父様の視察について行きました」


「何を見たの?」


「領民の皆さんが困っていることがないか、お話を聞きました」


クライヴは少し考えてから話した。


「今年は、いつもより雪が多かったんです」


「だから、雪かきが大変になっていました」


「特に、お年寄りや子供だけで暮らしている家は大変だったそうです」


「それに、寒いから薪もたくさん使います」


「食べ物や薪が足りなくならないように、ちゃんと準備しないといけないそうです」


「だから、お父様が足りなくなりそうな場所に、食べ物や薪を送ることにしました」


俺はクライヴを見た。


「すげぇな、お前」


「え?」


「俺だったら、雪をどうやってどかすかばっかり考えちゃう」


「でもクライヴは、雪で困ってる人のことをちゃんと考えてる」


「雪かきが大変とか、薪がいっぱい必要とか、よく見てるし、よく覚えてる」


「……ありがとうございます」


クライヴはちょっと照れた。


「じゃあ、次は私ですわね」


ローザが手を上げた。


「私は、お母様とお菓子を作りましたの」


「お菓子!?」


俺の目がパッと開いた。


ローザがメイドから籠を受け取る。


中には、小さな焼き菓子がいっぱい入っていた。


「食べていいのか!?」


「もちろんですわ」


「やった!」


俺が一つ取ろうとすると、ローザが笑った。


「でも、最初は大変でしたのよ」


「何が?」


「卵を割ったら、殻が入ってしまいました」


「俺もやりそう」


「それから、小麦粉を混ぜていたら、いっぱいこぼしてしまいました」


「うん」


「クリームを混ぜたら、飛び散りました」


「うん?」


「気がついたら、厨房が真っ白でしたわ」


「真っ白!?」


「私の髪も真っ白になりました」


ローザが自分の髪を触る。


「料理人さんに笑われてしまいました」


みんなで笑った。


「でも!」


ローザが籠を指差す。


「二回目はちゃんと作れましたの」


「すごい!」


俺は焼き菓子を一つ食べた。


「……うまい!」


甘くて、すごくおいしい。


「最初に作ったやつも食べてみたかったな」


「え?」


ローザが目を丸くする。


「だって、どんな味だったのか気になる!」


「……食べられる味ではありませんでしたわ」


「残念」


そして最後はアロアだった。


「私は山へ行きました」


「山?」


「はい! とっても涼しかったです!」


アロアは楽しそうに話した。


「森を歩いたり、川で遊んだりしました。それから、小さな滝も見ました」


「滝!?」


「それから、お父様と魚も捕まえました」


「魚!?」


俺はアロアの近くまで行った。


「釣りしたのか!?アロアが?!」


「はい。網を使いました」


アロアが網を持つ真似をする。


「最初は魚がぬるぬるして、ちょっと怖かったです」


「うん」


「でも、最後はちゃんと持てました!」


「すげぇ!」


俺も魚を捕まえてみたい!


「でも……」


アロアの声が小さくなった。


「森で、ちょっとだけ迷子になりました」


「えっ!?」


「エレノアと二人で蝶々を追いかけていたら、お父様たちが見えなくなってしまって……」


アロアが手をぎゅっと握る。


「最初はすぐ戻れると思ったんです。でも、どこから来たのか分からなくなって……」


「怖かった?」


「……ちょっとだけ」


「でも、すぐにお父様が見つけてくれました」


「よかったな」


俺もホッとした。


「今度から気をつければ大丈夫だな」


「はい!」


アロアが元気に頷いた。


「それから、森で綺麗な石を見つけました」


アロアが袋から小さな石を出した。


「これです」


「何だろう?」


俺は石を受け取った。


キラキラしていて、ちょっと変な石だ。


ひっくり返して見ていると。


ザザッ。


「え?」


一瞬、石が歪んだように見えた。


「ノア様?」


「……なんでもない」


俺は石をアロアに返した。


みんなの夏休みの話は、とても面白かった。


レオンは騎士団へ行った。


クライヴは領地へ行った。


ローザは小麦粉まみれになった。


アロアは蝶々を追いかけて迷子になった。


「じゃあ、最後はノア様ですわね」


ローザが俺を見る。


「ノア様は夏休みに何をしていましたの?」


「俺?」


みんなが俺を見る。


俺は少し考えた。


「おれは……欲しい物リストを作ってた」


「欲しい物リスト?」


「うん」


俺は一枚の紙を出した。


「世の中に、こんな物があったらいいのになぁって思った物を書いたんだ」


紙には、俺が欲しい物がいっぱい書いてある。


「これは『魔法スマホ』」


「魔法スマホ?」


「うん。記録したり、遠くの人と話したり、分からないことを調べたりできるんだ」


「すごいです!」


レオンが紙をのぞき込む。


「これは?」


「『腕時計』。手首につける小さい時計」


「時計を手につけるんですの?」


ローザが不思議そうに聞く。


「うん。時間を知りたいとき、すぐ見られるから便利なんだ」


「これは『バス』」


「馬車みたいだけど、もっと大きくて、いっぱい人が乗れるんだ」


「いっぱい!?」


レオンが驚いた。


「そう!」


俺はどんどん説明した。


「これは冷蔵庫。食べ物を長く取っておける」


「これは洗濯機。服を洗うのが楽になる」


「これは掃除機。床のゴミを吸ってくれる」


みんなが紙をじーっと見ている。


「これ、全部作るんですか?」


クライヴが聞いた。


「いつか、な」


俺は答えた。


「だって、あったら便利だろ?」


クライヴは紙を見ながら、少し考えた。


「だったら……僕も欲しい物があります」


「何?」


「雪を簡単にどかせる道具です」


「……!」


俺はクライヴを見る。


「雪を?」


「はい」


クライヴは頷いた。


「僕の領地では、雪かきが大変なんです」


「特に、お年寄りや子供は毎日雪をどかすだけでも大変です」


「なるほど……」


俺は腕を組んだ。


雪を押す。


雪を運ぶ。


雪を溶かす。


もっと簡単に雪をどかす方法はないかな?


頭の中で、いろんな形が浮かんできた。


すると、レオンが手を上げた。


「俺も欲しいです!」


「何が?」


「もっと強くなれる剣!」


「それは便利な物じゃなくない?」


「えっ?」


レオンがキョトンとする。


ローザがクスクス笑った。


「レオンらしいですわね」


「だって欲しいんです!」


みんなが笑った。


俺も笑った。


俺の欲しい物リストは、まだまだいっぱい増えそうだ。


貴族だけが使える物じゃない。


平民だけが使える物でもない。


みんなが使えて、みんながちょっと楽になる物。


そんな物がいっぱいあったらいい。


俺はそう思った。




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