6話 アレに一撃
リアムお兄様が……。
迷子!
ちょっと屋台のいちご飴を見ていただけなのに、リアムお兄様とクロエと馬車がいなくなっていた。
「……あれ?」
人がいっぱいで、ぎゅうぎゅうだった。
「あぁ~……」
人に押されているうちに、知らないところに来ちゃった。
細い階段を降りる。
下はくらくて、石の道がずっと続いていた。
真っ暗なところに、ランプの明かりがポツポツある。
「こわ……こわ……」
背中がゾワッとした。
帰ろうと思って後ろを向いたら、家の壁に誰かがいた。
「わっ! ビックリした! 人がいたのか……」
よく見ると、子供が二人いた。
男の子と女の子だ。
男の子は俺より大きくて、すげぇ顔でこっちを睨んでいる。
女の子は苦しそうに「はぁ、はぁ」と息をしていた。
それに、左の腕が紫色になって、すごく腫れている。
「そいつ、病気か?」
「……」
「病院に行けよ。お父様は?」
「……」
何も言わない。
あれ?
待てよ……。
こいつら、どこかで見たことあるぞ。
前世で……。
「ああ! お前ら孤児か!」
男の子がもっと怖い顔になった。
「病院はどこだ? お金なら俺が払ってやる。そいつを医者に見せろよ」
俺は女の子を指差した。
「……ほっといてくれ」
「どうせ、もう遅い」
「エレノアはもう死ぬ」
男の子はエレノアを隠すみたいに抱き寄せた。
「お前ら兄妹か?」
「……」
何を聞いても答えない。
もういいや。
俺は階段を上って、元の道に戻った。
「……思い出せぇ」
たしか、このゲーム……。
そうだ!
病院がないんだ。
病気やケガをしたら、教会の神官に治してもらうんだった。
「教会!」
顔を上げる。
遠くに鐘が見える。
あそこだ!
俺は人を「すみません! 通して!」って押しながら、教会へ走った。
◇◇◇
「病気を治してほしい人がいるんです」
教会の前にいた神官に言った。
「はい。どこをお怪我なさいましたか?」
「俺じゃないです。孤児の子です」
神官の顔が、なんか変になった。
「ずっと向こうの路地にいます。エレノアっていう子で、左腕が紫色になって、すごく腫れてます」
俺はリボンタイについていたカメオブローチを外した。
「これを売って、お金にしてください」
「わかりました」
神官はブローチをポケットに入れた。
「では、一年後にまた来てください」
「……は?」
「一年後?」
「うはっ!」
後ろにいた神官が笑ってる。
「一年後ってなんだよ! 今すぐ治してくれよ!」
「順番です」
神官は普通の顔で言った。
「患者はたくさんいます。お金を払ったからといって、先に治すことはできません」
「だから一年後に来てください」
「じゃあブローチ返せよ!」
俺は手を出した。
「返金はできません」
「なんでだよ!」
「規則です」
見下したような神官の顔がムカついて、俺は思いっきり足を振り上げた。
「ぁがっ!」
神官のアレを蹴った。
神官が「ぐっ!」ってなって、しゃがみこんだ。
「おらっ!」
もう一回、足を振り上げて、あごを蹴った。
「ぅぐぁ!」
神官が倒れた。
俺はポケットからブローチを取り返した。
「じゃあな!」
「待て!!」
後ろから神官が追いかけてくる。
でも、人がいっぱいだったから、すぐに隠れた。
「はぁ……」
◇◇◇
「思い出せぇ……」
このゲームには、冒険者ギルドと商業ギルドがあった。
それに、病気やケガを治す薬もあったはずだ。
「商業ギルドなら薬があるかも」
近くの屋台のおじさんに聞いて、商業ギルドへ走った。
「ここかな?」
白い石の大きな建物だった。
ドアの横には植木鉢がいっぱいあって、赤い花や白い花、黄色い花が咲いている。
中に入る。
白い髪のおじさんが、本を読んでた。
「どんな病気やケガでも治る薬ありますか?」
「これで売ってください」
俺はつま先立ちして、ブローチを台の上に置いた。
「……あるけど」
おじさんはブローチを見た。
「誰か病気なのかい?」
「エレノアっていう奴です。左腕が紫色で、すごく腫れてるんです」
「……エレノア?」
おじさんが俺を見る。
「アンタ、エレノアの知り合いかい?」
「さっき会っただけです」
おじさんは少し考えた。
「あれは病気じゃないよ」
「え?」
「呪いだ」
「呪い!?」
「呪いは薬じゃ治せない。神官じゃないと無理だ」
「アレはダメだ」
俺はさっきのことを話した。
「一年後に来いって言われた」
「……ちっ」
おじさんが怒った顔をした。
「子供から金を取るなんて、腐ってるな」
おじさんはブローチを俺に返してくれた。
「冒険者ギルドへ行きな」
「呪いを治せる神官を、冒険者として雇うんだ」
「冒険者ギルド……」
エレノアは、もうすぐ死ぬって言ってた。
だったら、急がないとなぁ……。
「ありがとう」
俺は急いで冒険者ギルドへ走った。




