56話 ほしい物がどんどん増えてく
次の日。
俺は鉛筆の試作品をみんなに見せるために、レオン、クライヴ、ローザ、アロアを家に呼んだ。
「みんな、これあげる! 使ってみて!」
俺は四人に鉛筆を渡した。
「……なんですか、これ?」
レオンが鉛筆を受け取って、くるくる回す。
「細い棒?」
「鉛筆!」
「えんぴつ?」
「インクを使わないで、字が書けるんだよ!」
「そんなことできるんですか?」
レオンは、まだ信じていないみたいだ。
「まあ、やってみなよ」
俺は紙を渡した。
レオンが鉛筆を紙に当てる。
スーッ。
「…………」
もう一度。
スーッ。
「本当に書けた!」
レオンが目を丸くした。
「インクは?」
「いらない」
「水も?」
「いらない!」
「すごいです、これ!」
レオンは楽しそうに、紙にいっぱい線を書き始めた。
「これなら、何かをすぐに書けます!」
「だろ!」
クライヴも鉛筆をじっと見ている。
「インク壺を用意しなくてもいいですね」
「うん!」
「手紙を書いている途中で、インクがなくなることもありません」
クライヴは嬉しそうに鉛筆を握った。
「ノア様。これは、とても良い発明ですね」
「ふふっ」
褒められた!
俺、すごい!
ローザも鉛筆を使っている。
スーッ。
紙に書いた文字を、じーっと見ている。
「しかも、インクみたいに滲みませんわ」
「そうなんだよ!」
「これは、とても便利ですわね」
ローザは鉛筆を大事そうに持った。
アロアは、さっきから何も言わずに文字を書いていた。
でも。
「あっ」
「どうした?」
「すみません。書き間違えてしまいました……」
アロアが紙を見る。
そして、間違えたところを指差した。
「紙を無駄にしてしまいました。申し訳ございません……」
「大丈夫だよ!」
俺はアロアから紙を受け取った。
「こういう時は、これを使うんだ」
「これは……?」
「消しゴム!」
「けしごむ、ですか?」
「うん! 見てて!」
俺は間違えた文字の上を、消しゴムでゴシゴシこする。
ゴシゴシゴシ!
「…………」
黒い文字がどんどん薄くなる。
「き、消えました!」
アロアが目を丸くする。
「えーっ!? 何でですか!?」
レオンも紙をのぞき込む。
「す、すごい……」
クライヴもびっくりしている。
「これがあれば、間違えても大丈夫なんだよ!」
「おおおおーー!!」
パチパチパチパチ!
みんながいっぱい拍手してくれた。
俺は嬉しくて、ニコニコする。
鉛筆もすごい。
消しゴムもすごい。
俺、いいものを作った!
「でも……」
ローザが言った。
「『えんぴつ』も『けしごむ』も、ジーナ様にご報告した方がよろしいですわね」
「ああ、それならもう手紙で知らせたよ」
「もう知らせたのですか?」
「うん! 今度の週末に、先生とジーナお姉様に会いに行くんだ」
「そうでしたのね」
ローザが頷く。
その時だった。
「でも……」
レオンが鉛筆を見ながら、ぽつりと言った。
「他の色もあれば、もっといいのに……」
「…………」
俺の頭の中で、
パァン!
と何かが光った。
「色鉛筆!」
「え?」
「黒だけじゃなくて、赤とか青とか黄色とか!」
俺はどんどん思いついていく。
「紫も! 緑も! いろんな色の鉛筆!」
「そんな鉛筆まであるんですか?」
「ある!」
「すごい……」
俺は興奮してきた。
「色鉛筆も作らなきゃ!」
「ノア様、また何か作るんですか?」
アロアが苦笑する。
「やべぇ……!」
俺は頭を抱えた。
「欲しい物がどんどん増えてく!」
でも。
楽しい。
新しい物を考えるのって、すごく楽しい!
「よーし! 次は色鉛筆だ!」
俺はそう言って、また新しい発明のことを考え始めた。




