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悪役令息のほしいものリスト  作者: ボアの本棚


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55/69

55話 実験は、楽しい


次の日の放課後。


窓際に避けていた芯を見る。


「固くなってる!」


指で触ってみる。


昨日よりずっと硬い。


「今日は焼きます」


「はい!」


「焼いて、さらに硬くしますよ」


「わかりました!」


先生が教室の外に、魔法で小さな炉を作った。


「すごい!」


芯を炉の中に入れる。


そして、じっくり熱を加えていく。


しばらくすると、先生が言った。


「まだ熱いので、冷ましましょう」


「早く使いたいです!」


「我慢してください」


「うぅ……」


また待つの!?


俺は炉の前でじーっと待った。


そして。


「よし。もう大丈夫です」


先生が一本の芯を取り出した。


「やった!」


指で押してみる。


今度は簡単には折れない。


「これを木で挟めば……」


先生が、溝を作った木の板を二枚用意する。


その間に芯を入れる。


ぴったり。


木の板をくっつけて、固定する。


最後に、余分な木を削っていく。


先生が魔法で、木を鉛筆の形に作っていく。


「できました!」


俺は完成した鉛筆を握った。


先っぽを紙に当てる。


スッ。


黒い線が伸びた。


「書けた!」


俺は嬉しくなって、紙に大きく、


『ノア』


と書いた。


「すごい!」


インクをつけてないのに書ける!


何度も紙に線を引いてみる。


スーッ。


スーッ。


「先生!」


「はい」


「これ、もっと濃くできますか?」


「やりましょう」


先生が眼鏡を押し上げる。


また先生の目がキラキラしている。


「では、次は鉱石と粘土の割合を変えてみましょう」


「はい!」


濃い鉛筆。


薄い鉛筆。


硬い鉛筆。


柔らかい鉛筆。


いろいろ作ってみたい!


こうして俺たちの鉛筆作りは、始まったのだった。


◇◇◇


今度は、黒い鉱石とケーラ粘土を入れる量を変えてみる。


「黒い鉱石が多いと、もっと黒くなるんじゃないですか?」


「その可能性は高いですね」


まずは、黒い鉱石をたくさん入れた。


ぐるぐる。


こねこね。


それを細い棒にして、乾かして、焼く。


できた!


紙に書いてみる。


スーッ。


「わあ! すごく黒い!」


さっきの鉛筆より、ずっと濃い。


でも。


ポキッ。


「…………」


芯が折れた。


「折れちゃいました……」


「黒い鉱石が多すぎるようですね」


「じゃあ、次!」


今度は黒い鉱石を少し減らして、粘土を増やした。


同じように作ってみる。


スーッ。


「これも黒い!」


さっきより少し薄い。


でも、指で押しても折れない。


「こっちは丈夫だ!」


次は、もっと粘土を増やしてみた。


スーッ。


「あれ?」


今度はかなり薄い。


でも、すごく硬い。


「字が薄い……」


「粘土が多くなると、硬くなりますが、黒い線は薄くなりますね」


「じゃあ、真ん中くらいがいいです!」


俺たちは、いろんな割合で作ってみた。


できた鉛筆は、全部で十二本。


黒い鉱石が一番多いものが三本。


次に黒い鉱石が多いものが三本。


真ん中くらいのものが三本。


粘土が一番多いものが三本。


紙に全部書いて比べてみる。


「一番黒いのはこれ!」


「でも、一番折れやすいですね」


「こっちは黒さもあるし、折れにくいです!」


「では、これを基準にしましょう」


「はい!」


十二本もあると、どれが一番いいのか比べるのが楽しい。


もっと黒くて、もっと丈夫な鉛筆を作りたい。


「先生!」


「はい」


「次は、もっといっぱい作りましょう!」


先生は眼鏡の奥で目を輝かせた。


「もちろんです」


……算数の勉強より、こっちのほうが楽しい。


と、思った。



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