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悪役令息のほしいものリスト  作者: ボアの本棚


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54/69

54話 先生、年号は覚えないとダメですか?


「人をまとめるのが、とても上手な方だったのです」


人をまとめるのが上手だと、人に恨まれない!?


俺は首をかしげた。


「でも……国を取られた人は、怒らないんですか?」


「もちろん、怒った人もいたでしょう」


「じゃあ、やっぱり反乱するんじゃ……」


「そこで初代国王は、あることをしました」


「彼は国を一つにしたからといって、昔の国のものを全部なくしたわけではないのです」


「どういうことですか?」


「それぞれの町の領主や貴族を、そのまま残したのです」


「えっ?」


「もちろん、王国全体を治める王は必要です。しかし、それぞれの土地のことは、その土地の人間が一番よく知っています」


先生は黒板に、


『王』


『領主』


と書いた。


「王は国全体を守る」


「領主は自分の土地を守る」


「そんなふうに役割を分けました」


「じゃあ、国を取られたっていうより……」


俺は少し考える。


「みんなで大きな国を作った?」


「そうです」


「でも、王様が一番偉いんですよね?」


「はい」


「じゃあ、昔の七つの国の王様は?」


「王ではなく、公爵や侯爵などになりました」


「王様じゃなくなっちゃったんだ……」


「ですが、土地や家を全部取り上げられたわけではありません」


「なるほど……」


それなら、ちょっと納得できる。


もし俺の家を守るためにレオンと勝負して負けたとき、


『今日から俺の家ですから、全部置いて出ていって下さい』


なんて言われたら、絶対に嫌だ。


嫌だ!ってなる。


でも、


『今日からもっと大きな家族になりましょう!』


だったら……。


「それなら、まだマシかも」


「そういうことです」


先生が笑った。


「そして初代国王は、もう一つ大切なことをしました」


「はい」


先生は黒板に新しく文字を書く。


『約束』


「七つの国が一つになるとき、それぞれの土地の人々が安心して暮らせるように、たくさんの約束を決めました」


「約束?」


「税金を勝手に増やさないこと」


「領主が好き勝手に人を捕まえないこと」


「商人が安全に国中を行き来できること」


「困ったときは、お互いに助けること」


俺は黒板を見ながら指を折る。


「いっぱいある……」


「ですが、その約束があったからこそ、七つの国の人々は安心できました」


「だから反乱しなかった?」


「それも理由の一つでしょう」


「人は、自分が大切にしているものを奪われたときに怒ります」


「逆に言えば、大切なものを守ってもらえるなら、今までと違う形でも受け入れられることがあります」


「うーん……」


俺は頭をひねった。


「じゃあ、初代国王様は……」


俺は黒板の『約束』を見る。


「みんなから何かを奪うんじゃなくて、みんなが安心できるものを作ったって事ですか?」


「その通りです」


先生は嬉しそうに笑った。


「だから、初代国王は強い人だったのです」


「剣が?」


「いいえ」


「魔法?」


「それも違います」


「じゃあ……頭がすごく良かった?」


「それもありますね」


「じゃあ何ですか?」


先生は少しだけ考えてから答えた。


「人が何を望んでいるのかを考えられる人だったのです」


「…………」


俺は黒板を見る。


七つの小さな丸。


それを囲む、一つの大きな丸。


「王様って、戦いが強いだけじゃダメなんですね」


「ええ」


「みんなにこうしろ!って言うことを聞かせるんじゃなくて……」


俺は考えながら言った。


「みんなが『この王様と一緒にいたい』って思えるようにしたんですね」


先生は少し驚いた顔をした。


それから、にっこり笑った。


「とても良い答えです」


「ふふふ……」


歴史って、ただ昔のことを覚えるだけじゃないのかもしれない。


ちょっとだけ面白くなってきた。


……でも。


「先生」


「なんでしょう?」


「年号は覚えないとダメですか?」


「もちろんです」


「…………」


やっぱり歴史、嫌いかもしれない。






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