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悪役令息のほしいものリスト  作者: ボアの本棚


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53話 インクのいらないペンと王様


「鉛筆とは何ですか?」


先生が綺麗な目で俺を見る。


「えっと……鉛筆っていうのは……」


俺は前世の記憶を一生懸命思い出す。


「インクのいらないペンです」


「インクのいらないペン!?」


先生の目が、キラッと光った。


「そんな物が作れるのですか? グラファト鉱石とケーラ粘土で?」


「あー……」


先生が出してくれた黒い鉱石と粘土を、机の上に並べる。


「たぶん……できます」


「では、作ってみましょう!」


「え、はい」


先生がすごく嬉しそうだ。


なんだか、俺より先生のほうが楽しそう。


まずは黒い鉱石を細かく砕く。


ゴリゴリ。


石をすりつぶすと、黒い粉がどんどんできていく。


「すごい……真っ黒だ」


俺の指にも黒い粉がついた。


次は粘土だ。


白っぽくて、細かい粘土に水を少しずつ入れて練る。


ぐにぐに。


「これくらい?」


「もう少し水を減らしましょう。芯にするには柔らかすぎます」


「わかりました!」


粘土を少しずつ調整する。


それから、黒い粉と粘土を混ぜる。


こねこね。


こねこね。


「うわ……手が真っ黒!」


「ふふ……研究とは、こういうものです」


先生の手も真っ黒だった。


二人とも手が真っ黒だ。


ちょっと面白い。


混ぜ終わったものを、細長く伸ばしていく。


「できました!」


細い棒が何本もできた。


前世で見た動画では、たしかこんな感じだった。


でも、まだ柔らかい。


触ると曲がってしまう。


「先生、これ乾かす必要があります。どれくらいかかりますか?」


「自然に乾かすなら、一日か二日は必要でしょう」


「ええっ!」


そんなに!?


「急いで乾かすと、ひびが入ったり、折れたりします」


「じゃあ……待ちます」


俺は机の上に並べた芯をじーっと見る。


早く鉛筆にしたい。


でも、今は待つしかない。


「…………」


「…………」


「先生」


「はい?」


「まだですか?」


「まだです」


「…………はい」


俺はしょんぼりした。


カーン、カーン。


「……あ」


鐘の音が聞こえた。


「そういえば、今は算術の授業でした……」


忘れてた!


「残念ですが、実験は授業が終わってからですね」


「……はい」


◇◇◇


「それでは、歴史の勉強をしていきましょう」


「……はい」


記憶しなきゃいけないのって苦手だ……。


「フレナリア王国は、どうやってできたかわかりますか?」


「?」


「王様がこの場所を王国にする!って言ったら国になるんじゃないのですか?」


「戦争です」


「せんそう?」


俺は目を丸くした。


「はい。今から約五百年前、この辺りには小さな国が七つありました」


先生が黒板に丸を七つ描く。


「七つの国は、みんな別々の国でした」


「ある日、大きな魔物の群れが北からやってきました」


先生が黒板に大きな丸を描いた。


「村が襲われ、畑が壊され、町まで危なくなりました」


「怖い……」


「ですが、七つの国は最初、協力しませんでした」


「なんでですか?」


「自分の国だけを守ろうとしたからです」


「それじゃダメだったんですか?」


「その通りです」


先生は七つの丸を線でつないだ。


「そこで、後の初代国王になる人が言いました」


先生は少し声を低くする。


「『一つの国では勝てない。ならば、みんなで協力して一つになろう』と」


「断る!!ってならなかったんですか?」


「最初は反対する人もいました」


「やっぱり……」


「ですが、魔物は待ってくれません」


先生は黒板に描いた七つの町を指差した。


「農家は食べ物を出しました」


「鉱山の町は武器を作りました」


「魔法使いたちは魔法で戦いました」


「商人たちは物を運びました」


「みんなが自分のできることをしました」


俺は黒板を見る。


「みんなで戦ったんですか?」


「はい」


「魔物には勝てましたか?」


「長い戦いの末に、勝ちました」


「すごい!」


俺は嬉しくなった。


「じゃあ、勝ったから王国になったのですか?」


「それだけではありません」


「え?」


「戦いが終わったあと、七つの国の人たちは考えました」


先生は黒板に大きく書いた。


『隣人こそが脅威である』


「一緒に戦ったことで、理解しました」


「あの国、その国は自分の国にとって危険な国である事を」


「だから七つの国は、自分の国を守るために戦争を起こしました」


先生が最後に、その七つの丸を一つの大きな丸で囲む。


「その結果生まれたのが、フレナリア王国なのです」


「…………」


俺は黒板を見つめる。


「一緒に戦った仲間同士で戦争したんだ……」


「ええ」


「始めの王様、そんなに強かったんだ」


「フレナリア王国になった他の国のみんなは、王様を恨んだのかなぁ……」


「なぜ、そう思うのですか?」


「さっきまで一緒に戦ってたのに、突然敵になったからです。裏切られたと思ったかもしれません」


「ですが、七つの国が統合されてから現在まで、一度も反乱は起きていません。なぜだと思いますか?」


「王様が強かったから、こりゃ勝てないわぁ!とか思ったのかもしれません」


「……剣が強かったわけではありませんよ」


「え?」


先生は少し笑った。


「人をまとめるのが、とても上手な方だったのです」


人をまとめるのが上手だと、人に恨まれない!?



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