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悪役令息のほしいものリスト  作者: ボアの本棚


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50/70

50話 ずっと友達


「じゃあ、釣りやろう!」


「はい!」


レオンとクライヴが、すぐに湖のほうへ走っていった。


「ノア様、走ってはいけませんよ」


クロエに言われる。


「……分かってる!」


俺は走るのをやめて、早歩きにした。


でも、早く釣りをしたい。


湖の近くには、釣り竿が何本も用意されていた。


「どれにしようかな……」


俺は釣り竿をじーっと見る。


「これが一番長い!」


「ノア様、それは大人用ですよ」


「えっ」


「こちらをどうぞ」


クロエが小さい釣り竿を渡してくれた。


「ありがとう!」


俺達は湖のそばに並んで座った。


「魚、いるかな?」


レオンが水の中を覗き込む。


俺は釣り糸を湖に入れる。


ぽちゃん。


浮きが水に浮かんだ。


「……」


じーっ。


「……」


じーっ。


「……まだかな?」


魚が来ない。


「ノア様、気長に待つものですよ」


クロエが笑う。


「うん……」


じーっ。


そのときだった。


「来た!」


レオンが叫んだ。


「えっ!?」


レオンの浮きが、ぴょこん! と沈んだ。


「引いてる!」


「レオン様。頑張ってください!」


レオンを支えるメイドが叫ぶ。


「うわあああ!」


レオンが釣り竿を一生懸命引っ張る。


ぱしゃっ!


水の中から魚が飛び出した。


「釣れたあああ!」


レオンが魚を見て大喜びする。


「すごい!」


クライヴも拍手する。


俺も嬉しくなって、レオンのところへ行った。


「大きいな!」


「はい!」


レオンは魚を両手で持って、にこにこしている。


先週あんなに泣いていたのが嘘みたいだ。


よかった。


今日は笑ってる。


俺も嬉しい。


◇◇◇


釣りのあとは、ローザとアロアが本を読んでいるところへ行った。


「何の本?」


「お花の本ですわ」


ローザが本を見せてくれた。


「わあ……!」


色んな花の絵が描いてある。


「この花、春に咲くのだそうです」


アロアが教えてくれる。


「この花、庭いっぱいに植えたら綺麗だろうな」


「想像出来ますわね」


「うん!」


俺達は三人で本を見ていた。


そこへレオンとクライヴもやってきた。


「何を見てるんですか?」


「お花の本ですわ」


「僕も見たいです」


「じゃあ、みんなで見よう!」


五人で敷物の上に集まった。


本をめくるたびに、


「これ綺麗!」


「こっちは変な形です!」


「この花は食べられるのかな?」


と、みんなで話す。


楽しい。


◇◇◇


お昼になると、料理が運ばれてきた。


サンドイッチ。


果物。


焼き菓子。


そして、アロアが持ってきてくれたモンブラン。


「レオン、これをどうぞ」


「モンブラン!?」


レオンの目が、ものすごく大きくなった。


「好きなんだろ?」


「大好きです!」


レオンは嬉しそうにモンブランを見ている。


「いただきます!」


ぱくっ。


「おいしい!」


「本当?」


「はい!」


レオンがにこにこしている。


俺もモンブランを食べてみる。


「甘い!」


「でしょう?」


アロアが嬉しそうに笑った。


「もう一個食べたい……」


レオンが小さな声で言った。


みんなで笑った。


◇◇◇


お昼ご飯のあとは、かくれんぼをした。


「鬼は誰ですか?」


「じゃんけん!」


「「じゃんけん?」」


みんなにじゃんけんの説明をしたあとは本番勝負!


結果、鬼になったのはクライヴだった。


「それじゃあ、目を閉じます!」


「逃げろー!」


みんなが一斉に走っていく。


俺も走る。


俺は木の後ろに隠れようとした。


でも、


「……ここだとすぐ見つかるな」


別の場所を探す。


空の大きな木箱を見つけた。


「ここなら!」


しゃがんで隠れる。


しばらくすると、


「ノア様、見つけました」


「えっ!?」


クライヴがすぐそばに立っていた。


「なんで!?」


「頭が見えています」


「しまった!」


みんなで大笑いした。


◇◇◇


いっぱい遊んだら、もう夕方になっていた。


湖が夕日の色になっている。


俺達は敷物に座って、少し休んでいた。


楽しかった。


でも、俺はレオンを見る。


「レオン」


「はい?」


「ちょっと話していい?」


レオンが俺を見る。


「……はい」


俺は少し考えてから言った。


「俺達、来年は初等部に行くんだ」


「……はい」


「でもな」


俺はレオンの手を握った。


「二度と会えなくなるわけじゃないぞ」


「……本当?」


「本当!」


俺は大きく頷いた。


「毎月、一回はこうしてみんなで集まろうな」


「僕も賛成です」


クライヴが言った。


「幼稚舎にも遊びに来ますわ」


ローザも笑った。


「長いお休みのときは、お茶会をしましょう」


「私もレオンに会いに行きます」


アロアも手を上げる。


レオンはみんなの顔を順番に見た。


「……毎月?」


「うん!」


「みんな来る?」


「もちろん!」


「……本当に?」


「本当だ!」


俺はレオンの手をぎゅっと握った。


するとレオンの目から、ぽろっと涙が落ちた。


「あれ?」


「レオン?」


「……ごめんなさい」


レオンは涙を拭った。


「嬉しいんです」


「……そっか」


俺も胸がぽかぽかした。


◇◇◇


「レオン、寝ちゃったな」


俺は隣で寝ているレオンのほっぺたを、指でちょんちょんとつついた。


「……んぅ」


レオンは少しだけ動いたけど、起きなかった。


いっぱい遊んだから、疲れたんだな。


レオンの寝顔を見ていると、レオンのメイドが俺達のところへ来た。


そして、ぺこっと頭を下げた。


「皆様、本日はレオン様のために、このようなお茶会を開いていただき、本当にありがとうございます」


「え」


俺はメイドさんを見る。


「どうしてそれを……」


「レオン様は、皆様と離れてしまうことを、本当に悲しんでおられました」


「……」


俺は寝ているレオンを見る。


「『初等部に行ったら、新しい友達ができて、俺のことなんて忘れてしまうんだ』と……そう仰っていたのです」


「………」


俺達はびっくりして顔を見渡す。


「忘れないぞ!」


思わず大きな声が出た。


すると、レオンが、


「んぅ……」


と寝返りをうった。


「……わ、悪い」


俺は小さな声にする。


「俺、レオンのこと忘れないぞ」


クライヴも頷いた。


「僕もです」


「私もですわ」


ローザも優しく笑う。


「私も絶対に忘れません」


アロアも言った。


メイドさんは、嬉しそうに笑った。


「皆様が『毎月一度は必ず集まる』と約束してくださったことで、レオン様も安心されたようです」


「本当?」


「はい」


メイドは、もう一度深く頭を下げた。


「本当に、ありがとうございます」


「うん!」


俺は元気に返事をした。


そして、もう一度レオンのほっぺたをちょん、とつつく。


「レオン」


もちろん、レオンは起きない。


「大丈夫だぞ」


俺は小さな声で言った。


「俺達、ずっと友達だからな」


レオンは眠ったまま、少しだけ笑ったように見えた。




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