48話 春。花咲く祭り
「ぅんーーー!!」
腕を思い切り上に突きだして伸びをする。
「はぁーー」
これするとちょっと気持ちいいんだよね。
あれから数日後。
何があったのか、木が姿を現した!
でも実は全部なくなっていた。
まだ隠れているのかな?
◇◇◇
春になった。
冬の間は寒くて、庭の木も葉っぱがなくて寂しかった。
でも、暖かくなってくると、庭に小さな緑色の葉っぱが出てきた。
そして今日は、王都で春祭りが開かれる日だ。
「ノア様、そろそろ出発のお時間ですよ」
クロエに呼ばれて、俺は急いで準備をした。
「うん!」
馬車に乗って王都へ向かう。
王都に着くと、いつもの街とは全然違っていた。
「わあ……!」
大通りには花がいっぱい飾られている。
家の窓にも花。
お店の前にも花。
街灯には色とりどりのリボンが結ばれている。
上を見上げると、建物と建物の間にも花飾りが渡されていた。
風が吹くたびに、
ひらひら。
花びらが舞っている。
「すごい……!」
俺は馬車の窓から身を乗り出して、ずっと街を見ていた。
「ノア、落ちますよ」
レティスお姉様に服をつかまれる。
今年はリアムお兄様の隣にレティスお姉様がいる。
「だって、すごいんです!」
王都の中央広場には、もっとすごいものがあった。
大きな木だ。
でも、本物の木じゃない。
たくさんの枝を組み合わせて作った、大きな飾りだった。
枝には花やリボン、小さな鐘がいっぱいついている。
風が吹くと、
チリン。
チリン。
小さな音が鳴った。
「これ、どうやって作ったんだろう……」
俺は木の周りをぐるぐる回った。
「ノア、何をしているんだい?」
リアムお兄様が笑う。
「調べてます!」
「今日は春祭りだよ?」
「分かってます!」
でも気になる。
枝はどうやって固定しているんだろう?
風が吹いても倒れないようにするには……。
「……これ、もっと簡単に組み立てられるようにできそう」
「ノア」
リアムお兄様に呼ばれた。
「はい?」
「今日は発明の日じゃないよ」
「……はい」
ちょっと残念だった。
でも、屋台を見つけたらすぐに忘れた。
「お菓子!」
甘い匂いがする。
屋台には、春の果物を使ったタルトや、蜂蜜のお菓子、焼きたてのパンがいっぱい並んでいる。
「リアムお兄様!」
「ノア、まだ食事前だよ」
「一個だけ!」
「……一個だけだよ」
「やった!」
お菓子をもらって、ぱくっ。
「おいしい!」
口の中が甘くなった。
春祭りって最高だ。
その後は、花冠を作っている子供たちを見つけた。
女の子たちが、花を一本ずつ編んでいる。
「何してんの?」
「花冠を作ってるの」
「花冠?」
俺もやってみた。
でも、花がすぐにぽろっと落ちた。
「あれ?」
もう一回。
ぽろっ。
「なんで?」
俺は花をじっと見る。
「……これ、花を乾かしたらどうかな?」
「え?」
「乾かしてから、細い糸でつないだら、もっと長く使えるかも」
「最近のノア様、発明に夢中ですね」
クロエが笑っている。
「ふふ、思いついてしまうと止まらないのだろうね」
俺は夢中になって花を見ていた。
すると、広場の反対側から大きな声が聞こえた。
「春の宝探しが始まるぞー!」
「宝探し!?」
俺はすぐにそっちを向いた。
街の中に隠された花の形をした木札を探す遊びらしい。
「やりたい!」
俺は走り出した。
「ノア、走ると危ないよ!」
リアムお兄様の声が後ろから聞こえる。
でも、宝探しは待ってくれない。
俺は木札を探した。
一個。
二個。
三個。
「見つけた!」
「あっちにもある!」
「こっちかな?」
しばらく探していると、俺は立ち止まった。
「……あれ?」
木札の隠し方を見ていると、何となく分かってきた。
「ただ隠してるんじゃない」
「花の飾りが多い場所に隠してるんだ」
俺は周りを見る。
「じゃあ、次はあそこ!」
走っていくと、本当に木札があった。
「やっぱり!」
それから次々に見つけていった。
最後の一枚を見つけた時には、俺の手は木札でいっぱいになっていた。
「全部見つけた!」
「ノア、すごいわ!」
レティスお姉様が笑った。
俺はちょっと得意になった。
「ふふふっ」
夕方になると、空がオレンジ色になった。
祭りの明かりが一つ、また一つと灯っていく。
広場では音楽が鳴り、大人たちが踊っている。
子供たちは花冠をかぶって走り回っている。
俺も楽しくなって、みんなと一緒に走った。
そして、夜になった。
春の大樹を見上げる。
たくさんの花とリボンが、夜の明かりに照らされている。
その時だった。
ふわっ。
花びらが一枚、空へ舞い上がった。
「……?」
もう一枚。
そして、もう一枚。
たくさんの花びらが、風もないのに空へ浮かんでいく。
「お兄様……?」
俺が振り返ろうとした、その時。
花びらの間に、小さな光が見えた。
「……あれ?」
光がふわふわと近づいてくる。
そして――。
『春が来たよ』
小さな声が聞こえた。
「…………」
俺は目を丸くした。
「しゃべった!」
思わず大きな声を出してしまった。
すると、小さな光がくるくる回った。
『今年もいっぱい咲いたね』
「お前、誰?」
『春の精霊だよ』
「精霊!?」
俺は目を輝かせた。
春祭りは、ただのお祭りじゃなかった。
今年の春は、すごいものを見つけた。
俺はもっと精霊と話したくなって、夢中で近づいた。
でも――。
「ノア!」
「はい!」
リアムお兄様に後ろから抱き上げられた。
「ダメだよ!」
「でも精霊がいます」
「分かったから、まず落ち着こうね」
俺はリアムお兄様に抱っこされたまま、春の精霊を見つめた。
来年もまた会えるかな。
俺はそんなことを考えながら、いっぱいになった王都の夜空を見上げた。




