47話 タヌキの精霊の国!?
『そんなに落ち込むな。木は消えたんじゃない。隠しているだけだよ……』
そんな声が聞こえた。
俺は、しゃがんで腕に顔をうずめていたけど、顔を上げた。
「タヌキ……。ロアのお父様」
俺が言うと、アヴァンさんが笑った。
『さあ、前に出ておいで』
すると、アヴァンさんの後ろから、小さいアヴァンさんが出てきた。
ちょっと怖そうにしている。
『ロアだよ』
俺は立ち上がった。
そして、ロアを見る。
「あのときは、捕まえようとしてごめん」
「怪我をさせるつもりはなかったんだ」
「ただ、タヌキが何なのか知りたかっただけなんだ」
俺が謝ると、ロアは少し考えてから言った。
『……いいよ』
『僕も、本当は人間に見つかっちゃいけなかったのに、見つかっちゃったから』
『それに……違う種を渡しちゃったし……』
「え?」
俺は首をかしげた。
違う種ってなんだ?
するとアヴァンさんが言った。
『それについては、確認しなかった私が悪い』
「?」
俺には何のことか分からない。
『本当はね、ノアには梨、アロアには桃、レオンには栗、クライヴには葡萄、ローザには林檎の種をあげるつもりだったんだ』
「えっ!?」
俺はびっくりした。
俺のアレはバナナじゃなかったの?
『それを、別の種と間違えてしまったんだ』
ロアがしょんぼりしている。
「………」
俺は何も言えなかった。
アヴァンさんが真剣な顔で言った。
『今回できてしまった実は仕方がない』
『だが、次にできる実は、力をかなり弱くしなければならない』
『あれほどの力を持つ実が何度もできれば、戦争の原因になってしまうかもしれないからね』
「………戦争」
その言葉を聞いて、俺はちょっと怖くなった。
俺はそんなつもりじゃなかった。
ただ、俺の木には何ができるんだろうって思ってただけだし。
アヴァンさんは一枚の手紙を俺に渡した。
『この手紙を、そちらの国の王に渡してほしい』
『精霊の国の王からの手紙だと伝えればいいよ』
「分かりました」
俺は手紙を受け取った。
『それと、実そのものは、どれも甘くて美味しいものだよ』
『次にできる実を楽しみにしていてくれ』
そう言うと、アヴァンさんとロアの体がだんだん薄くなった。
「えっ?」
俺が手を伸ばした時には、二人ともいなくなっていた。
◇◇◇
「ノア!」
急にお父様が俺に抱きついてきた。
「わっ!」
「突然消えてしまったから、びっくりしたぞ! 何があったんだ!?」
お父様の後ろには、リアムお兄様とセレスお兄様もいた。
二人とも、とても心配そうな顔をしている。
「タヌキの精霊の親子に会いました」
「タヌキの精霊!?」
お父様がすごく驚いた。
「これを国王さまに渡してほしいと言われました」
俺は手紙を見せる。
「精霊の国の王さまからの手紙みたいです」
「精霊の国の王!?」
お父様がまたびっくりした。
大丈夫かな。
ちょっと顔が怖い。
お父様は俺から手紙を受け取ると、国王さまのところへ走っていった。
「ノア、怪我はないかい!?」
「どこか痛いところはない!?」
リアムお兄様とセレスお兄様が、俺の体を見ている。
「大丈夫です」
「アヴァンさん達は、俺達人間と同じ見た目をしていて、貴族なんです」
「だから、ひどいことはしません」
「そ、そうなんだね……」
リアムお兄様が安心したように息を吐いた。
「バナナの木は消えていませんでした」
「隠していただけだそうです」
「それと、間違えて違う種をくれたみたいです」
「次になる実は、こうりょくをかなり下げるって言ってました」
「それで、実はすごく甘くて美味しいらしいです」
「次回を楽しみにしていろって言ってました」
俺が全部話すと、セレスお兄様は少し困った顔をした。
「……そうか」
「でも、ノアが無事ならそれでいい」
「はい」
それを聞いて、俺はちょっと安心した。
「さあ、他のお友達はみんな帰ったよ」
リアムお兄様が手を出してくれた。
「僕たちも家に帰ろう」
「はい」
俺はリアムお兄様の手を握った。
なんだか、すごく疲れた。
「何か疲れました……」
「そうだな。帰ったら少し休むといい」
セレスお兄様が俺の頭を撫でてくれた。
「……はい」
歩いていると、だんだん目が重くなってきた。
ねむい。
すごくねむい……。
そして――。
気がついたら、俺はベッドの中にいた。




