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悪役令息のほしいものリスト  作者: ボアの本棚


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46話 俺だけバナナ!?


新年明けました!


今年もよろしくおねがいします!


っていう挨拶を国王夫妻さまにする為にみんな揃ってお城にやって来た。


大広間には、すでに多くの貴族たちが集まっている。


やがて国王さまと王妃さまが出て来ると、お父様が一歩前へ進み出た。


そして深々と頭を下げる。


「国王陛下、王妃殿下。新年、明けましておめでとうございます」


「うむ。ドルツ公爵も、よい新年を迎えられたようだな」


国王さまが穏やかに答える。


「はっ。おかげさまで、家族一同、健やかに新年を迎えることができました。これもひとえに、陛下が治められるこの平穏な国に暮らせているからこそと、心より感謝しております」


「そう言ってもらえるのは嬉しいことだ。そなたの領地も、昨年は大きな問題なく治まったと聞いている」


「ありがたきお言葉にございます。領民が穏やかに暮らせておりますのも、陛下の御威光と、王国を支える皆々様のお力があってこそ。ドルツ公爵家も、これまで以上に王国の発展に尽くして参る所存です」


王妃さまが優しく微笑む。


「まあ、相変わらず堅いご挨拶ですね。今日は新年のお祝いなのですから、もう少し肩の力を抜かれてもよろしいのですよ」


「これは失礼いたしました、王妃殿下」


お父様が苦笑いする。


「何しろ陛下を前にしますと、どうにも公爵家当主として振る舞わねばという気持ちが先に立ちまして」


「ははは! そなたらしいではないか」


国王さまが笑わった。


「だが、今年は王国にとっても大切な一年となる。ドルツ公爵、今年もそなたには頼ることが多くなるだろう」


「もちろんにございます、陛下」


お父様は再び深く頭を下げた。


「この身、この家、この命ある限り、王家と王国のために力を尽くします」


「うむ。頼りにしているぞ」


「ありがたき幸せにございます」


そしてお父様は一歩下がり、俺たち家族の方へ戻ってきた。


「では、今年もよろしくお願いいたします」


「こちらこそ、今年もよろしく頼む」


国王さまがそう言うと、王妃さまも微笑んで頷いた。


こうして、俺達ドルツ公爵家の新年のご挨拶は無事に終わった。


◇◇◇


新年の挨拶に来ていたクライヴ、レオン、ローザ、それからアロアと一緒に温室へ行くことになった。


とうとう、みんなのタヌキの種が実をつけたらしい!


「やった!」


どんな実ができたんだろう?


りんごかな?


桃かな?


それとも、見たこともないすごい実かな?


俺はワクワクしながら温室の扉を開けた。


「うわぁ……!」


中に入ると、びっくりした。


どの木も、天井につきそうなくらい大きくなっていた。


「でっかい!」


みんなの木を順番に見ていく。


まずはレオンの木。


レオンの木は、他の木とちょっと違った。


低い。


でも、横にものすごく大きく広がっている。


そして、そこになっている実は。


「星だ!」


星の形をした青い実だった。


「すげぇ! すげぇ!」


レオンが大喜びしている。


「すげぇ! すげぇ!」


……本当に「すげぇ!」しか言わない。


レオンはお父様に抱っこされながら、実に一生懸命手を伸ばしている。


「レオン、もう少しだぞ」


「すげぇ!」


……届いてない。


でも嬉しそうだ。


次はクライヴの木。


クライヴの木は、幹がうねうねしていた。


「うねうねだ……」


葉っぱも普通じゃない。


いくつものヒモみたいになって、上から長く垂れ下がっている。


そのヒモの先には、雫みたいな形の実がついていた。


色は薄い紫色。


光が当たると、きらきらして見える。


「なんというか……幻想的で綺麗です」


クライヴが上を見ながら言った。


クライヴのお父様とお母様も、何も言わずに木を見上げている。


俺も同じことを思った。


「綺麗だなぁ……」


なんだか、お話の中に出てくる木みたいだ。


次はローザの木。


「……丸い」


木の葉っぱのところが、どこから見ても綺麗な丸になっている。


まんまるだ。


でも。


実は全然丸くなかった。


真っ赤なハートの形をしている。


しかも、


ドクン。


ドクン。


「動いてる!」


ハートの実が、ドクドク動いている。


「なんと言いますか……食べづらい実ですわね」


ローザが困った顔をする。


ローザのお母様も、実を見ながら心配そうに呟いた。


「大丈夫なのかしら……これ」


俺も思う。


……これ、食べるの?


ちょっと怖い。


そして、アロアの木。


「おお……!」


三角だった。


木なのに、三角。


先っぽがすごく尖っている。


たぶん、天井を突き破ろうとしたんだと思う。


でも失敗したみたいで、先っぽがぐにゃっと曲がっている。


「なんで曲がってるんだろう?」


そして実は。


ダイヤの形だった。


きらきらしている。


でも、何個か地面に落ちていた。


「落ちてる!」


俺は一個持ってみようとした。


「よいしょ!」


……持てない。


「んんんん!」


びくともしない。


こんなに小さいのに!


親指の先くらいしかないのに!


「なんでこんなに重いんだ!?」


俺が困っていると、


「おお! なんだなんだこれは!」


後ろから声がした。


振り返る。


「!?」


国王様がいた。


いつの間に!?


国王様は落ちていたダイヤ型の実を持ち上げようとしている。


「よいしょ……!」


持ち上がった。


でも。


「ぐっ……!」


国王様の顔が変になった。


「これは……腰に来る重さだ!」


「お父様! お気をつけください!」


アロアが慌てている。


「そしてなんでここにいらっしゃるのですか!?」


「……新年の挨拶の途中で、少し抜け出してきた」


国王様は腰を押さえながら答えた。


「抜け出してきたんだ……」


国王様も気になったんだな。


俺も気になる。


だって、こんな変な木、見たことないもん。


そして最後は。


俺の木!


「俺のはどんな実かな!」


俺は急いで自分の木がある場所へ向かった。


しかし。


「……あれ?」


止まった。


「ない!」


木がない!


「え!?」


俺は何度も周りを見る。


右。


左。


後ろ。


上。


「なんで!?」


この前まで、ここには大きな木があった。


天井につきそうなくらい大きな木が!


なのに!


「なんで?! なんで?!」


木が跡形もなく消えている。


根っこもない。


葉っぱもない。


枝もない。


本当に何にもない。


すると。


ポツン。


そこに何かが落ちていた。


「……バナナ?」


でも、普通のバナナじゃない。


三日月みたいに曲がったバナナが、何本もくっついている。


「…………」


俺はバナナと、木があった場所を交互に見る。


「え?」


なんで?


「なんで俺だけバナナなの!?」


みんなは星とか、ダイヤとか、ハートとか、すごい実なのに!


俺だけバナナ!


しかも木が消えてる!


「…………」


俺は三日月みたいなバナナを見つめた。


「……まあ、バナナ好きだけど」


でも、なんで木が消えたんだろう?


精霊の種って、本当に変だ。




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