45話 雪だるまは二段か三段か……。
『ぼくの一年の思い出』
ぼくは、この一年でいろんなことがありました。
一番楽しかったのは、みんなと手話と点字の絵本を作ったことです。
目が見えなくて、耳も聞こえないジーナお姉様とお話ししたり、お手紙を書いたりしたくて、「点字」というものを作りました。
点字は、指で触ると文字が分かります。
最初はどうやったら分かりやすいのか、いっぱい考えました。
みんなと一緒に何回も作り直しました。
それから、目が見えない人でも読めるように、点字を使った絵本も作りました。
みんなで、
「これはどうする?」
「こっちのほうがいいよ!」
と考えながら作ったので、とても楽しかったです。
一番びっくりしたことは、生まれた時から耳が聞こえない子は、上手におしゃべりするのが難しいことです。
ぼくは、耳が聞こえなくても、おしゃべりはできると思っていました。
でも、耳で声を聞くことができないと、自分の声がどんな音なのか分からないそうです。
ぼくは、それを知ってびっくりしました。
「そうだったのか!」
と思いました。
一番心に残っているのは、孤児院で絵本を読んだことです。
見ることができない子。
聞くことができない子。
おしゃべりすることができない子。
いろんな子がいました。
ぼくたちが作った絵本を見たり、触ったりして、みんなが笑ってくれました。
その時、ぼくはすごく嬉しかったです。
絵本を作るのは大変でした。
何回も作り直しました。
「もうちょっと!」
って、みんなで頑張りました。
それでみんなが喜んでくれたので、作ってよかったと思いました。
この一年は、幼稚舎に入ったり、友達ができたり、いろんな人に会ったりしました。
最初は幼稚舎に行きたくありませんでした。
お父様に「幼稚舎に行くんだ」と言われた時は、
「行きたくない!」
って言いました。
でも、今は幼稚舎が楽しいです。
来年も、みんなといっぱい遊んで、いっぱい勉強して、いっぱい新しいものを作りたいです。
ノア・ドルツ。
◇◇◇
礼をして、顔を上げる。
すると、
パチパチパチパチ!
「わあ……!」
みんながいっぱい拍手をしてくれた。
なんだか恥ずかしい。
でも、嬉しい。
俺はぺこっと、もう一回頭を下げた。
「すごいです!」
「えらいですね!」
「とってもよかったですわ!」
みんなが褒めてくれる。
俺はちょっとだけ胸を張った。
頑張って書いてよかった。
……まあ、作文を作るのを手伝ってくれたのはリアムお兄様だけど。
書いた作文は、来月に開かれる「全国作文コンクール」というものに出すらしい。
優勝すると、お金がもらえるんだって。
「お金かぁ……」
お金も嬉しい。
でも俺は、お金よりもフルーツがいっぱい乗った大きなケーキのほうが嬉しい。
イチゴとか、ブドウとか、桃とか!
いっぱい乗っているやつがいい。
……優勝したら、ケーキにならないかな?
◇◇◇
あと少しで「来年」になる。
一年の終わりになると、どんなに忙しくても家族みんなで集まることになっている。
そして、今日はその日。
しかも今年は――
なんと!
リオーネお姉様とレティスお姉様も一緒だあ!
リオーネお姉様は王女様で、セレスお兄様の婚約者だ。
レティスお姉様は伯爵家のお嬢様で、リアムお兄様の婚約者。
二人とも、いつか結婚したあとに家族になるから、今から少しずつ一緒に過ごして慣れていくのだそうだ。
俺にはまだよく分からない。
でも、お姉様が二人も増えるのは嬉しい。
昼間は親戚の子たちも遊びに来た。
庭には雪がいっぱい積もっていた。
だから、みんなで雪だるまを作った。
「もっと大きくしよう!」
「こっちを丸くして!」
雪をころころ転がす。
大きくなった。
さらに転がす。
もっと大きくなった。
「でっかい!」
今度は雪合戦もした。
最初は子供だけだった。
でも途中から、セレスお兄様や従兄弟のお兄様、お姉様たちも参加した。
さらに最後には、リオーネお姉様とレティスお姉様まで参加した。
「えいっ!」
「きゃっ!」
「ノア、逃げろ!」
「うわああ!」
気がついたら、庭中が大騒ぎになっていた。
楽しかった。
◇◇◇
夜になると、みんなで食堂に集まった。
お父様。
セレスお兄様。
リオーネお姉様。
リアムお兄様。
レティスお姉様。
それから俺。
みんなで料理を食べながら、この一年にあったことを話した。
いろんな話が出てきた。
その中でも、セレスお兄様の話が一番面白かった。
「海上訓練に参加した時に遭遇した怪物たちには、手を焼きました……」
「怪物!?」
俺は思わず身を乗り出した。
「どんな怪物だったんですか?」
「聞いてくれるかノア!それがなあ!」
セレスお兄様が話し始める。
「それで、それで?」
もっと聞きたい!
すごく面白い!
でも――
「ノア、もう寝る時間だ」
お父様が言う。
「え?」
いつの間にか、もう寝る時間になっていた。
「まだセレスお兄様の話、聞きたい!」
「続きはまた今度にしなさい」
「えええ……」
もっと聞きたかった。
でも、眠い。
すごく眠い。
◇◇◇
気がついたら、俺はベッドの中にいた。
どうやって部屋まで来たのか覚えていない。
お父様とセレスお兄様とリオーネお姉様は、お仕事があるのでお城に帰った。
レティスお姉様も、家から迎えが来て帰ったらしい。
今、家にいるのはリアムお兄様だけだ。
窓の外を見る。
雪が降っている。
明日から幼稚舎はお休み。
「来年」になるまで、お休みだ。
今年も、いろんなことがあった。
学校に入った。
アロアと友達になった。
セイジたちにも会った。
タヌキにも会った。
ジーナお姉様にも会った。
絵本も作った。
本当に、いっぱいあった。
「来年は、何があるのかな……」
考えていたら、だんだん眠くなってきた。
「まあ……明日になったら分かるか」
俺は布団にもぐった。
そして、そのまま眠った。




