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悪役令息のほしいものリスト  作者: ボアの本棚


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44話 天才!リアムお兄様。


実は、俺とアローナ様は誕生日が同じだったりする。


幼稚舎では、その月に誕生日の子がいると、みんなでお祝いをする。


先生からクッキーももらえる。


クッキーは嬉しい。


でも、その代わりに宿題がある。


誕生日までの一年間であったことを作文にして、みんなの前で発表しなければならないのだ。


「一年かぁ……」


俺は机にほっぺたをくっつけながら考えた。


「何があったかな?」


一年。


長いような、短いような。


去年の誕生日のことは覚えている。


お父様に、


「お前は来年から王立学園幼等部に入学するのだ!」


と言われた。


俺は、


「行きたくないいい!!」


と叫んだ。


そして、お父様と大喧嘩した。


クロエが、「まあまあ、お二人とも……」とオロオロしていたっけ。


それで春になって、入園式の日。


俺は制服に着替えたら、それで全ては終わりだと思っていた。


でも、クロエが制服を持って俺を追いかけてきた。


「ノア様! まだ着替えておりませんよ!」


って。


……あれはちょっと恥ずかしかった。


そのあと、アロアと出会った。


そして俺は、前世のことを思い出した。


このままワガママなままでいたら、将来、勇者にボッコボッコと倒される。


俺はゲームの中では、どうやら雑魚役令息だったらしい。


そんなの絶対に嫌だ。


だから、アロアと仲間になった。


それから避暑地で勇者のセイジたちを助けた。


タヌキの精霊にも会った。


種をもらって、みんなで育てた。


ジーナお姉様にも出会った。


それから、耳が聞こえない人や、目が見えない人でも読めるように、点字や手話の表を作った。


絵本も作った。


……あれ?


「確かに、いろいろあったな」


思い出してみると、いっぱい出てくる。


いっぱいありすぎて、頭の中がぐちゃぐちゃになってきた。


「うーん……」


作文って、どうやって書くんだ?


前世の世界なら、作文の書き方の本とかありそうなのに。


そんなことを考えていたら、ふと思った。


「リアムお兄様に聞いてみよう」


◇◇◇


夕ご飯の時。


俺はリアムお兄様に相談した。


「リアムお兄様。作文って、どうやって書けばいいんですか?」


「作文かぁ。そうだなねぇ……」


リアムお兄様は少し考えてから言った。


「ではまず、一番楽しかったことを考えてみようか」


「一番楽しかったこと……」


俺はスプーンを持ったまま考えた。


いっぱいある。


でも、一番を決めないといけない。


「うーーんと……」


俺はしばらく考えてから答えた。


「みんなと手話と点字の絵本を作ったのが、一番楽しかったです」


「うん。では次。一番びっくりしたことは?」


「びっくりしたこと……」


これもいっぱいある。


でも、すぐに思い出した。


「孤児院に行って知ったことです」


「何を知ったんだい?」


「生まれた時から耳が聞こえない子は、上手にしゃべれないことです」


俺はそう答えた。


リアムお兄様は頷いた。


「なるほど。それでは、一番心に残っていることは?」


「心に残っていること……」


俺は少し考えた。


そして、絵本を作った時のことを思い出した。


絵本を読んであげた時。


見ることも、聞くことも、しゃべることもできない子たちが、とても喜んでくれた。


あの時の顔は、今でも覚えている。


「絵本を読んで、見たり聞いたりしゃべったりできない孤児院の子たちが、すごく喜んでくれたことです」


「なるほど」


リアムお兄様は笑った。


「まとめようか」


そして、指を一本立てた。


「では、一つ目は?」


「みんなと手話と点字の絵本を作ったのが、一番楽しかった」


指を二本立てる。


「二つ目は?」


「生まれた時から耳が聞こえない子は、上手にしゃべれないということにびっくりした」


さらに三本目の指を立てる。


「三つ目は?」


「見たり聞いたりしゃべったりできない孤児院の子たちが、絵本を読んですごく喜んでくれたことが心に残っています」


「そうだね」


リアムお兄様は頷いた。


「では、次はこの三つについて、どうしてそう思ったのか話してみようか」


「どうして?」


「そう。『楽しかった』だけではなくて、『どうして楽しかったのか』を話すんだ」


「なるほど!」


俺は頷いた。


そこから、リアムお兄様といっぱい話した。


どうして絵本を作るのが楽しかったのか。


どうして耳が聞こえない子がしゃべるのが難しいことにびっくりしたのか。


どうして孤児院の子たちが喜んでくれたことが嬉しかったのか。


俺が話すと、リアムお兄様が順番に並べてくれた。


そして最後に、


「これを紙に書けばいい」


と言った。


「できた!」


俺は思った。


すごい。


さっきまで頭の中がぐちゃぐちゃだったのに、ちゃんと作文になっている。


やっぱりリアムお兄様は天才かもしれない。


◇◇◇


そして、ついに感想文を発表する日が来た。


他のクラスの子たちや、年中さん、年少さんの誕生月の子たちも、大きな教室に集まっている。


「ザワザワ……」


「うわ……いっぱい人がいる」


俺は舞台の前からみんなを見る。


年少さんはまだ小さい。


お母様やメイドと一緒に舞台に上がって、


「あれが楽しかったです!」


だけで終わる子もいる。


いいな。


俺もそれがいい。


年中さんになると、少し大きくなる。


「どうして楽しかったの?」


と聞かれて、


「こうだからです!」


と答えられる。


そして年長さんになると、


「なんで?」


「どうして?」


「だからこう思いました」


まで、ちゃんと説明する。


……俺は年長さんだから、ちゃんとやらないといけない。


「ドキドキ……」


自分の番が近づく。


「ドキドキドキドキ……」


心臓がどんどんうるさくなってきた。


「バクバク! バクバク!」


俺の心臓、そんなに頑張らなくてもいいのに。


そして、


「では最後の、ノア・ドルツ君。前に出て発表してください」


園長先生が俺の名前を呼んだ。


『来た!』


俺は椅子から立ち上がった。


足がちょっとだけ震えている。


舞台に向かって歩く。


「ドキドキ……」


舞台に立って、みんなを見る。


たくさんいる。


その中にクロエがいた。


クロエは両手をぎゅっと組んで、何かを祈っている。


『クロエ、そんなに心配しなくても大丈夫だぞ!』


……たぶん。


俺は紙を持ち直した。


すーーー……。


大きく息を吸う。


はーー……。


ゆっくり吐く。


教室が静かになった。


俺は紙を目の前に持っていく。


そして、ちょっとだけ震える声で、最初の言葉を言った。


「お、僕の一年の思い出は」




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