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悪役令息のほしいものリスト  作者: ボアの本棚


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40/68

40話 点字と手話の本


「……というわけで、点字と手話を作ったんだ!」


俺が話し終わると、クライヴ、レオン、ローザの三人は黙っていた。


「…………」


「…………」


「…………」


「?」


俺は三人の顔を見る。


「どうしたの?」


最初に口を開いたのはクライヴだった。


「ノア様」


「うん?」


「僕たちも、その研究に入れてくれませんか?」


「え?」


「俺もやりたい!」


レオンが手を挙げる。


「私も」


ローザまで続いた。


「みんなで作ったほうが、もっと良いものになると思います」


「でも……」


俺は三人を見る。


「研究って大変だぞ?」


「知ってます」


クライヴが答える。


「じゃあ、明日から来る?」


「今日からがいいです!」


レオンが手を上げる。


俺はびっくりした。


アロアが笑う。


「ノア様。三人とも本気みたいです」


「じゃあ……」


俺は少し考えた。


「いいよ!」


「やった!」


三人が喜ぶ。


「でも、ちゃんと仕事してね」


「任せて下さい!」


クライヴが胸を叩いた。


◇◇◇


次の日。


俺たちは俺の家の勉強部屋に集まった。


机の上には、点字表、指文字表、紙、木の板、それから俺が作った点字器が置いてある。


「まず、何をしますか?」


クライヴが聞いた。


「点字器をもっと使いやすくしたい」


俺が答える。


「紙を固定するところが少し難しいんだ」


「なら僕がやります」


クライヴはすぐに点字器を手に取った。


「ここを動かせるようにして……」


木の板を触りながら考える。


「紙を挟めるようにしたら良いのではないでしょうか?」


「おお!」


「それなら紙がずれない」


「クライヴすごい!」


「は、はい!」


クライヴが嬉しそうに笑う。


次にレオンが手を挙げた。


「俺は手話を試してみたいです!」


「どうするの?」


「実際に使ってみます!」


◇◇◇


さらに次の日。


レオンは幼稚舎の子供たちを集めた。


「これ、何の意味か分かる?」


手話を一つ見せる。


「えーっと……」


「ご飯?」


「違う!」


「じゃあ水!」


「違う!」


レオンが戻ってくる。


「ノア様。これ、分かりにくいです!」


「本当?」


「はい。似た形が多すぎます」


「じゃあ変えるか」


俺は表を書き直す。


「実際に知らない人が見ても分かるか、試してみるんだな」


「そうです!」


レオンはその日から、手話の試験係になった。


最後はローザ。


「私は表を整理します」


「整理?」


「はい」


ローザは点字表と指文字表を並べた。


「今は絵が少し雑です」


「えっ」


「ノア様が描いたものは、どれも同じように見えます」


「…………」


俺は自分の絵を見る。


「……本当だ」


ローザは笑いながら紙を新しくした。


「誰が見ても分かるように、同じ大きさで描きます」


「頼む!」


「それから、文字も大きく書きます」


「ローザ、すごいな!」


「研究には記録も必要ですから」


ローザは真剣な顔で紙を並べていった。


その様子を見ていたアロアが言う。


「では私は?」


「アロアは……」


俺は考える。


「一緒に使ってみる係!」


「それだけ?」


「大事だよ!」


俺は言った。


「アロアはすぐ『これ分かりません』って言ってくれるから!」


「それ、褒めてますか?」


「褒めてる!」


「わかりました」


こうして、俺たちの研究は五人になった。


ノア。


アロア。


クライヴ。


レオン。


ローザ。


「研究開始!」


俺が言う。


「おー!」


四人が一緒に手を上げる。


それから俺たちは、毎日のように点字と手話を試した。


「この手話、覚えにくいです!」


「じゃあ変更!」


「点字器、もっと小さくできますよ」


「すごい!」


「表のここ、間違ってますよ」


「えっ!? ほんとだ!」


「ノア様、ちゃんと確認しましょう」


「ごめん!」


失敗して。


直して。


また失敗して。


また直す。


でも、前よりずっと楽しかった。


俺一人だったら気づかなかったことを、みんなが教えてくれる。


「研究仲間っていいな!」


俺が言うと、クライヴが笑った。


「ですね」


レオンも頷く。


「俺たちも役に立ってますか?」


「うん!」


ローザも嬉しそうに微笑んだ。


「では、もっと良いものを作りましょう」


アロアが両手を握る。


「五人なら、もっとすごいものが作れますね」


「よーし!」


俺は新しい紙を広げた。


「次は、誰でも覚えられる手話と点字の本を作るぞ!」


俺たちの研究は、まだ始まったばかりだった。




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