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悪役令息のほしいものリスト  作者: ボアの本棚


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33/69

33話 産みの苦しみ体験


次の日。


木工職人のおじさんが、薄い木の板を持ってきてくれた。


「坊ちゃん、こんなものでよろしいですか?」


「うん!」


俺は板を机の上に置いた。


紙に描いた六つの点を見ながら、穴の場所を決める。


「ここ!」


「はい」


コンコン。


職人さんが小さな道具で穴を開ける。


コンコン。


もう一つ。


コンコン。


また一つ。


「できました」


「おお!」


六つの穴が並んでいる。


俺は紙を板の下に置いた。


そして針を持つ。


「これで……」


ぐっ。


ぷつ。


紙に点ができた。


「できた!」


俺は紙をひっくり返して指で触る。


「……うーん」


「どうでしょう?」


「ちょっと分かりにくい」


「そうですか?」


俺は何度も触った。


「点が小さい」


「では、もっと大きくしましょうか?」


「うん!」


今度は少し強く押す。


ぷつ。


「…………」


「どうです?」


「今度は大きすぎる!」


「難しいですね」


「難しい!」


俺は頭を抱えた。


次は、針を変えてみた。


細い針。


太い針。


丸い針。


先がとがった針。


いろいろ試した。


でも、なかなかうまくいかない。


細い針だと、点が小さすぎる。


太い針だと、紙が破れる。


強く押すと大きな点になるけど、紙がぐちゃぐちゃになる。


弱く押すと、点が小さすぎて指で分からない。


「うーーー……」


俺は机に突っ伏した。


「ノア様、大丈夫ですか?」


「大丈夫……」


俺は顔だけ上げた。


「でも、てんじって、こんなに難しかったっけ……」


前世では、当たり前のようにあった。


でも、作るとなると全然違う。


「……あ!」


俺は起き上がった。


「針だけじゃダメなんだ!」


「はい?」


「紙を押すところが必要なんだ!」


俺は紙を指で触った。


「紙を下から押したら、上にポコッて出るよね?」


「なるほど」


クロエが板を見る。


「では、下に何か硬いものを置くのですか?」


「そう!」


今度は金属の板を用意してもらった。


紙をその上に置き、裏側から針を押す。


ぷつ。


紙をひっくり返す。


「おお!」


今度は前よりきれいな点ができた。


「これなら触れる!」


俺は嬉しくなった。


「でも……」


クロエが紙を指でなぞる。


「少し紙がずれておりますね」


「……ほんとだ」


紙が動いてしまっていた。


最初の点と最後の点の場所が、少しずれている。


「これじゃ、文字が変になっちゃう」


俺は考えた。


「紙を動かないようにすればいい!」


今度は板に、紙をはさむための細い枠をつけてもらった。


紙を入れる。


カチッ。


「動かない!」


俺は紙を指で押してみる。


「本当に動かない!」


嬉しくなって、紙を何度も触った。


「これならいける!」


六つの穴から針を入れる。


ぷつ。


ぷつ。


ぷつ。


ぷつ。


ぷつ。


ぷつ。


「できた!」


紙を取り出して、指で触る。


今度は六つの点がきれいに並んでいる。


「……すごい」


クロエが小さくつぶやいた。


「これなら、ちゃんと同じ形の点を作れますね」


「うん!」


俺は満面の笑顔になった。


でも、まだ問題があった。


「……クロエ」


「はい?」


「これ、針を押すのが大変」


「と申しますと?」


「ずっと手で押すから、手が痛い!」


俺は小さな手をぶんぶん振った。


「それに、力がバラバラになる!」


「なるほど……」


俺はまた考えた。


針を押す。


でも、毎回同じ強さにする。


どうすればいい?


「……てこ!」


「てこ?」


「うん!」


俺は前世の記憶を思い出しながら、木の棒を使った絵を描いた。


「棒をここに置いて……ここを押したら……」


「少ない力で針を押せる、と?」


「そう!」


さっそく職人さんに作ってもらう。


最初のものは、大きすぎた。


「重い!」


次は小さすぎた。


「力が足りない!」


三つ目は、針が途中で曲がった。


「うわああ!」


四つ目は、紙を破った。


「…………」


俺は椅子に座った。


「もうやだ……」


クロエが笑いながら言う。


「ノア様、発明とは大変なものなのですね」


「うん……」


俺はしょんぼりする。


でも、ジーナお姉様の顔を思い出した。


ジーナお姉様に、俺の手紙を読んでもらいたい。


あの幸せを、ぜひお伝えしたい!


「……もう一回!」


俺は立ち上がった。


それから何日もかかった。


針の太さを変えた。


穴の大きさを変えた。


板の厚さも変えた。


紙を押さえる枠も変えた。


何度も失敗した。


紙が破れた。


点が小さすぎた。


点が大きすぎた。


紙がずれた。


針が折れた。


「また失敗!」


「またですか……」


クロエもだんだん慣れてきた。


そしてある日。


「できました」


職人さんが、新しい道具を机の上に置いた。


今までより小さい。


木の板に六つの穴が開いている。


紙を入れるところもある。


そして、針を押すための小さな棒がついている。


「……これ」


俺はそっと触った。


「これなら……」


紙を入れる。


カチッ。


動かない。


針を穴に合わせる。


ぐっ。


ぷつ。


一つ。


ぷつ。


二つ。


ぷつ。


三つ。


六つの点を作る。


俺は紙を取り出した。


そして、目を閉じた。


指先で、ゆっくり触る。


ぽつ。


ぽつ。


ぽつ。


「…………」


ちゃんと分かる。


点がある。


しかも、同じ場所に並んでいる。


俺は思わず笑った。


「できた……」


「ノア様?」


「できたよ、クロエ!」


俺は道具を抱きしめた。


「これなら、てんじが作れる!」


「はい!」


クロエも嬉しそうに笑った。


でも、俺はすぐに机へ向かった。


「まだ終わりじゃないよ!」


「まだございますか?」


「うん!」


俺は紙を出した。


「あいうえおを作らないと!」


「……まだまだ大変そうですね」


「大丈夫!」


俺は胸を張った。


「だって、道具はできたんだから!」


俺は六つの点を見つめる。


今度は、この小さな点にちゃんと意味をつけるんだ。


そしていつか。


ジーナお姉様に、俺の手紙を読んでもらう。


「よーし!」


俺は鉛筆を握った。


「次は、てんじの表だーー!」




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