3話 硬い肉を切る腕が痛い
王様達と幼稚舎は楽しい、という話をした後、王妃様が「宝探し」をしましょうと言って、城のどこかの部屋へ連れて行ってくれた。
部屋はとても広く、絵本や大きなぬいぐるみ、積み木にパズルまで置いてある。
色々な場所には、色とりどりの花も飾られていた。
「さあ、二人とも。この部屋には、お花を持った木の人形をいくつか隠してあります。決められた時間の中で、いくつの人形を見つけられるかしら?」
「それでは、行くわよ!」
俺は急いで、いつでも走り出せるようにダッシュのポーズを取る。
「スタート!」
王妃様がパン!と手を叩いた。
◇◇◇
「アロア! 人形あったぞ!」
絵本の棚の後ろに隠されていた、黄色い花を抱えたウサギの人形を見つけ、俺はそれを掲げながら急いでアロアを呼ぶ。
「こ、こっちも……!」
アロアも、紫色の花を持ったドラゴンの人形を抱えて走ってくる。
「宝、見つかったな!」
「う、うん……!」
「まだまだたくさんありますよ」
アロア付きのメイドが、楽しそうに笑う。
ウサギにドラゴン。
クマにイヌにネコ。
サルにムササビ。
「あっ! リスもいた!」
次々と人形を見つけていく。
「はい、時間ですよ!」
王妃様がパン!と手を叩いた。
夢中になって探していたせいか、気がつけば俺もアロアも汗だくになっていた。
上着を脱ぎ、クロエに汗を拭いてもらう。
「二人とも、よく頑張ってたくさんの人形を見つけましたね。少し休みましょうか」
「はい、王妃様!」
「はい……お母様」
俺達は椅子に座り、用意されたレモンティーを飲みながら、どの人形がどこに隠されていたのかを王妃様に話した。
その後は王妃様に絵本を読んでもらったり、アロアと一緒にパズルをしたりして遊んだ。
◇◇◇
はっ!
として目が覚めた。
見慣れた天井。
窓。
そして、ドラゴンのぬいぐるみ。
いつの間にか、俺は家に帰ってきていたらしい。
クロエに寝起きの水をもらい、食堂へ向かう。
「おはようございます、お父様!」
走ってはいけないから、早歩きで食堂へ入る。
「ふふ。今は夜だよ、ノア」
「元気に遊んできたみたいだな、ノア」
「リアムお兄様! セレスお兄様!」
クロエに椅子を引いてもらい、よじ登る。
「リアムお兄様、高等部ではどんなおやつが出ましたか?」
「セレスお兄様、お仕事は終わりましたか?」
「お父様もお兄様も、明日は休みですか?」
家族全員が集まっているのが嬉しくて、俺は次々と質問する。
「高等部でおやつは出ないなぁ」
リアムお兄様は十六歳。
何日か前に高等部へ進学したばかりだ。
濃くて短い赤い髪は、お父様と同じ色をしている。
「下っ端の騎士に休みはないからな。残念だが、この後すぐに戻らなければならない」
セレスお兄様は十九歳。
お城で騎士をしている。
銀色の長い髪を後ろで束ねていて、絵の中のお母様と同じ髪色だ。
俺の髪は黒い。
だから、お母様やお父様と同じ髪色をしたお兄様達が、少し羨ましいと思った。
「私もこの後、すぐに城へ戻る」
「お父様も行っちゃうんですか!?」
「お二人が戻るまで、私といい子で待っていようね」
そう言って、リアムお兄様が優しく笑う。
「はい……リアムお兄様」
「寝るときに絵本を読んでくれますか?」
「うん、いいよ。お風呂もお兄様と一緒に入ろうか」
「いいんですか!? 入ります!」
「そのためには、夕食を食べてしまわないとね。冷めてしまうよ」
「はい! 食べます!」
そして俺は、ナイフを入れてもなかなか切れない肉との戦いに集中した。




