↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令息のほしいものリスト  作者: ボアの本棚


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
26/69

26話 ジーナ・ストラディ侯爵令嬢


誰か……。


助けて……。


この暗闇から……。


この、静寂から……。


◇◇◇


城の温室から帰るとき、アロアと二人で歩いていた。


そのとき、変な女の人がいた。


庭園へ行く道の途中に座っている。


ずっと花壇の花を見ていた。


じーっ、と見ている。


ドレスは薄い紫色だった。


でも、土でいっぱい汚れている。


服もほかの女の人より、なんだか地味だった。


髪の毛もボサボサで、葉っぱまでついている。


「ぁ……。ジーナ・ストラディ侯爵令嬢……」


アロアが小さな声で言った。


すると、アロアはすぐにエレノアの後ろに隠れた。


エレノアも、その女の人を見て嫌そうな顔をしている。


「誰?」


俺が聞く。


「リオお兄様の、婚約者、だった人、です……」


アロアがエレノアの後ろから答えた。


「ふーん……」


俺はもう一度、ジーナさんを見る。


このまま置いていっていいのかな?


なんだか気になった。


「あの……」


俺は近くまで歩いていった。


「すごく汚れていますけど、大丈夫ですか?」


返事がない。


「……?」


聞こえなかったのかな?


ジーナさんの両手が、地面をさわっている。


何かを探しているみたいだった。


でも、自分の手を見ていない。


「あれ?」


俺は思った。


もしかして……。


「目が見えない?」


「え!?」


俺の言葉にアロアがびっくりした。


俺はジーナさんの前に立った。


「あなたは、目が見えないんですか?」


メイドたちがざわざわし始めた。


でも、ジーナさんは俺を見ない。


「……」


やっぱりだ。


もしかしたら、耳も聞こえないのかもしれない。


「あ!!」


俺はジーナさんの耳の近くで、大きな声を出した。


「ドルツ公爵家のノアです!!」


すると――


バッ!


ジーナさんが、俺の方を向いた。


「いけません! ノア様!」


クロエが俺を抱き寄せた。


「申し訳ございません! ストラディ侯爵令嬢! 大変失礼いたしました!」


クロエがペコペコ頭を下げる。


でも、ジーナさんは何も言わない。


「ストラディ侯爵令嬢は、いつもこうです。誰が話しかけても、返事をされません」


エレノアが教えてくれた。


「いつもは、ご高齢のメイドを一人連れていらっしゃいます。でも、今日は見当たりませんね」


エレノアが辺りを見回す。


「では、これで失礼いたします。ストラディ侯爵令嬢……」


クロエが頭を下げる。


「誰か、令嬢のメイドを、連れてきてあげて……」


アロアがエレノアの後ろから言った。


「はい、アロア様」


メイドが二人、走っていった。


「待って!」


俺は二人を呼び止めた。


二人が止まる。


「クロエ」


「はい」


「この人、目が見えないよ」


「……」


「それに、耳も聞こえないみたい」


俺は言った。


「アロア、お前、木でできた文字の表を持ってたよな?」


「え? はい……持っています」


「じゃあ、ジーナさんをアロアの部屋に連れていっていい?」


「えっ?」


アロアがびっくりする。


「クロエ、ジーナさんを立たせてあげて」


「……はい、ノア様」


クロエがジーナさんの手を取るために近づく。


俺はジーナさんの前からもう一度大きな声を出した。


「俺はドルツ公爵家三男のノアです!!」


「アロアのお部屋で、メイドを待ちましょう!!」


「アロ……ア」


すると――


ジーナさんが急に立ち上がった。


「失礼いたしました、アロア殿下」


「「「!?」」」


みんながびっくりした。


ジーナさんは、深く頭を下げる。


「お見苦しいところをお見せしてしまい、誠に申し訳ございません」


「ストラディ侯爵家長女、ジーナ・ストラディと申します」


「殿下のお目にかかるような姿ではございませんでした。どうか、お許しくださいませ」


そして、もう一度頭を下げた。


「それでは、私はこれにて失礼いたします」


ジーナさんは後ろを向いて、帰ろうとする。


「ぉ……お待ち、くだ、さい!」


アロアが一生懸命声を出した。


でも、ジーナさんには聞こえない。


「お待ちください! ストラディ侯爵令嬢!」


エレノアが大きな声で言った。


すると、ジーナさんが足を止めた。


「……はい」


振り返ったジーナさんに、アロアが一生懸命話す。


「わ、私の……お部屋に……」


アロアは緊張して、声を震わせている。


「ご、ご招待します……」


「お茶を飲んで……少し休んでください……」


エレノアが大きな声で叫んだ。


「お待ちください!!」


「アロア殿下が、ストラディ侯爵令嬢をお茶にご招待したいと仰っております!」


「ぜひ、お受けください!」


ジーナさんは少し黙っていた。


そして、アロアの方を向いて深く頭を下げた。


「殿下のお心遣い、ありがたく存じます」


「私でよろしければ、謹んでお受けいたします」


「はい……!」


アロアの顔が明るくなる。


クロエがジーナさんの前に立ち、大きな声を出して言う。


「先ほどはお耳元で大声を出すという、たいへん無礼なことをいたしました。どうかお許しくださいませ」


「私はドルツ公爵家、ノア様付きのメイド、クロエでございます」


「恐れ入りますが、私の腕にお捕まりください」


ジーナさんはクロエの腕を探した。


そして、ぎゅっと掴んだ。


「ご親切にありがとうございます、クロエ」


「お手数をおかけいたします」


「悪いな、アロア。無理を言って」


俺が言うと、アロアは首を横に振った。


「い、いえ……」


アロアの目に涙がたまっている。


「私……ストラディ侯爵令嬢に、申し訳ない気持ちでいっぱいです」


「私、ずっと令嬢は怖い人だと思っていました」


「だから、ずっと逃げていました……」


「ほかの人たちと同じように、避けていました……」


アロアは今にも泣きそうな顔をした。


「恥ずかしいです……」


「じゃあ、あとで謝ろう」


俺はアロアに言った。


「俺も一緒に謝ってやるから」


「……はい」


アロアが小さくうなずいた。


俺たちはみんなで、アロアの部屋へ向かった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。