↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令息のほしいものリスト  作者: ボアの本棚


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
22/69

22話 温室会議︰大詰め



「所長」


「はい」


「先ほどの警備体制だが……」


ガロはもう一度、温室の設計図を見た。


「まだ穴があるのではないか?」


「……私も、そう思っております」


所長は頷いた。


「三重結界と騎士による警備だけでは、精霊の種を守るには不十分です」


「やはりか」


「はい」


所長は設計図の一部を指差した。


「まず、侵入者が騎士に化ける可能性があります」


「変身魔法か」


「はい。顔や声だけを変える魔法もあります」


「ならば、顔を見るだけでは駄目だな」


「そのため、温室の出入りには本人認証の魔法を使います」


「本人認証?」


「登録した本人の魔力しか通さない結界です」


「なるほど」


「さらに、魔力を偽装される可能性も考えて、二種類の認証を組み合わせます」


「二種類?」


「本人の魔力と、王家が発行する魔力印です」


「それなら、姿を変えても入れないわけですね」


アリシャが言う。


「はい」


「では、次だ」


ガロが言った。


「中にいる者が裏切った場合は?」


所長が一瞬黙った。


「……そこが最も危険です」


「やはりそうか」


「外から侵入する者より、正規の許可を持つ者のほうが危険です」


所長は温室の中央を指差した。


「ですから、誰一人として一人では温室を管理できないようにします」


「二人以上で?」


「はい」


「庭師が一人で果実を持ち出すこともできない。魔術師が一人で結界を解除することもできない」


「その通りです」


「解除には二人の承認が必要です」


「いや」


ガロが首を横に振る。


「二人だけでは足りない」


所長を見る。


「三人にしよう」


「三人、ですか?」


「庭師、魔術師、そして王宮側の管理者。三人が揃わなければ重要な設備には触れられないようにする」


「承知しました」


「それと、記録を残す」


「はい」


「誰がいつ温室に入り、何をしたのか。全部だ」


「魔法記録を使います」


「改ざんは?」


「記録そのものを王宮の別の場所へ自動的に送ります」


「つまり、温室の中で記録を消しても?」


「別の場所に残ります」


「よし」


ガロは頷いた。


「まだございます」


「何だ?」


「果実のすり替えです」


「……なるほど」


アリシャが眉を寄せる。


「本物の果実を持ち出して、偽物を置いていく?」


「はい」


「それを防ぐため、果実そのものにも印を付けます」


「印?」


「精霊の種から生まれた果実には、種ごとに固有の魔力紋があるはずです」


「つまり?」


「収穫時に魔力紋を記録します」


「偽物なら、その記録と一致しない」


「はい」


「それなら、果実を一つずつ確認できるな」


「さらに、収穫した果実は一つずつ専用の保管庫へ移します」


「保管庫?」


「温室の中に作ります。ただし、保管庫の鍵は温室の鍵とは別にします」


「管理する人間も分ける」


アリシャが続ける。


「そのほうがいいでしょう」


「その通りです」


所長が頷く。


「温室を開けられる者と、果実を保管庫から出せる者を別にします」


「一人の人間が全部を握れないようにするわけだな」


「はい」


「よし」


ガロはまた設計図を見る。


「次は?」


「子供たちです」


「……子供たち?」


「はい」


「子供たち自身が危険という意味ではありません」


所長は慌てて付け加えた。


「ですが、子供たちが悪意ある者に利用される可能性があります」


「……!」


アリシャの表情が変わった。


「『温室を見せて』と頼まれたら?」


「子供たちが知らないうちに、誰かを中へ入れてしまう可能性があります」


「それは防がなくてはならない」


ガロが言う。


「子供たちには、誰かに頼まれても温室へ連れていかないよう教える」


「それだけでは不十分です」


「そうだな」


所長が答える。


「ですので、子供たちが許可のない者を連れて入ろうとしても、結界が反応しないようにします」


「子供たちだけでは?」


「もちろん入れます」


「ならば、子供たちが困らないようにしろ」


「はい」


「『入れて』と言われたら断るだけではなく、そもそも許可のない者は結界の前で止まるようにする」


「承知しました」


「それから……」


ガロが考える。


「子供たちを人質にされる可能性もある」


アリシャが息を呑む。


「その場合は、どうします?」


所長は設計図の別の場所を指した。


「非常用の避難路を作ります」


「温室から直接、王宮の安全区画へ?」


「はい」


「子供たちが中にいるとき、外で襲撃が起きた場合は?」


「温室そのものを封鎖し、子供たちを地下の避難室へ誘導します」


「地下にも部屋を?」


「はい。外部から直接入ることのできない避難室です」


「食料と水も用意しておきましょう」


アリシャが言う。


「数時間閉じ込められても大丈夫なように」


「それと、子供たちが怖がらないようにしなくてはな」


ガロが付け加えた。


「避難室だと分かると嫌がるかもしれん」


「では、普段は小さな休憩室として使えるようにしましょう」


「それがいい」


「非常時には扉が自動的に閉じ、外部から開けられなくなります」


「内側からは?」


「子供たちだけでも開けられるようにします。ただし、外へ出る前に安全確認が必要です」


「よし」


ガロは頷いた。


「それから、結界そのものを破られた場合は?」


「別系統の結界を用意します」


「別系統?」


「魔力を遮断する結界だけではなく、物理的な壁も設けます」


「魔法が破られても壁が残る」


「はい」


「逆に壁が壊されても?」


「第二の結界が働きます」


「二重、三重にするのだな」


「はい」


所長はさらに続けた。


「そして、温室の地下に非常用の封印装置を設置します」


「封印?」


「木そのものに異常が起きた場合です」


「例えば?」


「急激な成長。異常な魔力放出。根の暴走。果実の魔力暴走などです」


「その場合は?」


「温室全体を封鎖します」


「木を切ることはできるのか?」


「最終手段として、それも可能にしておくべきでしょう」


アリシャが不安そうに尋ねる。


「……精霊から授かった種ですよ?」


「もちろん、実際に木を傷つけるつもりはありません」


所長が頭を下げる。


「ですが、万が一、木そのものが周囲を危険にさらす存在になった場合に備え、封印だけは用意しておくべきです」


ガロはしばらく黙っていた。


そして頷く。


「分かった」


「では、最後に一つ」


「まだあるのか?」


「情報です」


所長が言った。


「温室の場所を知る者を増やしすぎないことです」


「秘密を守るためか」


「はい」


「では、誰が知る?」


ガロが尋ねる。


「陛下、王妃様、王太子殿下。そして種を授かった五人の子供たち」


「それ以外は?」


「庭師、魔術師、警備責任者など、仕事上必要な者だけです」


「名前まで記録する」


「はい」


「そして、外部には『王宮の植物研究施設』とだけ伝える」


「それなら、精霊の種があるとは分かりません」


「よし」


ガロが設計図を見渡した。


「これでかなり安全になったな」


「いえ」


所長が静かに首を横に振った。


「安全になったのではありません」


「?」


「危険が起きても、被害を広げない仕組みができただけです」


ガロは少し黙った。


「……その通りだな」


アリシャが微笑む。


「それでも、十分です」


「はい」


「何が起きるか分からないからこそ、備えるのでしょう?」


「その通りです」


ガロは設計図を丸めた。


「では、この計画で進めよう」


「承知しました」


「ただし、絶対に忘れるな」


ガロが所長を見る。


「ここは牢獄ではない」


「はい」


「子供たちが精霊からもらった種を、楽しく育てる場所だ」


「承知しております」


「だから、守りを固めるのは大人の仕事だ」


ガロは窓の外を見る。


庭では、五人の子供たちが自分たちの種について楽しそうに話している。


「子供たちには、何も心配させるな」


「はい」


「子供たちは植物の世話だけしていればいい」


「その裏側は?」


アリシャが聞く。


ガロは笑った。


「大人が死ぬ気で守るさ」


「かしこまりました」


所長は深々と頭を下げた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。