19話 みんなとロアの種
「夢じゃなかったああ!」
祭壇のお皿の上には、見たことのない大きな種があった。
三日月みたいな形をしている。
「信じられない……。本当に精霊が現れたのか?」
「え?」
「何でもないよ、ノア。さぁ、鉢を用意したよ。植えてしまおうか」
クロエが鉢を持ってきてくれた。
紫色の丸い鉢だ。
「俺がやります! リアムお兄様!」
俺は鉢を受け取った。
庭の土をいっぱい入れる。
それから種を入れて、土をかぶせる。
最後にジョウロで水をあげた。
「これで終わり!」
回復の種って、どんな木になるんだろう?
お花が咲くのかな?
それとも、魔物になるのかな?
大きくなったら、どんな木になるんだろう。
楽しみだな!
◇◇◇
「ノア様! タヌキは精霊でした!」
レオンが大きな声で言った。
「朝起きたら、柿より大きな種がお皿の上にありました!」
そう言って、星みたいな形の種を見せてくれた。
「僕のところにも来ました!」
「ドロップみたいな形です!」
クライヴの鉢は青くて丸かった。
「私のところにも来ましたわ。ハートの形ですの」
ローザのメイドさんが、白い鉢を見せてくれた。
ハートの絵が描いてある。
「わ、私のところにも……!」
「私のはダイヤの形です……」
アロアのメイド、エレノアが黄色い四角い鉢を抱えている。
「あれ? みんな、もう鉢に植えてるんですか!?」
「ぼくも鉢に植えます!」
レオンのメイドが、後ろから緑色の丸い鉢を持ってきた。
「すでに用意しております。レオン様」
「ありがとう、ルクシー!」
すごい。
できるメイドだ。
「あの、皆さん」
アロアがみんなを見る。
「授業が終わったら、お城に来ませんか? お父様が種を鑑定してくれるそうです」
「鑑定?」
「はい。それと、お城には精霊の種についてよく知っている庭師さんがいるそうです。その人に種のお世話をしてもらうのはどうでしょう?」
アロアが聞いた。
「みんなは、自分で育てたいですか? それとも庭師さんにお願いしたいですか?」
「そうか……」
俺は種を見る。
俺たちだけで育てたら、枯らしちゃうかもしれない。
「あのさ」
俺はみんなに言った。
「昨日の夜、俺、タヌキを捕まえたんだ」
「ええっ!?」
みんながびっくりした。
俺は昨日の夜のことを全部話した。
タヌキが逃げようとして、気絶させたこと。
タヌキは精霊の国から勉強に来ていた貴族だったこと。
俺たちと同じくらいの子供だったこと。
名前はロアっていうこと。
ロアのお父様に怒られたこと。
発表会を見ていたこと。
そして、この種は「さようなら」の代わりにくれたこと。
みんな、黙って聞いていた。
「そんな大事な種なんだ」
俺は自分の鉢を見ながら言った。
「ロアがくれたものだから、俺は枯らしたくない」
「ちゃんと育てられる人にお願いしたほうがいいと思う」
「みんなはどうする?」
「そんな大切なもの、ぼくも枯らしたくないです!」
レオンがすぐに答えた。
「私もですわ。ちゃんと大きくしてあげたいです」
ローザも言った。
「僕もです。ロアさんを悲しませたくないです」
クライヴも頷いた。
「よし!」
俺はアロアを見る。
「アロア、俺たちの種のお世話をお願いしてもいい?」
「はい」
アロアは笑った。
「皆さん専用の土地を用意しましたので、いつでも見に行けますよ」
「ほんと!?」
俺は嬉しくなった。
「毎日でも見に行けますよ」
ふふふ、とアロアが笑う。
大きくなるところを、ちゃんと見たい。
ロアのくれた種。
どんな木になるのかな?
すごく楽しみだ!




