18話 回復の柿の種
『私は大地の精霊、アヴァンという。あの子はロア。私の息子だよ』
『それと……君は神様の祝福を受けているね』
男の人はそう言った。
そのあと、男の子とクロエを俺のベッドに寝かせた。
二人とも、すやすや寝ている。
男の人はソファーに座った。
そして、俺にいろんな話をしてくれた。
『この世界、アザルディアには、たくさんの国があるのは知っているね?』
「うん」
『私たちは、精霊たちが作った国の貴族なんだ』
「精霊の国にも貴族がいるんだ……」
俺はちょっとびっくりした。
『あの日は、人間でいうと狩猟祭の日だったね』
『私は息子のロアに、もっと世界を見てほしくて、人間の国へ連れてきたんだ』
『でも、途中でロアとはぐれてしまってね』
『人間にロアの姿を見られたと知った時は、本当にびっくりしたよ』
アヴァンさんは困ったように笑った。
『ロアは魔物の姿になって逃げたから大丈夫だよ、なんて笑っていたけどね』
『でも、私は心配だったから、申し訳ないと思いながら君たちの記憶を消させてもらったんだ』
「そうだったんだ……」
だから、みんなタヌキのことを覚えていなかったんだ。
『私はすぐに精霊の国へ帰りたかったんだけどね』
『ロアが、どうしても帰りたくないと言うんだ』
『最後に図書館へ行きたいと言うから、連れて行ったんだよ』
『そこで、また君たちに会った』
「図書館……」
『そこで、自分のことを調べていると知ったロアは、とても喜んでいたよ』
『しかも、自分のことを発表する発表会があると知って、大喜びだった』
『どうしても発表会を見たいと言うからね。私も少し気になったので、一緒に見させてもらったんだ』
「見てたんだ……」
『うん。とてもよく調べていて、面白かったよ』
『ロアも、とても喜んでいた』
俺はちょっとうれしくなった。
自分たちの発表を、ロアも見てくれていたんだ。
『人間の世界も一通り見ることができたから、明日には精霊の国へ帰ろうと思っていたんだ』
『でも、ロアは君たちに「さようなら」を言いたかったみたいだね』
「ロアが?」
『うん』
『だからこっそり抜け出して、君たちの家を回っていたんだと思う』
『そして、みんながお供えしてくれた柿を食べて、そのお礼に、回復の力をつけた柿の種を置いていたんだろう』
「回復の柿の種……」
『君のところにも種を渡そうとしていたんだろうね』
『でも、その前に君に捕まってしまったというわけだ』
「…………」
俺はロアを見る。
小さな男の子になったロアは、まだベッドで寝ている。
「ひどいことしちゃった……」
「ごめんなさい……」
『うん』
『探究心があることは、とても良いことだよ』
『でも、分からないものを見つけたからといって、むやみに捕まえようとはしないでほしいな』
「……はい」
俺はうつむいて返事をした。
『それじゃあ、そろそろ帰るとしようか』
『君も早く寝たほうがいい』
「……はい」
返事をしたけど、なんだか目が重い。
さっきまで寝ていたから、また眠くなってきた。
「ふわぁ……」
あくびが出た。
そのままベッドに入る。
アヴァンさんが何か言っていた気がするけど、よく聞こえない。
「おやすみなさい……」
そして、俺はそのまま眠ってしまった。
◇◇◇
朝。
「んん……」
目を開ける。
「……あれ?」
ベッドの上には、俺だけだった。
ロアも、アヴァンさんもクロエもいない。
「夢……だったのかな?」
俺は昨日のことを思い出す。
タヌキ。
緑色の男の人。
精霊の国。
ロア。
そして、回復の柿の種。
俺はベッドから起き上がった。




