16話 悔しい発表会
ついに発表会の日が来た。
発表会は、普通の教室が三つくらい入る、とても大きな教室でやるらしい。
前の子たちが、どんどん発表していく。
虫をテーマにしたチームは、虫の標本を作って持ってきていた。
植物をテーマにしたチームは、押し花を作っていた。
湖の魚をテーマにしたチームは、自分たちで考えた魚料理の話をしていた。
みんな、すごい。
俺だったら、あんなにたくさんの人の前で話すだけで、頭が真っ白になりそうだ。
でも、どのチームの子も堂々と発表している。
「すげぇ……」
思わず小さな声が出た。
後ろを見る。
お父様やお母様たちだけじゃない。
他の学部の子たちも、発表を見に来ている。
リアムお兄様、いるかな?
キョロキョロ探してみる。
……いない。
お父様とセレスお兄様は、お仕事が忙しいから見に来られないと言われてしまった。
王様と王妃様は来ているのに……。
ちょっとだけ残念だ。
「お次は、Aチームの方。前に出てください」
「!」
ついに俺たちの番が来た。
俺たちは、みんなの前に並んだ。
人がいっぱいだ。
ちょっと緊張する。
先生が俺たちを見る。
「では、発表を始めてください」
俺は前に出た。
「俺たちは、動物と魔物と精霊の違いについて調べました」
まず、ローザが前に出る。
「ま、まず……ふ、普通の……動物です……」
ローザが絵を見せる。
そこには、犬や猫、羊やタヌキが描いてある。
「普通の、動物は……基本的に、魔力を……持っていません。そして、本能によって……行動します……」
ローザは緊張している。
いつもはもっと、しゃべるのが上手なのに。
次にクライヴが前に出る。
「次は、魔物です」
今度はスライムやゴブリン、オークの絵を見せる。
「魔物は、体の中に魔力を持っている生き物です。魔力によって体が強くなったり、種類によっては特別な力を使ったりします」
クライヴは落ち着いている。
すごいな。
「でも、魔物が全部、人間を襲うわけではありません」
アロアが続ける。
「お、大人しい……魔物や、人間を……避けて、暮らしている魔物も、います。また、ふ、普通の動物と……お、同じような姿をした魔物も、い、いるそうです……」
アロアもすごく緊張している。
大丈夫かな?
「次は精霊です」
今度は俺が前に出る。
「精霊は魔物とは違います。森や木、水、風、火、大地などの自然の力が、意思を持った存在です」
レオンが絵を持ってくる。
「精霊には、人間みたいな姿をしているものや、小さな光みたいなもの、動物みたいな姿をしているものもいるそうです!」
レオンは元気いっぱいだ。
「自然の力だから、普通の動物とは違います」
俺が説明すると、みんながうなずいた。
そして最後。
俺たちが一番調べたかったことだ。
俺は大きな紙を広げる。
そこには、あのタヌキの絵が描いてある。
「そして俺たちは、このタヌキについて考えることにしました」
会場が少しざわざわする。
「このタヌキは、危なくなると体を大きくふくらませます」
ローザが説明する。
「そして、風に乗って空を飛びます」
クライヴが続ける。
「さらに、人間の記憶を変えて、自分のことを忘れさせる力があります」
「そんなタヌキ、普通の動物じゃありません!」
レオンが元気よく言った。
「だから俺たちは最初、このタヌキは魔物なんじゃないかと考えました」
俺が言う。
でも、アロアが手を上げた。
「でも……まだ、魔物だと決まったわけではありません」
「そうです」
ローザもうなずく。
「精霊の中にも、自然の力を使ったり、人間には分からない不思議な力を持つものがいます」
「問題は、人間の記憶を変えて、自分のことを忘れさせる力があることです」
俺が続ける。
「ある先生が、この特徴を聞いて、このタヌキは精霊かもしれないとおっしゃいました」
でも、俺たちにはまだ分からない。
「あの日、俺たちが出会ったタヌキが魔物なのか、精霊なのか……」
俺はみんなを見る。
「今の俺たちには、どうやって調べればいいのか分かりません」
「どこに行ったのかも、分かりません」
本当は、ちゃんと調べたかった。
でも、森林公園は立ち入り禁止になっている。
だから、ここまでしか分からなかった。
「途中で終わってしまったのは悔しいですが……これで、俺たちの発表を終わります」
俺たちは横一列に並んだ。
そして、みんなで頭を下げた。
パチパチパチパチ!
パチパチパチパチ!
大きな拍手が聞こえる。
「……終わった」
俺は小さくつぶやいた。
みんなも、ちょっと照れくさそうにしている。
こうして、俺たちの発表会は終わった。




