12話 冒険者ギルドへ行こう!
俺たちは、けっきょくタヌキのことが気になりすぎて、じゅんびをほったらかして、みんなでタヌキがどこに行ったのか考えることにした。
あのタヌキは、あぶなくなると体を大きくふくらませて、風にのって飛んでいく。
「クロエ、あの日の風って、どっちから吹いてたっけ?」
「そうですね……。たしか、北から南に向かって吹いていました」
「?……」
クロエは地図を出して、指でさした。
「この地図でいうと、ノア様たちが通っている王立学園幼稚舎は北東……。右上のこのあたりです」
「この前の狩猟祭で行ったのは、幼稚舎の後ろにあるフレナリア森林公園です」
「そこから北から南に……。上から下に飛んでいったとすると、たぶん平民街に落ちたか、平民街を飛びこえて港湾に落ちたと思われます」
「海に落ちたら死んじゃう!」
レオンが口をおさえて叫んだ。
「平民街に落ちても、民に狩られると思われます」
クロエが無表情で言う。
「そもそも、落ちたときの衝撃で死んでいると思いますわ」
ローザが図鑑を見ながら言った。
「じゃあ、なんであんな危ない逃げ方をするんだ? バカなのか?」
「動物ですから……。とにかく逃げないと、と思って頭がいっぱいになって、そのあとのことまで考えていないのでは……?」
アロアが小さな声で言った。
「もしかしたら、空を飛んだまま移動できるのかもしれませんわね」
ローザが言った。
「でも、敵の記憶を変えて、自分のことを忘れさせるとあるのですよね?僕たちはいつ、そんなことをされたのでしょうか?」
クライヴが腕をくんで、首をかしげる。
「そういえば、会ったときに、バシュー!って飛んでいったよな」
俺はあのときのことを思い出した。
「というか、そんなことができる時点でもう動物じゃないですわね」
ローザが言った。
そういえば、ローザが持っている本には、
『ふしぎどうぶつずかん』
って書いてある。
……これって、もしかして『魔物』のことなんじゃないか?
「まとめると……」
俺はみんなの顔を見る。
「タヌキは風に乗って、森林公園から南に飛んで逃げた。海に落ちたか、平民街に落ちたかもしれない。でも、そもそも記憶を変える力を持ってるんだから、普通のタヌキじゃなくて魔物なんじゃないか。そして、ローザが持ってる『ふしぎどうぶつ』っていう本は、魔物のことなんじゃないかってことだな」
俺が言うと、みんな難しい顔になった。
「ノア様。まものって、なんですか?」
レオンが聞いてきた。
「え?」
ローザもクライヴもアロアも、よく分かっていない顔をしている。
「えっと……」
セレスお兄様が言ってたんだけど……。
「魔物っていうのは、体の中に魔力があるんだ。魔力で体が強くなってたり、種類によって変な力を持ってたりするんだって。それに、人間や普通の動物とは違う生き方をしていて、強い魔物になると頭もよくなるんだって」
「?」
みんな、よく分からない顔をしている。
「あ!」
俺は思い出した。
「お昼のときに、いきなり突っこんできた大きな羊がいただろ?」
「サイレントシープっていうやつ」
「途中まで透明で見えなかったけど、セイジの雷を食らったら、見えるようになっただろ? あれが魔物だよ」
「ええっ!?」
レオンが口をおさえた。
「あの大きな羊が魔物なんですか!? 僕たち死にかけたんですよ!?」
「小さい羊はいい子なのに!」
「小さい羊と大きい羊の違いが分かりません!」
レオンがますます混乱している。
「つまり……」
ローザが考えながら言った。
「動物には魔力がなくて、本能で動く。でも魔物には魔力があって、考えて動く……ということですわね」
「そんな感じ!」
俺はうなずいた。
「じゃあ、動物と魔物の違いについて調べてみませんか?」
ローザが言った。
「発表のテーマにもできると思いますわ」
「そうですね」
クライヴもうなずいた。
「ただ見た動物や植物を発表するより、ちゃんとテーマがあったほうがいいと思います」
「あ、そうだ!」
俺は手を上げた。
「魔物って、動物だけじゃなくて、植物にもいるんだって。セレスお兄様が言ってた」
「え?」
レオンが目を丸くする。
「植物って動物なんですか?」
「???」
みんながレオンを見る。
「植物にも、普通の植物と、魔力を持っていて知能がある植物がいるってことですか?」
アロアが不安そうに聞いた。
「王城の庭園にも、魔物の植物がいるかもしれないのかしら……」
アロアが小さな声でつぶやく。
そのときだった。
「講習を受けてみてはいかがでしょうか」
突然、声がした。
俺たちは声のしたほうを見る。
エレノアが、アロアの後ろで片手を上げていた。
「王都には冒険者ギルドがあります」
「冒険者というのは、国や町の人から依頼を受けて、普通の人にはできない危険な仕事をする人たちです」
「年齢制限はありませんので、誰でも冒険者として登録できます」
「ただし、十二歳以下の人は、冒険者になるときに講習を受ける決まりがあります」
「講習は、冒険者に登録しなくても受けられます」
エレノアはニコッと笑った。
「ですので皆様。一度、講習を受けてみてはいかがでしょうか?」
その瞬間、ほかのメイドたちが少しざわざわした。
「冒険者ギルドか……」
俺はちょっと考える。
「依頼を出して、冒険者の人に話を聞くのもいいかもな」
そう言った瞬間。
「ひぇ……」
メイド達から戸惑いの声が聞こえた。




