11話 記憶改竄タヌキ
セイジは王国の騎士団で働くことになった。
短いあいだだったけど、セイジとエレノアと一緒にいたので、ちょっと寂しくなった。
俺は泣いちゃった。
でも、俺よりもっと泣いた人がいた。
「お兄ちゃんと離れたくないいい!」
エレノアがセイジにギュッと抱きついて、大泣きしている。
俺のお父様が王様たちと話をした結果、エレノアはアロア付きのメイドになることになった。
これなら兄妹で王城で働ける。
「ノア様、短い間でしたが、本当にありがとうございました」
「ありがとうございました」
セイジとエレノアが俺に頭を下げる。
俺はリアムお兄様にギュッと抱きついた。
ちょっとだけ泣いた。
「ノア、セイジたちの新しい出発だよ。笑顔で見送ってあげよう」
リアムお兄様が優しく言った。
「うん……」
「準備はできたか? 行くぞ」
セレスお兄様がセイジたちを馬車に乗せる。
バタン。
馬車の扉が閉まった。
馬車がゆっくり走り出す。
「すぐにまた会えるから」
「はい……」
俺はリアムお兄様の首に腕を回して、ギュッと抱きついた。
◇◇◇
次の日。
俺たちはみんなで図書館に来た。
「えっと……森の動物の本はどこかな?」
俺は本棚を見上げた。
本がいっぱいある。
いっぱいありすぎて、どれを見ればいいのか分からない。
「これではないでしょうか?」
ローザが一冊の大きな本を取り出した。
表紙には、鳥やウサギやリス、それから花や木が描かれている。
『王都の森の生きもの図鑑』
「おお!」
俺は本を開いた。
中には森にいる動物や鳥や虫、花や木の絵がいっぱいあった。
名前だけじゃない。
どこに住んでいるのかとか、何を食べるのかも書いてある。
「黄色い鳥は……ありました!」
アロアが指をさした。
「サフランバードですって」
「じゃあ、これを紙に書こう!」
レオンが急いで紙を出す。
「赤いウサギは?」
「これですわ」
ローザがページをめくった。
「レッドラビット。森の草を食べるそうです」
「黒いリスは?」
「これではないでしょうか」
「あった!」
みんなで図鑑をのぞきながら、見つけた動物を一つずつ調べていく。
「じゃあ、あの風船みたいなタヌキは?」
俺が言うと、みんなの手が止まった。
「……風船みたいなタヌキ?」
クライヴが首をかしげる。
「いたじゃん! 体をまんまるにして、空を飛んでいったやつ!」
「そんな動物が図鑑に載っているのでしょうか?」
ローザが本をめくる。
「あ!」
ローザが声を出した。
「これではないでしょうか」
そこには、まんまるに膨らんだタヌキの絵が描いてあった。
『ニクテレウス』
危険を感じると体を大きく膨らませて、風に乗って飛んでいく。
「本当に載ってる!」
「すごい!」
「やっぱりタヌキだったんだな!」
「どこまで飛んでいくんでしょう?」
アロアが絵をじっと見ている。
「それも書いてあるぞ!」
俺は本を読む。
「風が強い日は、森から何十キロも離れた場所まで飛んでいくことがある……」
「何十キロ!?」
レオンがびっくりした。
「じゃあ、さっきのタヌキは、もう王都にいないかもしれませんね」
「……雲の上にいるかもしれないぞ」
俺が言う。
みんなで顔を見合わせた。
「探しに行ってみたいです!」
アロアが笑った。
「俺も!」
「私もですわ!」
「僕も!」
みんなが手を上げる。
でも、ローザがパタンと本を閉じた。
「その前に、発表する紙を完成させませんと」
「……そうだった」
俺たちはもう一度、本を開いた。
狩猟祭の発表まで、まだやることがいっぱいある。




