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束の間の安息

 俺は逢と舞華に連れられ館の案内を受けていた。

初めは逢が一部屋ずつ紹介していたが、明らかに必要のない部屋まで案内されていた。

そして舞華が逢に必要のない部屋の案内はいらないのではと諭してくれた。

俺も必要性を感じられていなかったので助かった。






 「ここがラウンジだよ」

言われて部屋に入りまず目につくのは、その大部屋の中央に鎮座する大きめの木製机とそれを囲むように置かれている、いかにも高級そうなソファーだ。

他にも大理石柄のテーブルなどがちらほらと確認できる。

「ここではいろんな種類のお酒を嗜むことが出来ますよ」

「お酒か」

「はい。あちらの棚にありますよ」

そう言いながら舞華がカウンターの壁際の棚を指差す。


 確かにそこには様々な酒瓶が置かれていた。

ざっと見ただけでも50種類以上だ。

「ここでは舞華っちがいろんなカクテル作ってくれるよー、ね!」

逢が舞華に確認する。

「そうですね、私に頼んで頂ければいつでもお作りしますよ」

「こう見えて舞華っちってお酒に詳しいからね」

「バーテンダーか何かやっていたのか?」

「はい、おっしゃる通りバーテンダーの経験があります」

確かに意外と言えば意外だな。初対面だからかもしれないが、あまりそういうタイプには見えない。

「分かった、今後世話になるかもしれないがよろしく頼む」

「こちらこそ、よろしくお願いしますね」

舞華が俺に向けてうやうやしく礼をする。

「次の部屋、行こっか」

「そうだな」

「そうですね、時間も有限ですし行きましょう」

逢の提案に俺と舞華は同じように同意してラウンジを後にした。






 「ここはお風呂場だよ」

ラウンジから出て突き当たりで足を止める。

正面には扉が二つ並んでいる。

どうやら右側が男湯、左側が女湯のようだ。

扉の上部に黒板があり、その黒板にそれぞれ男湯、女湯と書かれている。

「どっちがどっちか分かると思うから、間違えちゃダメだよー」

逢が揶揄うような表情になっている。

「間違えることはないからその顔をやめてくれ」

「えぇー、ほんとかなぁ?」

更に揶揄われる。

「逢、黒波さんをあまり困らせてはいけませんよ」

「はーい」

舞華の注意を受けた逢が仕方ないといった様子で返事をする。

こう見ると2人は姉妹みたいだな。

今のやり取りでそんな雰囲気を感じた。


 「どうする、お風呂場も中入ってみる?」

「いやいい、次に行こうか」

「りょーかーい!」

逢が任せてという態度でビシッと敬礼をする。

「では次は武器部屋に行きましょうか」

「さんせーい」

「武器部屋?」

「はい、このハコニワでは不定期でゲーム、もとい、殺し合いが起こるのです」

「殺し合い……か」

「殺し合い、と言っても必ずしも、誰かが誰かを殺める訳ではありませんが」

殺し合いではあるが誰かを殺す訳ではない?

舞華の言い方に少し違和感を抱く。

舞華は殺し合いの事をゲームと言った。

ならばそのゲームの内容、ルール次第で死者が出るか出ないかが決まるのか?

「過去にもそのゲームがあったんだな。そしてそのゲームの内容次第では死者が出ない、そういう話か?」

「おおかた、黒波さんのおっしゃる通りです、しかし……」

「死者が出なかったゲームなんてほんの数回だけでだいたいは、毎回数十人は死んでると思うよ」

舞華が言いかけた先を逢が続ける。

「分かった。それでそのゲームと武器部屋、どんな関係がある?」

「そのゲームで一定以上のスコアを出したプレイヤーに褒賞として武器などが与えられたりするのです。その他にも褒賞とは別でゲームの舞台上に武器が現れたりもします」

「それを回収して保管しているという事か?」

「はい」

なるほど。つまり想が使っていたのも回収したスナイパーライフルだったのか。

何か使えそうなものがあるかもしれないな。

「武器部屋はこの館の二階ですので案内いたします」






 その部屋は確かに武器部屋だった。

いや、武器部屋というより武器庫といった方がしっくりくる。

室内にはアサルトライフルやスナイパーライフル、ショットガンなどが棚に所狭しと置かれている。

入り口付近には短刀、仕込み武器などの暗器もあった。

「こんなにあるのか。思ってた以上だな」

「ねー。すごい量だよね」

俺の感想に逢が同意する。

「この中からお好きな武器を使っていただいても構いません」

「なら一度見て回ってもいいか?」

「もちろんです。では私たちは外で待っていますね」

「少し時間がかかるかもしれないから、遅かったら先に帰ってもらって構わない」

「ではそうなったら連絡いたしますね」

「ああ、頼む」


 着替えの服の隣に携帯が置かれていた。

その携帯に宵の宴のメンバーの連絡先が入っていた。

その時は気づかなかったが会議室で未莉亜に教えてもらい確認していた。

ご丁寧にチャットアプリと通話アプリの両方ありそれぞれに全員分の連絡先が登録されていた。






 まずは武器部屋にある武器を確認するか。

武器が置かれている棚はそれぞれ種類ごとに分けられている。

アサルトライフルやスナイパーライフルなどの銃の棚、刀や薙刀、槍などの刀剣の棚、短刀、仕込み杖、鉄扇や隠しナイフなどの暗器が並ぶ棚。

全ての武器の種類を数えると30種類ほどだった。

 どの武器が俺自身に合っているか考える。

 銃などは中距離長距離から牽制出来るメリットはあるが近距離の場合は対処が困難になる事や弾切れなども考えられる。他にもメンテナンスが必要というデメリットがある。

 メリットデメリットを考えるとデメリットの方が大きそうだ。

 銃は却下だな。


 刀剣の類はそのような心配はない。

俺の異能を加味すると相性は良いかもしれない。

だがおそらく俺の異能で―――。

何故か分からないがそんな事を思ってしまう。






 その後、部屋を見て周りいくつかの武器を選び、部屋を後にする。

 部屋の外には逢と舞華が待っていた。思っていたよりも選ぶのが早く一瞬驚いた顔をしたがすぐに案内の続きを始めた。

 

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