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ハコニワ

 「それでは、この世界について何から知りたいですか?」

席に着いた未莉亜が早速といったような表情になる。

この世界について、か。

それならばまずは、

「この世界は現実なのか?それとも死後の世界なのか?」

一番気になっている事を聞く。

「そうですね。あなたの質問の答えは後者です。しかし半分といったところですよ」

「後者の半分?」

「えぇ、そう。死後なのは変わりません。ですが完全なる死後の世界ではない、ということですよ。」


 死後の世界だが完全なる死後の世界ではない?

それは言い換えれば、死者ではあるがまだ完全に死者になったわけではない。


 「あなたが考えている通りですよ」

俺の思考を理解した未莉亜が不敵に笑う。

「そうか」

「そして、この世界は人間によって創られた世界なのですよ」

「人間か。それは生きている人間なのか?」

「現実で生きている人間ですよ」

人間が創った世界、それも現実で生きている人間。

「そして私たちはこの世界を創造したその人間のことを’ロード’と呼称しています」

ロードか。

「アンタ達はそのロードに会った事があるのか?」

無駄な質問かもしれないがそこから何か分かるかもしれない。

「俺は無いな」

「私も無いよー」

「私も同じくありませんね」

豪、逢、舞華が呟く。

「そうか、分かった」

豪たち以外も同じなのだろう。

しかし、

「未莉亜。アンタは違うみたいだな」

未莉亜は否定も肯定もせずただ俺の目を覗いている。その表情は何を考えているのか全く読めない。

ここで食い下がったところでおそらく未莉亜はのらりくらりと躱わすだけだろう。

「分かった、これ以上はいい」

「そうして頂いた方があなたの為なので、とても賢明な判断ですね」

未莉亜は不敵に笑う。

これからもあまり深く関わらない方が良さそうだ。

そのことを改めて認識させられた。






 「異能について聞かせてくれ」

話題を変える為に次の話を促す。

「異能。それはこの世界に来た時に目醒める力ですよ」

「それはもう分かっている」

「ですがその異能は2種類に分類されています」

2種類?

「そう2種類あるのですよ。一つは所持者の心の在り方が具現化したもの、そしてもう一つはこの世界で生きているうちに後天的に発現したもの」


 異能は後天的にも発現するのか。

そうなると次に気になるのは、

「先天的な異能所持者と後天的な異能所持者に違いはあるのか?」

「やはりそこは気になりますよね」

「あぁ、そうだな」

「違いはあります。先天的異能はその所持者の心の形が具現化したもの、後天的異能はロードによって与えられたものですよ」

「与えられた異能か」

「えぇ、与えられた異能。言い換えればロードによって植え付けられた異能と言ってもいいでしょう。」


 植え付けられた異能か。

そう聞くと何かデメリットがありそうだな。

「デメリットはどちらにも存在しますよ」

またも俺の思考を読んだ未莉亜が続ける。

「ならそれも聞こうか」

「もちろんですよ。先天的異能も後天的異能もどちらも使い続けると一時的に倦怠感が乗り掛かります」

「倦怠感?」

「その倦怠感を抱えたまま異能を使うとその場で倒れてしまいます」

「回復手段はあるのか?」

「睡眠による回復しかありませんよ」

睡眠しかないのか。

「そして倦怠感を抱きながらも異能を使い続けると脳がその処理に追いつかず焼き切れてしまうのでご注意を」

脳が焼き切れる……か。

異能も身体能力の一部という事か。

覚えておこう。

しかし、異能の使用上限は確かめておく必要があるな。

「異能についてはもういい」

「そうですか。では他に何か聞きたい事はありますか?」

「いや、もう大丈夫だ。あとは自分で調べる」

「頑張ってくださいね」

未莉亜が目の笑っていない笑顔になって俺を激励する。






 その後も未莉亜にこの世界についての説明を受ける。

どこまでが本当の事か今確認する術はない。

未莉亜が偽りの情報を出している可能性だってある。

俺は話半分に聞く事にした。


 「そうでした、まだこの世界の呼称を教えていませんでしたね」

未莉亜が思い出した素振りを見せ身体の前で手をパチンと鳴らす。

「呼称なんてあるのか?いや……そもそも呼称なんてそんなに重要とは思えないがな」

「まぁまぁ、そんなこと言わずに」

この世界の呼称か。

大して興味がないが知っておいても問題ないだろう。

俺は無言で続きを促す。

「この世界はロードが創り上げた世界、ロードの’ハコニワ’ですよ」

ハコニワか。

なんとも趣味の悪い呼称だ。

そんな感想しか出なかった。






 「それでは今日はお開きにいたしましょうか」

未莉亜が解散を促す。

それを皮切りに各々が席を立ち会議室から出ていく。

「……」

俺も席から立ち上がり、そこである事に気づく。

その椅子は想が撃ち込んだ銃弾によって貫通して穴が空いたはずだった。

しかし、

その椅子は新品の様に傷など一つもなかった。


 「ねぇねぇ、綺っちこの後何かすることある?」

後ろに立っていた逢が近づいてくる。

「いや、特に無いな」

「じゃあさ綺っちの部屋決めのついでにこの館の案内してあげるよー」

部屋決めか。

俺としてはさっきまで寝ていた部屋でいいんだがな。

まぁ、悪い提案ではないな。館の案内もしてくれるというのだから。

ここは付き合っておくか。

「それなら、よろしく頼む」

「任せてよー」

逢は拳を作り、自分の胸を軽く叩く。


 「私もご一緒してもいいですか?」

会議室から出てすぐのところで舞華に声をかけられる。

「俺は構わないが……」

「私も全然いいよ、それに人数が多い方が楽しいしねー」

どうやら逢も大丈夫なようだ。

「ありがとう」

そう言って舞華は軽く微笑む。

「それじゃ、行こっか」

逢が先陣を切り歩き出す。

俺と舞華はその後ろに並んで歩く。


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