22. 憂鬱な夜が明けて
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それからのことは、あまりよく覚えていない。ぼんやりしたまま帰り道を歩き、気づけばこがねの麦亭の部屋まで戻ってきていた。
それまでの雰囲気は一変してしまった。フルルはいつにもまして口数が少なく、僕も楽しくおしゃべりできる状態じゃなかったから、その後は一階で軽食を食べて休むことになった。
夜、ベッドに入ってからも、僕の頭の中ではずっと同じ考えがぐるぐると巡る。みんなの目的だとか、僕に対して何を思っているだとか。
この街にやってきたのはたまたまなんだろうか。いや、さすがにそんなことはないだろう。なら、やっぱり黙って出てきた僕に怒ってる……?
ただただ、彼女たちと会うのが怖い。
そんなことを考えているうちにどんどん時間は過ぎ、やっと眠りにつけたと思ったらすぐに朝が来た。
目を開けると、気づいたアニマが姿を見せ、淡く光りながら顔前にやって来る。ちかちかと点滅して、僕を心配してくれているようだ。
「……ありがとう。大丈夫だよ、アニマ」
僕は小さな声で言って、寝不足で重たい頭を起こした。そうしてふよふよと浮かぶアニマから視線を隣に移す。
「今日は早いんだね、フルル。おはよう」
「ん。おはよ」
すでに着替えを済ませているフルルが僕を見る。いつもねぼすけのフルルにしては、僕より早く起きているだけで珍しいのに。やっぱりフルルもみんながこの街に来たって聞いて、いつも通りではいられないんだろうか。
僕はマーチさんたちのことを思い出し、また少し気分が沈むのを感じる。頭を軽く振って気持ちを切り替え、立ち上がった。
朝から落ち込んでるなんて良くないよね。いつも通り、元気に。
じいっと僕を見ているフルルに向かって言った。
「……さあ、朝ご飯食べにいこっか! 僕もうお腹ぺこぺこだよ。すぐに着替えちゃうから、ちょっとだけ外で待ってて!」
少し空元気だったかな。
フルルはまた無表情でしばらく僕の顔を見つめ、それから微かに頷いた。
「水、それ使って」
ベッドのわきの台に指を向け、部屋を出る。台の上にはガラスの水差しとコップ、それと顔を洗うための水桶が置いてある。朝日を反射して光る水差しを手に取る。コップに水を注いで口に含んだ。
「冷たい。……フルルが冷やしてくれたのかな」
その気遣いに胸が温かくなる。少しだけ元気をもらえた。
僕はコップの残りの水をぐいっと飲み干した。よく冷えた水がのどを通って身体を潤す。頭もずいぶんすっきりした。
それから僕は、フルルを待たせないよう急いで準備した。桶に水を入れて顔を洗い、口をゆすぐ。いつもの服に着替え、乱れた髪を手櫛で直した。すぐに部屋の外に出る。
「ごめん、お待たせ! …………あれ?」
部屋の前にフルルはいなかった。僕は間抜けに口を開け、通りかかった他の客に胡乱な眼差しを向けられる。頬が赤くなった。
フルル、先に降りるなら一言かけてよ……。たしかに下で合流すればよかったんだけど。
フルルらしいやと苦笑いして階段を下りる。帳場台のおじさんに頭を下げて食堂に向かった。
「フルル。お待たせ」
一人テーブルに着くフルルを見つけて声を掛ける。フルルはパンをくわえながら目で返事をした。テーブルの上に目を向けると、フルルだけじゃなくて僕の分の朝食も用意されている。ちゃんと二人分用意してもらったらしい。
な、なんだか今日のフルルはおかしいな。いつもより気が利くというか、優しいというか……。
目を丸くしていると、フルルがぷいっとそっぽを向く。
「食べないなら、わたしが食べる」
「あっ、だめだめ、僕も食べるよっ」
急いで席について朝食に手を付ける。温かい根菜のスープでパンを流し込みながら、少しだけ顔を上げてフルルを見た。
「……っ」
目が合った。嗜虐的に口角を上げたフルルに、くすりと鼻で笑われる。か、からかわれてた……。
僕から目をそらしたフルルは、どこか機嫌よさげにまたご飯を口に運ぶ。それを見て僕も食事に戻った。それから、朝の重たい気分は少しだけ薄れていて、僕たちはいつも通り話しながら食事を取った。アニマも僕たちの雰囲気を見て、ほっとしたようにひらひら舞っていた。
マーチさんたちのことは気がかりだけど、今日も依頼を受けるんだし、ずっとくよくよもしていられない。気にするなというのは無理だけど、それでも少し強がるくらいはしてみせよう。僕についてここまで来てくれたフルルに、少しだけ勇気を分けてもらった。
ゆっくりとおいしい朝食を味わった僕たちは、それから部屋に戻って準備をして、まだ早いうちに宿を出た。昨日たくさん遊んだ分しっかり働かないと。今日はまたサシャちゃんたちと依頼を受ける約束なのだ。
僕たちは装備を整え、冒険者組合に向かった。
やっと更新できました。先日の更新からずいぶんと時間を空けてしまってすみません。就職活動が思ったよりも長引いてしまって、七月まで更新を先延ばしにしてしまいました。一応就職活動に一区切りついたので、またこれから更新を再開しようと思います。
もし待っていれくれた読者さんがいれば、すみません。それとありがとうございます! まだいろいろとリアルの方でイベントがあるので、以前ほどの更新頻度はむずかしいですが、また頑張って作品の続きを書いていきます。よろしければ引き続き応援お願いします!
p.s.
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