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普通の兵士になりたかったのに、皇帝直属の隠密として帝国の闇を任されすぎている  作者: ネコミコズッキーニ
5章、他国でフワッとウワサを流すだけの任務ですよね?

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マイカーカス領のノーマンドさん

 マイカークス領の某所にて。そこでは領主の次男であるノーマンドが1人の樹精エルネスと向かい合っていた。


 樹精エルネスは人種の基準で言うと美男美女が多いが、その樹精エルネスも例外ではなく美しい外観をしていた。


 黄金を溶かしたような金の髪に整った顔、そして長い耳。その女性は白を基調としたドレスを着ており、首には青緑の大きな宝石がはめ込まれた首飾りが光っている。


 ノーマンドはいつものように彼女に見惚れていたが、ハッと顔を上げて軽く咳払いをする。


「ご機嫌はいかがですか、セリアリス王女」


「の、ノーマンド様……えぇ。皆さんよくしてくれますし、大変助かっていますよ……ほ、ほほほほ……」


 ノーマンドがその女性を保護したのは約1年ほど前になる。


 見つけたのは偶然だったが、今でも王族の証である〈星霊珠マナ・カリス〉の首飾りをした美しき樹精エルネスの姫と出会ったときのことはよく覚えている。


 なんと彼女は詐欺師グループの一員として働かされていたのだ。きっと世間知らずの令嬢をだまし、都合よく利用していたのだろう。許せるものではない。


 ノーマンドはそんな詐欺師グループから彼女を救いだし、その時にとある筋から聞かされた情報をもとに確認をしたのだ。


『もしや宰相の起こした反逆は誠であり、あなたは捕まる前に城から出られたのでは!?』


『え!? そ、そう……です……?』


『やはり……! おのれヘルカント……! 姫、ご安心ください。私があなたの国を取り戻してみせましょう!』


 そうしてノーマンドはとある筋……今は支援者となった女性と協力し、今日まで準備を整えてきた。


 もうすぐ「実はこちらでセリアリス王女を保護していたのだ」と公表することもできる。


「セリアリス王女には窮屈な思いをさせてしまい、申し訳なく思っております」


「そ……そんなこと、ないですよ……?」


「ですがもう少々ご辛抱ください……! あと少しであなたにこの国をお返しすることができます! 我が忠誠と愛をもって、それを証明してみせましょう……!」


「た、頼もしいですわ、ノーマンド様」


 セリアリス王女との面会を終え、ノーマンドは別室へと移動する。そこにはすでに支援者である女性……ジャスリンがいた。


「王女様のご様子はいかがだったかしら?」


「ご本人は問題ないとおっしゃっておられたが……私に心配をかけさせないためのウソだろうな。一刻も早く宰相ヘルカントの手から王国を取り戻さねば……!」


 ジャスリンとの付き合いもそれなりに長い。


 もともと龍気ドラグマを用いた変わった道具を扱う商人だったのだが、王都で商売をする機会も多かったらしく、彼女からはさまざまな情報を得ることができていた。


 その中の1つに「宰相が謀反を起こした」というものがあった。


 当初は信じていなかったノーマンドだが、実際に〈星霊珠マナ・カリス〉の首飾りを持った美しき樹精エルネスと出会い、直に話を聞いたことでジャスリンの情報が正しかったのだと確信を持つ。


 それからノーマンドは信頼できる者だけにセリアリス王女のことを話し、宰相ヘルカントからラブルローン王国を取り戻すための準備を進めてきた。


「お前の話によると、王都近郊で危険な魔獣が多発するようになったのも宰相に原因があるとのことだったな?」


「ええ。城の地下には古代の魔獣を封じた幽牢獄晶クワイエット・コアがあるのですが、あろうことか宰相はその封印を半分解いてしまったのです。封印の解けかかっている古代の魔獣が放つ波動、これにつられる形で遺跡から魔獣が出てきているのは間違いありません」


「く……! 国を我が物にするという野心に飽き足らず、民を危険にさらすなど……!」


 ノーマンドも知らなかったが、どうやら城の地下には古代の魔獣が封じられているらしい。


 その封印を解くカギは2つあり、宰相はその1つを使ったとのことだった。


 いずれにせよこのまま放置すればラブルローン王国が滅亡の危機を迎えるだけでなく、解き放たれた古代の魔獣は他国にも被害をもたらすかもしれない。


 一刻の猶予もないが、ノーマンドにもすぐに動けない理由があった。


「問題は王国最強の騎士マクシミリアンまでもが宰相に味方しているという点だな……」


仙勁オーラレベル8は、人外の領域。兵士をそろえたところでたった1人相手に全滅の可能性もありますからね」


 今セリアリス王女の存在を公表すれば、ヘルカントはあらゆる手を打って王女を亡き者にしようと動き出すだろう。


 国の実権を握った今、最も邪魔なのは直系の子であるセリアリス王女なのだから。


 また兵を起こそうにも大義名分がいるし、多くの貴族たちに対する根回しも必要だ。


 下手をすれば宰相が王の命令というていで、逆臣マイカークス領主一族を討てと指示を出す可能性もある。


 そうした権力に加えて、王国最強の騎士まで宰相ヘルカントについているのだ。セリアリス王女を押さえているノーマンドとしても慎重にならざえるを得なかった。


「マクシミリアンめ……! 何が忠義の騎士だ! 逆賊に加担するなど、騎士の恥め!」


「たしかにマクシミリアンは無視できませんね。ところでノーマンド様……わたしの伝手で仙勁オーラレベル8相当の傭兵を手配することができますが、いかがなさいますか?」


「なに!? そ……そんな傭兵が存在するのか!?」


 仙勁オーラレベル8ともなれば、各国にも名が知られているほどだ。そしてそうした実力者はだいたいが国が抱えていたり、あるいは闇社会で幅を利かせている。


 そのネームバリューだけで富も名声も得られるようなものだ、わざわざ傭兵をしている者というのは想像がつきにくい。


「わたしも商人として、いろんな国で縁を作ってきましたから……。先日連絡を取ることができ、ノーマンド様の事情を話したところ、金次第で雇われてもいいと返事をいただきました」


「なんと……! ジャスリン、きみには世話になりっぱなしだな……!」


「ふふ……すべてはノーマンド様とこの国のためです」


 もしその傭兵を雇うことができれば、マクシミリアンを封じることができる。あとはどう城に入り込み、逆賊を討つかだ。


 すでに城内の貴族は宰相派になっていると考えたほうがいい。


 堅実なのはここから時間をかけて信頼できる貴族の仲間を増やし、数の力で取れる策の選択肢を増やすというものだ。


 しかし国の現状を考えるともはやそこまでの時間が残されていない。


 それにノーマンドも若い、できれば自分の力で国の危機を救い、セリアリス王女にお返ししたいと考えている。


「あらためて策を練らなくてはな……だがジャスリン、なぜ城の地下にあるという封印のことを知っている? それに宰相が謀反を起こしたという情報、2年も前のことなのにまだどの貴族にも知れ渡っていないようだが……」


「そこは宰相の努力の賜物でしょうね。ただ長く王が表舞台に出ていないことを怪しんでいる貴族は多いですよ」


「それはたしかに……」


「地下の封印については、商売柄〈王立古代遺物研究院レリクス・ラボ〉ともつながりがありまして……そこから聞いた話になります」


「なるほど、〈王立古代遺物研究院〉か……」


〈王立古代遺物研究院〉の中にも宰相に味方している者はいるだろう。そうなるとだれが敵でだれが味方かの判断もむずかしい。


 せっかくレベル8の傭兵を雇い入れるのだ、これを機に金で動く腕の立つ傭兵を増やしてもいいかもしれない。


 彼らを縛るのはあくまで金、権威や権力で操られる危険性を考えると、この事態においては傭兵のほうが使い勝手がいい可能性もある。


「……よし、戦力を拡充したうえで城に入り込む算段をつけよう」


「ふふ……この国を救えるのはノーマンド様だけですわ」


「ああ。セリアリス王女にこの国を逆賊の手からお返しするのだ……!」





 キリバ遺跡は王都から少し離れたところにあり、到着したころにはすでに昼を回っていた。


 俺たちは昼食をとってからあらためてキリバ遺跡へと入る。


「見た目は本当にただの洞窟だな……」


 事前情報通り、キリバ遺跡の入り口はどう見ても洞窟だった。しかし中は龍気ドラグマを蓄えた鉱石の影響もあって明るく視界もいい。


 そうしてしばらく歩き続けると、周囲の景色が洞窟から大きく変化していた。


「これは……!」


「ほう……なかなか神秘的ではないかっ!」

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