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普通の兵士になりたかったのに、皇帝直属の隠密として帝国の闇を任されすぎている  作者: ネコミコズッキーニ
5章、他国でフワッとウワサを流すだけの任務ですよね?

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朝の占いでその日の行動を変えがちな人っているよね

「調査依頼ですか……?」


 受付嬢が少しむずかしそうな顔をする。というかセリスはなぜにそんな依頼を……?


「どうしたんだ、セリス。魔獣か遺跡の調査依頼って……」


「はい! 朝のパンの焼き目シンクロ率占いの結果、何かしらの調査依頼と相性がいいと出まして……!」


「…………はい?」


 セリスは1日にだいたい3~5回ほど占いを行う。そして1回目の占いは共通して朝一番に実施されていた。


 今日はどうやらパンの焼き目、そのシンクロ率を見たようだ。ところで焼き目のシンクロ率ってなに?


「ははは! そういえばせっかくラブルローン王国に来たのに、まだ遺跡調査はしていなかったね! レディ、どうかな? おもしろそうな調査依頼はないのかい?」


 ま、まぁ経緯はどうあれ、俺が確認したかったことにもつながっている。それにジェルトや双子姉妹も、たまには変わり種の依頼をこなしたい様子だ。


 ジェルトの言葉に受付嬢はふたたびむずかしい表情を見せた。


「遺跡調査ですか……たしかに以前はよくそうした依頼があったのですが、ここしばらくはないんですよね……」


「おや、そうなのかい? ラブルローン王国といえば遺跡の数も多いことで有名だし、調査依頼も当然のようにあると思っていたのだが……」


 ここぞとばかりに俺も口を挟む。


「〈王立古代遺物研究院レリクス・ラボ〉の研究員と一緒に遺跡に潜ったりとか、そういう依頼はないんですか?」


 少なくともこの1ヶ月、そうした依頼はなかった。


 もともとなくてヴァネッサ室長が勘違いをしていただけなのか、あるいは最近になってそうした依頼が出されなくなったのか。


 受付嬢はその答えをくれた。


「はい。以前までは国からの依頼という形で、そうした仕事もあったのですが……。報酬も高額で人気の依頼ではあったのですが、最近は魔獣討伐の依頼が中心になっていますね」


 なるほど……以前まではあったのか。


 だが俺も自分の仕事を達成するには、そのあたりの事情はしっかりと把握しておきたいところだ。


「今は〈王立古代遺物研究院〉がかかわる依頼はないのですか?」


「はい。遺跡調査にかかわる依頼全般が出ていませんね。遺跡調査が得意なストライダーからすれば、最近は少し仕事がしにくくなっているそうですが……」


「俺もせっかく王国に来たからには、遺跡調査はやってみたいんだけど……。どうして〈王立古代遺物研究院〉は依頼を出さなくなったんです?」


 おいおい。依頼で接触できないとなると、なんのためにストライダーとしてやってきたのかがわからなくなっちまうよ! 


 いや、けっこう楽しんではいるけどさぁ!


「さぁ……国の考えることですので……。ただ〈王立古代遺物研究院〉からの依頼がこなくなった時期から、急に凶暴な魔獣が王都近郊に多く出るようになりましたから。もしかしたらその件で、国も対策に追われて忙しいのかもしれません」


 マジかよ……! そうなると俺はどうやって〈王立古代遺物研究院〉の研究員と接触すればいいんだ……!?


「なるほどねぇ……セリスくん、残念だったね。どうやら調査依頼はないようだよ」


「そうですか……」


「だがせっかく王国に来たのに、遺跡に潜らないのももったいない! 依頼とは関係なく遺跡に行ってみようではないかっ! レディ、ここから近い遺跡はどこかな?」


「えぇ……本当に行かれるんですか……?」


「もちろんだ!」


 受付嬢は「とくに報酬が出るわけでもないのに、なんでそんなことをするのか……」という目で見ている。


 これもきっとお金に余裕があって、まだまだジェルトの好奇心を満たせていないからだろう。


 このままだと本当に遺跡観光になりそうだな……それもわるくはないが、俺の目的とは少し外れてしまう。


 どうにか〈王立古代遺物研究院〉と自然に接触を持てないものか……?


 そう考えていると、受付嬢の後ろから別の女性が姿を見せる。彼女は俺たちに静かな視線を向けてきた。


「なかなかおもしろい話をしているじゃないの」


「あ、副ギルドマスター!」


 え……副ギルドマスター? ここ王都支部で二番目に偉い人?


「そのグレートソードに双子の魔術師……あなたたちが〈無名の灯火(ネームレス・ライト)〉ね? 直近1ヶ月における高難度魔獣の討伐数が1位という」


 え、俺たち1位なの!? 


 討伐依頼だけをこなしていたわけではなかったのに、働きすぎじゃない? それとも他のストライダーが働かなすぎたのか?


「その通りさ! 私はリーダーのジェルト!」


「……いいわ、ちょうど遺跡調査依頼があるのよ。ある程度以上の戦闘力があるパーティに振るつもりだったのだけれど……興味はあるかしら?」


「あるね! 聞こうじゃないか、副ギルドマスター殿?」


「ジスレットよ。いいわ、こちらにいらっしゃい」


 急な展開だったが、俺たちはジスレットについていく形で個室へと移動する。そこでさっそく依頼内容について話してくれた。


「あなたたちに調査してもらいたい遺跡は、王都の南西にあるキリバ遺跡になるわ」


「キリバ遺跡?」


「見た目は洞窟なんだけどね。中に進むと古代に作られた回廊が現れるの。洞窟の中なのに、神殿の中にいるような気分が味わえるわよ」


 おお……古代ロマン……! 


 学院の地下以外に遺跡に入ったことがないので、少し楽しそうに思えてくる。


「実は先日、とあるパーティが目撃したのよ。キリバ遺跡から複数体の断崖熊クリフ・ベアが出てくるのをね」


断崖熊クリフ・ベア……! 凶悪度ランキング上位常連の……!」


 上位常連多いな! 


 いや……そんな魔獣がやたら王都の近くに現れるようになっている現状がおかしいのかもしれないけど。


 あとノア先輩の欲しいものリストに入っていた魔獣でもある。あの人、俺1人では倒せない魔獣素材を選んでない……?


「ふむ? 私は帝都での活動が長かったのでよくわからないのだが……古代遺跡からそうした魔獣が出てくるのは珍しいのかい?」


「珍しいわね。そもそも断崖熊や紅殻魔蠍クリムゾンスコルピオといった討伐難易度の高い魔獣は、遺跡にしか生息していないの。それが最近はやたらと街道などに出没するようになった……」


「遺跡から出てきていると?」


「その可能性が非常に高いと見ているわ。魔獣の生態なんてほとんど解明されていないけど、もしかしたら遺跡内部で大繁殖を行っており、あふれた個体が遺跡から出てきている可能性もある」


 あまり考えたくない話だな……。


 遺跡には強い魔獣が多いとは聞いているけど、1匹2匹ならともかく何匹も外に出てこられたら迷惑甚だしい。


「その考えを裏付けるように、ストライダーパーティが実際に遺跡から複数体の断崖熊が出てくるところを目撃した……」


「なるほど。遺跡に潜って本当に断崖熊が大繫殖しているのか、あるいは遺跡から出てくる何かしらの要因があるのか……それを調査してほしいということだね?」


「察しがはやくて助かるわ。高難度魔獣を無傷で何体も討伐している〈無名の灯火〉にふさわしい依頼でしょう?」


 ジスレットもこの調査依頼を振るパーティを選んでいたということかな……。とりあえず気になる点を確認しておくか。


「ちょっといいか? いくつか確認したいんだけど……」


「なにかしら?」


「まず今回の依頼についてだ。これはどこからの依頼になる? 〈王立古代遺物研究院〉か?」


「いいえ、ギルドからの依頼になるわ」


 遺跡から魔獣が出てくるのを目撃したストライダー。


 それを聞いたギルドが、わざわざ遺跡を調査しようと考える……?


「どうしてギルドが? もし本当に魔獣の大繫殖が起こっていたら、国として対応すべき案件になると思うんだけど……」


「たしかにその視点は間違っていないわね。実はわたしのほうから国にはこの件を報告したのよ。できれば〈王立古代遺物研究院〉の研究員とその護衛の騎士、そして魔獣との戦いに慣れたストライダーパーティが合同で調査に乗り出すべきだ……と」


 なんと……すでに検討済みだったのか。


「だけど〈王立古代遺物研究院〉はずっと別件に取りかかっているとかで……1人も調査には回せないという回答だったの」


「え……〈王立古代遺物研究院〉って、そんなに人が少ない組織なんですか?」


「どうかしらね。少なくとも少し前まで依頼を受けていたギルドとしては、十分に研究員の多い組織だという印象だけど……」


 まぁ事情があるのはたしかなようだ。


〈王立古代遺物研究院〉から長らく遺跡調査の依頼がきていないのは、別件に取りかかっているという話と関係があるのだろう。


 なんにせよこのままでは簡単に〈王立古代遺物研究院〉の研究員と接触できないのが確定してしまった。


「ただ遺跡内部で何か決定的な証拠でもあれば、国としても対応せざるを得なくなるはず。まだ調査段階だけど、ギルドとしてはあなたたちに遺跡内部で起こっている……かもしれない異常について調べてきてほしいのよ」


 異常が起こっているとは断定できないが、昨今の状況からして何かある可能性は高い。


 あまりにも王都近郊で魔獣の出現が続いている現状に、ギルドとしても何かしらの手を打ちたいのだろう。


 まずは国として対応してもらえるレベルに引き上げたい。そんなところかな。


「それじゃ2つ目だけど……もし何も異常を見つけられなかったら? あるいはあまりにも魔獣の数が多すぎて、途中で引き返した場合は? 依頼達成とみなされるのか?」


「どういう形であれ調査結果を報告することで依頼達成とみなすわ。異常がなければどういう点でそう判断したのかを報告してもらうし、引き返したのならそれだけの理由を報告してもらうだけのことよ」


 どうあれ依頼を引き受けて遺跡に入った時点で、仕事はこなしたとみなされそうだな。


 まぁもしかしたら遺跡で本当に異常が見つかれば、あらためて本格的に調査を行おうと〈王立古代遺物研究院〉が出てくる可能性もあるし。


 このまま接点を持てないまま待っているよりは、調査依頼を受けてみるのもアリかもな。


「フ……どうだい、みんな。私はこの依頼、受けてもいいと思ったのだが……」


「いいよ~!」


「どんな魔獣もやっつけちゃう!」


「占いの結果でも調査関連の仕事は吉! です!」


「ああ、俺も構わない」


 全員の意思を確認したところで、ジェルトがジスレットに不敵な笑みを向ける。


「ではキリバ遺跡の調査依頼、我々〈無名の灯火〉が請け負うではないか! 安心してここで報告を待っていてくれたまえよっ! よっ!」

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