王都到着! ストライダーギルドへ
乗合馬車は王都入口にとまり、そこで俺たちは下りることになった。
「そんじゃ、あんたらのストライダーとしての活躍に期待してるぜ!」
御者のおっちゃんにもエールをもらう。俺はあらためて正面に広がる王都を視界に収めた。
「おお……! すっげぇ……!」
あまりにも帝都と雰囲気が違いすぎる……!
規模はさすがに帝都のほうが大きいが、王都ラブルリアは雑多ながらも独特の活気が感じられた。
まず妖精族の血を引く者たちが当たり前のようにそこかしこにいる。
ルナとルミアのようにケモ耳と尻尾を生やした者たちが闊歩し、露店で商人と値段交渉をしてるところも見える。
セリスのような長い耳を持つ人物が、側頭部に角の生えた人と一緒に笑いながら話している。帝都ではまず見ない光景だ。
「ほう……! 帝都とは違って、なかなか物騒そうな連中も多いじゃないか!」
ジェルトも興味津々といった様子だ。そして彼の言うとおり、物騒な連中もあちこちに見えた。
帝都では基本的に武装しているのは兵士や騎士など、一部の者たちに限られている。しかし王都ラブルリアでは右を見ても左を見ても、武装している者たちが普通に歩いているのだ。
服装からして兵士や騎士でもない。おそらくストライダーなのだろう。
ストライダー優遇政策を打ち出し、さまざまな者たちを受け入れ続けていることで、ここはストライダーたちの聖地になっているのかもしれない。
帝都ではストライダーなんてなかなか見ないからな……! それだけこの国はストライダーを必要としているのだろう。
「わぁ! あれあれ!」
「魔獣素材専門店だって~!」
ストライダーたちは魔獣を狩り、素材として売り飛ばす。とくにこの地では魔獣素材の需要も多く、いたるところに魔獣素材専門店があった。
中には見えるように倉庫の奥で魔獣を解体している店もある。一部の肉は端に固められているが……肉屋に卸す用なのかな……?
あと目に付くのは広く整備された道と宿屋の多さだ。
そういえばこの国ではストライダーのランクによって宿代でも優遇を受けられるんだっけか。きっと宿を拠点にしているストライダーも多いのだろう。
広い道は城まで続いているようだ。いくつもの馬車が行き交っており、たまにひかれそうになっている者もいる。
俺とジェルト、それに双子姉妹は初めてくる王都に見とれていたが、セリスは無表情だった。なんとなくその視線は城に向いているような気がする。
「……セリス?」
「え!? あ、あぁ、すみません……どうしました?」
「いや……べつに……」
こういう場ではあんまりはしゃがない主義なのかな……? うかれていた自分が少し恥ずかしい……。
さて……ここからまずはストライダーギルドに行かなくてはいけないけど……どこにあるんだ……?
と、思っていたらさっそくジェルトが近くにいるストライダーらしき人物に話しかけていた。
「やぁきみ! 私は初めて王都ラブルリアにやってきたストライダーさ! ストライダーギルドはどこかな!?」
「あ、あぁ……。ギルドならこの通りをまっすぐ進めば、右手に見えてくる……」
「感謝するよ! これからどこかで会ったらこの恩を返させてもらおうっ!」
さすがリーダー……抜群のコミュニケーション能力を発揮して爆速で情報を得ている……。
そういや俺も帝都のギルドで、ジェルトから話しかけられたんだった……。
そんなわけで5人で王都の景色を楽しみながら歩き始める。
帝都は行政によってしっかりと管理された都市という印象だけど、王都は住民たちに丸投げして勢いで発展している街という印象があるな……。
とにかく騒がしい。人だけでなくいろんな種族が混在しており、ケンカもそこかしこで発生している。気性の荒いストライダーが多いのだろうか。
「ぜんぜんギルドが見当たらない~!」
「いつまで歩くの~!」
「聞いてみようじゃないかっ! そこのきみ! ストライダーギルドはあとどれくらい歩けばいいかな?」
「はぁ? 歩くと何時間もかかるよ。大通りを巡回する馬車を適当に捕まえて乗せてもらいな」
「なんと! 貴重な情報感謝するよっ!」
帝都ほどでなくとも、王都も大規模な都市であることに変わりはない。さすがに歩いて向かうには遠すぎたようだ。
俺たちは途中で店に入って昼食を済ませる。それから馬車を捕まえて王都の中心区へと向かい、いよいよ目的地であるストライダーギルド王都支部へと到着した。
「わぁ~~!」
「おっきい~~!」
「ほう……帝都のギルド支部とはまったく異なるではないか!」
さすがにストライダーを多く集める国だけあって、ギルドの建物はかなりでかかった。
城がすぐ近くに見える場所でかつ大通り沿い。この時点でまず一等地だろう。
三階建ての建物は奥行きもかなりあり、一等地に広大な敷地を確保している様がうかがえる。
また正面に見える大きな出入口は3つもあり、そのすべての扉が解放されていて中の様子がよく見えた。
多くのストライダーや庶民たちが出入りを繰り返しており、中からは騒がしい声が外まで漏れてきている。これだけでもすごい活気だと伝わってくる。
「では我々も中に入ろうではないか!」
ドキドキしながらギルドの中へと足を踏み入れる。
帝都のギルド支部なんてほとんど閑古鳥が鳴いているような状態だったのに……! なんだこの人の多さは!?
右手と左手、そして正面の奥にカウンターがあり、そこに多くの受付が並んでストライダーたちの対応を行っている。
それぞれのカウンターの上には標識があり、【依頼受付】【依頼受注・報告】【苦情・トラブル相談】などで分類されている。
またホールは吹き抜けになっており、二階にもストライダーが多く集まっているのが見えた。
酒の入った杯を持っている奴も見かけるし、二階は酒場になっているのかな……?
「すご~~い!」
「こんなに大きなギルド、初めて見た~~!」
「フ……さすがの私もこれには驚きだよ!」
まずはホールの真ん中にある総合受付へと移動する。そこの美人な受付嬢にジェルトはスマイルを向けた。
「やぁやぁ突然失礼するよ! 私たちは今日王都に到着したストライダーさ!」
「いらっしゃいませ。基本的な説明やラブルローン王国での活動に関する注意点など、そうしたご案内でよろしいでしょうか?」
「ああ! それとパーティの登録もお願いしたいのだが……」
「では説明と同時にパーティ登録も済ませるように手続きを進めておきます。順番がきましたらお呼びいたしますので、あちらにかけてお待ちください」
手慣れている……!
きっと毎日のように、初めて王都にやってきたストライダーたちの相手をしているのだろう。案内によどみがない。
そうして少し待っていると、奥にある個室へ入るようにと案内される。
言われるがままに5人で個室に入ると、中には他にもストライダーらしき人たちがいた。
「あなたたちで最後ですね。ではイスに座ってください」
どうやら合同で説明するようだ。うーん、効率的……。
俺たちは並んでイスに座る。正面には女性スタッフが立っており、全員が座ったのを確認して口を開いた。
「まずは王都ラブルリアへようこそ。ギルド王都支部はみなさんを歓迎いたします」
やはりこの部屋にいる者は全員、王都に来たばかりのストライダーのようだ。
「まずすでにご存知の内容でもあるでしょうが、基本からお話しさせていただきます。ギルドは依頼を斡旋するだけで、あなた方の安全はあなた方自身が守ること。無茶な依頼を受けて死んでも、ギルドは責任を負いません」
「んなことは知ってんだよ! ラブルローン王国ならではの注意点やルールを聞かせてくれ!」
おお……! いかにも気性が荒らそうなストライダーだ……!
というか俺、ストライダーとしての基本事項とかぜんぜん把握していなかった……。
こういう説明を受けたのも初めてなので、逆に新鮮味を感じる。
「コホン……まぁいいでしょう。まず王都支部の利用方法ですが、ここでは……」
スタッフさんもこの手のストライダーには慣れているのだろう。まったく気にした様子もなく説明を続けていく。
説明の内容はとてもわかりやすいものだった。図書館にある魔獣資料の持ち出し禁止といった注意事項から、基本的な仕事の受注方法や報告の仕方などになる。
またラブルローン王国は貴族からの依頼も多く、一部の依頼は指名になるとのことだった。
「最後に、ラブルローン王国におけるストライダーの優遇内容ですが、これは個人ランクやパーティランクで左右されます。公営施設の利用料や税制面での優遇など恩恵もありますが、王国は前歴のある方や素行不良な方にはそうした優遇措置は取らない方針です。この国でランクを上げたければ、前提として品行方正を心掛けてください」
おお……なるほど……! どうやって素行の荒い者たちこんなにたくさん集めてコントロールしているのかと思ったけど……!
餌をぶら下げて、無用な騒ぎを起こさせないようにとしていたのか。これも目に見える形でストライダーを優遇しているからこそできることなのだろう。
まぁその点、うちのパーティは何も心配する必要が……ひ、必要が……。
「……………………」
コミュニケーションの中で騎士を煽るリーダー。
派手な名乗りで火柱を上げて、あやうく大火事を起こすところだった双子姉妹。
妙な占いで乗合馬車の営業妨害をしようとした樹精。
ま、まぁ……だいじょうぶ、だよな……?




