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普通の兵士になりたかったのに、皇帝直属の隠密として帝国の闇を任されすぎている  作者: ネコミコズッキーニ
5章、他国でフワッとウワサを流すだけの任務ですよね?

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ストライダー帝都支部に現れたビッグな新人

 執務室を出て廊下を歩く。現地で具体的にどう活動するのかなど、細かな部分はいつも通り行き当たりばったりの丸投げではあるが、今回の仕事はまぁ楽な部類に入るだろう。


 そもそも元は紋影官シジル・シャドウに任せるまでもない仕事である。


 たまたまさまざま事情が重なって俺に回ってきたが、紋影官としての能力……つまりは異能など使わずともできる仕事だ。


 ややこしい調査や見張り、護衛もする必要がない。黒曜聖徒なんていう物騒な輩と戦う必要もないときた。


 どうやって〈王立古代遺物研究院レリクス・ラボ〉の研究員と接触するのかは考えなければならないが、言ってしまえばそこさえクリアすればミッションの9割は達成したも同然。


 しかも移動手段は水路であり、楽できそうだし。あと俺、幼少期はストライダーに憧れていたこともあって、実は俺のことを知る人がいない土地でストライダーとして活動するのが楽しみなんだよね。


 まぁ言っても俺の仙勁オーラレベルは3相当だし、だれもが注目するストライダーとしては活躍できないだろうけど。でもいいんだ、ストライダー気分を味わえれば。


 それに他国の王都に行ける機会というのも貴重である。


 ストライダーというロールプレイングをしながら、観光気分で回ってみてもいいだろう。そう思うと今回の任務、楽しくなってきた。


「……ん。後輩、機嫌よさそう」


「あ、ノア先輩」


 正面からノア先輩が歩いてくる。この先はヴァネッサ室長の執務室しかないので、おそらくノア先輩は室長に呼ばれたか用事があるかなのだろう。


「何かいいことあった?」


「わかります? 実はラブルローン王国の王都に行くことになりまして……」


「…………ほう」


 そういやノア先輩、任務で国外に行ったこととかあるのかな。気になったので少し聞いてみることに。


「ノア先輩はラブルローン王国って行ったことあります?」


「……ない。でもどういうところなのかは知っている」


 隣国だし、それなりに情報はあるよね。


 そういやハグリアの街でリシェルに黒夢晶ダークルシッドを渡したストライダーたちも、ラブルローン王国から来ていたよな。


「ラブルローン王国へ行くならちょうどいい。後輩、お土産でほしいものがある」


「なんですか? ノア先輩にはいろいろお世話になっていますし、なんでもいいですよ?」


 この間も髪ツヤ石鹼を大量に作ってもらったし。あまりにも量が多かったので、業者を使ってアヴィエスの寮まで届けさせた。


風牙鳥ウィンド・ラプターの羽、断崖熊クリフ・ベアの爪。あと紅殻魔蠍クリムゾンスコルピオの尻尾と黒角王ダークホーンの角がほしい」

「……多くないすか? というか全部魔獣関連の素材じゃ……」


「…………ん。前々から欲しかった。帝国にはいない魔獣だし。きっとまた新たなクスリを調合する素材に使える」


「え……えぇ……」


 今聞いた魔獣、どれも初めて聞く名前だったんだけど。というか名前の雰囲気からしてどれも危険度が高そうな魔獣じゃない?


「きっとストライダーギルドや魔獣素材専門店で手に入る。期待している、後輩」


「はぁ……」


「むずかしそうならどれか2つでも構わない。じゃ」


 そう言うとノア先輩は廊下の先へと進んで行ってしまう。というか最低でも2種類は魔獣素材を確保するように頼まれてしまった……。


 まぁ今回の任務はこれまでのものと比べても楽そうだし、きっと余裕もあるだろう。


 せっかくだしストライダーとして、どれだけの魔獣素材を集められるかトライしてみるのもおもしろそうだな……!





 そんなわけで翌日。俺はヴァネッサ室長に言われた通りに帝都のストライダーギルドを訪れていた。


 初めて来たが、ストライダーギルド帝都支部は南エリアにどどんと構えられて……はいなかった。こじんまりした酒場のような雰囲気だ。


 きっと帝都で活動するストライダーの数が少ないからだろう。


 俺は気にせず中に入る。そして正面に見える受けつけに向かい、そこにいる男性に声をかけた。


「おう、ストライダーギルド帝都支部にようこそ。依頼かい?」


「いや、ストライダー登録証を受け取りにきたんだ。レオンという名ですでに登録証が作られているはずなんだけど……」


「…………! そうか、あんたがレオンか……! あぁ、話は聞いているぜ、ちょっと待ってな」


 そう言うと男性は二階へと上がっていく。ここに来る前に調べたのだが、ストライダー登録を行う方法は大きく2つあるようだ。


 1つは自らギルドに赴き、そこで登録証を作ってもらうこと。この場合、犯罪歴の調査などが入るので、少し時間がかかるのだとか。


 そしてもう1つの方法が、推薦人が書状を書いてギルドに提出するというものだ。


 今回、俺は後者の方法でストライダー登録を行うこととなる。ヴァネッサ室長が言っていた通り、この方法だと帝国のストライダーとして手早く登録を済ませることができるのだろう。


 そこそこ待たされたが、男性が二階から下りてくる。そして俺に紺色に輝くカードを渡してきた。そこにはしっかりと俺の情報が記載されている。


■レオン・ヴァルツァー

■ランク 〈上士ハイナイト

■所属 アイゼンブルク帝国帝都支部


 おお……! 幼少期に憧れていたストライダー、その登録証が我が手に……!


「話は聞いている。これからラブルローン王国で活動するんだろう?」


「ああ、その予定だけど……」


「腕は確かなんだろうが、ストライダーには各国で共通したルール……規約がある。これを破ればストライダー資格はく奪の上に、国によっては収容所に入ることにもなる。これが規約だ、しっかりと目を通しておいてくれ」


 渡された紙に視線を落とす。


 へぇ……ストライダーって荒くれ者の集まりというイメージが強かったけど、規約を見るとかなり規則で固められているとわかるな。


 規約や義務に関しては大きく5項目。【基本倫理・治安維持】、【依頼に関する規約】、【魔獣・遺物に関する規約】、【ギルド内部の規律】、【行動規範・漂旅士ストライダーとしての義務】の項目があり、それぞれに細かな条項が記載されている。


 それに【重大違反と処罰】という項目には、規約に反した時のペナルティが記載されていた。


 どうやら思っていたよりもストライダーというのは、暴力的な人種ではないのかもしれない。ざっと目を通して内容をしっかりと記憶していく。


「ラブルローン王国はストライダー優遇政策がいろいろあるからな。〈上士ハイナイト〉の登録証を見せれば、宿代も割引がきくはずだぜ」


「へぇ……! そりゃありがたい」


上士ハイナイト〉……きっとストライダーの個人ランクだろう。


 さすがに登録したばかりの新人ストライダーだし、そこまで高いランクではないんだろうけど……。


「しかしウワサの人物とさっそく会えてうれしいぜ」


「へ……? ウワサの人物……?」


「おう。何せあんたは複数名の帝国貴族が連盟で推薦したストライダーだからな。そんな奴、なかなかいるもんじゃねぇ。推薦登録は推薦されたストライダーが何かしでかすと、推薦した者の顔に泥を塗ることになる。それにもかかわらず複数名の貴族があんたを推薦したんだ、こちらとしても安心してストライダー登録ができるってもんよ」


「………………はい?」


 え……なにそれ。初耳なんですけど。


 なに? 俺のストライダー登録に、複数名の貴族が連盟で推薦している……? ど、どういうこと……?


「ち……ちなみに推薦した貴族というのは……?」


「筆頭推薦人としてヴァネッサ・イーディウム。それとリシェル・ノワゼルにベリクリウス・オーダン、テオドール・ハーキムの計4名だ」


「っ!!!??」


 は……はいいぃぃぃぃぃぃ!? ヴァネッサ室長はわかるけど、なんでしれっとリシェルも名を連ねてんの!?


 あとベリクリウス・オーダンにテオドール・ハーキムって……現役の外務卿と軍務卿じゃねぇかあぁぁぁぁぁぁ!? 帝都でも指折りの大貴族だぞおぉぉぉ!?


 え、なにこれ。俺のストライダー登録になんで複数名の貴族が……それも大物が混じってんの……? ちょっとどころじゃなくて、めちゃくちゃ怖いんすけど。


 というかヴァネッサ室長、なぜに俺のストライダー登録にそんな大物貴族を……? これ、俺が何かしでかすと4人全員の顔に泥を塗るってこと……?


 リシェルはたぶんあれだ、俺が紋影官だと知っているし、きっとヴァネッサ室長によってオマケで名を貸すことになったのだろう。


「俺も長く受けつけをしているが、あんたほどのビッグな新人は初めてだ。ラブルローン王国での活躍も期待しているぜ!」


 いや、本当にやめてほしい……! 仙勁オーラレベルなんてせいぜい3程度なんです、俺はビッグな新人じゃありません……っ!

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