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普通の兵士になりたかったのに、皇帝直属の隠密として帝国の闇を任されすぎている  作者: ネコミコズッキーニ
4章 学院で軽く調査するだけの任務ですよね?

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タップダンサーの雷舞奏撃《ライブダンサー》

「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」


「は、はははは……! ついに、ついに〈アーク・ガルダ〉が起動しましたよぉ!」


「ぶぇぶぶぶぶっ、あべっしょぉぉぉぉい!」


 床はどんどん上へあがっていき、そしてとうとう地上へと到達する。日は完全に沈んでおり、学生や講師は講堂に集められているためか、周囲に人の気配はない。


 そして今は「あの長い階段を上らずに地上に戻れてよかった」……と、安心している場合ではなかった。


 なんと〈アーク・ガルダ〉が、なんのためらいもなく正面の建物……第四校舎に剣を振り下ろしたのだ。


「きゃああぁぁぁぁ!?」


〈アーク・ガルダ〉は何度も何度も剣を振り続け、校舎はどんどん崩壊していく。こ……これはガチでやばいのでは……!?


 倒壊する校舎の破片が近くに降り注ぐ。ここはあまりにも危険すぎる……!


 俺はアヴィエスたちに顔を向けて甲高い裏声で叫んだ。


「ここは危険だ! 全員学院の外へ避難しろ!」


「で……でも……!」


「はやく! アヴィエス、みんなを頼む!」


「は……はい! みなさん! 邪魔にならないようにここから離れましょう! 騒ぎを聞いて騎士たちも駆けつけてくるはずです! 彼らに事情を説明しなければいけません!」


「そ……そうですね!」


 幸いなことに〈アーク・ガルダ〉は目の前の校舎破壊に夢中になっていた。アヴィエスたちは破片が降り注ぐ中、この場から離れていく。


 とにかくあいつの止め方を確認しなければ……! 


 そう考え、〈アーク・ガルダ〉に詳しいであろうトラヴィンの姿を探す……が。


「い、いない!?」


 気づけばトラヴィンとザルカーの姿が見当たらなかった。屋外は音が反響しやすい地下とは異なるためか、くしゃみ音も聞こえない。


 あいつら……! このどさくさに紛れて逃げやがった……!


「く、くそ……! というかなんだよこの状況!? どう考えても紋影官シジル・シャドウ1人で対応できるレベルを超えてんだろ!?」


 こんな巨大兵器、どう立ち向かえっていうんだ!? 

〈アーク・ガルダ〉も第四校舎を半壊させたことに満足したのか、ゆっくりと身体の向きを変える。そしてその顔が足元にいる俺に向いた。


「げ……」


 直感でわかってしまう。〈アーク・ガルダ〉に目をつけられた……と。


 そしてその直感は正しかったのだと証明するように、〈アーク・ガルダ〉は俺に剣を振り下ろしてきた。


「ふおぉぉぉぉぉぉ!?」


夜影疾走ナイトラン〉を発動させて攻撃を回避する。〈アーク・ガルダ〉は俺に何か恨みでもあるかのように、執拗に剣を振るってきていた。


「だぁぁぁ! 校舎破壊に夢中になっていたくせに、なんだって俺だけを狙うんだよぉ!」


 むずかしいのが、うかつにここから逃げることができないという点だ。


 幸いなことに第四校舎の近辺……少し前まで幽霊騒動のあった場所だが、このあたりには他に建物がないのだ。


 下手に俺がここから離れると、きっと〈アーク・ガルダ〉は追いかけてくるだろう。そしたら他の建物も破壊されるかもしれないし、逃げ込んだ先にいる人たちも巻き込まれる。


 せっかくアヴィエスたちを逃したのに、他に〈アーク・ガルダ〉の攻撃に巻き込まれる人が増えては意味がないのだ。


「でもこのまま逃げているだけだとジリ貧だぞ……!」


 そもそも俺の異能〈夜影疾走ナイトラン〉は、高速移動を可能にするが移動したぶんの体力はしっかりと消耗するのだ。逃げ回ってばかりだと、そのうち俺の体力が尽きてしまう。


 かといって助けを求めに学院外へ出ることもできねぇ……! ど、どうすれば……!


「う、おおぉぉぉぉ!?」


 再び〈アーク・ガルダ〉の剣が迫ってくる。この鬼ごっこ、どう考えても先が見えているんだけど……!


 と、焦った瞬間だった。剣を振り下ろす〈アーク・ガルダ〉の真横から幾条もの雷光がほとばしる。それを受けて〈アーク・ガルダ〉はバランスを崩し、そのまま地面に倒れ込んだ。


「い、今の攻撃は……!」


「わりぃ、レオン! ずいぶんと待たせちまった!」


 校舎の影から足の長い人影が大ジャンプをして空中で華麗に回転し、そのまま俺の側に着地する。


 その人影は俺のようにフード付きローブを羽織ってはいなかったが、顔にはしっかりと黒仮面を装着していた。


「ルード先輩!」


「おう! いやぁ……俺としたことが。生徒たちが講堂に移動した静かなタイミングで、愛の告白したいというラブレターの誘いに乗っちまって……」


「…………はい?」


「気づけば個室に閉じ込められていてよぉ。おかげで遅くなったわ、ほんとすまんな!」


 この人……俺があちこち駆け回って探していた時に、そんな単純な罠に引っかかっていたのかよ……!


「ここに来る途中で兵士に化けた傭兵からいろいろ教えてもらったが……さすがにあんな巨人までは聞いてなかったな」


「あいつは〈アーク・ガルダ〉という名で、学院長の帝都崩壊計画に深く関係している古代のアーティファクトです」


「マジか!? さすがだなレオン! 俺が個室にいる間に、そこまで事態を把握していたとは……!」


 いや、俺もついさっき知ったばかりですよ!? つかまだぜんぜん事態を掴めていないんだけど!?


 そうこうしている間に〈アーク・ガルダ〉がゆっくりと立ち上がる。どうやらルード先輩の攻撃を受けても致命傷ではなかったようだ。


「チッ……! 今のが効かなかったとなると、もう少し溜めが必要か……! レオン、5分稼いでくれ!」


「ごっ!?」


「さっきのは1分バージョンだったんだよ! たぶん5分は溜めないと、あのデカブツを仕留められねぇ!」


「く……! わ、わかりました!」


 完全に立ちあがった〈アーク・ガルダ〉の気を引くために俺は前へと突っ込む。対してルード先輩は後方へと引いた。


 5分……! な、なんとかこの鬼ごっこに耐え抜きさえすれば……! 


 つかなんでこんなことになってんだよぉぉぉ!? 今回は戦闘もない、10日間限定の楽な任務のはずだったのにいぃぃ!





 レオンが前に出て〈アーク・ガルダ〉の気をしっかり引き付けているのを見て、ルードはその場でタップダンスを踊り出した。


「フウゥゥゥ! 今宵も魅せるぜ、俺の究極ダンシンッ!」


 伴奏が無いのはさみしいが、長い足を活かして華麗なステップを踏む。どこからどう見ても黒仮面の男がタップダンスをしているようにしか見えないだろう。


 実際その通りなのだが、ルードの異能は【雷舞奏撃ライブダンサー】。長く激しく踊れば踊るほど、振るった拳から強力な雷光を放つことができるのだ。


「まだまだ舞うぜぇぇぇ!」


 ルードは今回の騒動について、自分なりに反省していた。


 罠にかかったがばかりに、最も後輩の紋影官シジル・シャドウであるレオンに負担をかけてしまった。


 ルードも今回の任務は簡単なものだと思っていた。しかし蓋を開けてみれば学院長は帝都崩壊計画なんてものを画策しており、実際に巨大アーティファクトが暴れるという事態に陥っている。


 また生徒たちにも危険な目に遭わせてしまった。いくら事前情報がなかったとはいえ、紋影官シジル・シャドウとしてはお粗末な結果だろう……普通であれば。


 だがレオンはいち早く学院長の計画を察知し、皇女らの確保に動き出した。


 それに地面を見ればわかる、〈アーク・ガルダ〉が地面ごと地下から上がってきたというのが。そもそも〈アーク・ガルダ〉が座っていたであろう、どでかいイスも見えるし。


 きっとレオンは失点の大きな自分に活躍の場を与えるために、わざわざ〈アーク・ガルダ〉を地上へと引きずりだしたのだろう。


 後輩にここまで見せ場を整えてもらったのだ、先輩として最高のダンスと一撃をお見舞いしてやらねばなるまい。


「安心しな、レオン! プロのタップダンサーとして、外しちゃいけねぇ瞬間というのはちゃんと心得ているからよ……!」


 正面ではレオンが自分の異能を巧みに使いこなして〈アーク・ガルダ〉の気を引きつけ、その攻撃を避け続けている。


 おそらくそのまま逃げ続けていれば、いずれ〈アーク・ガルダ〉も動かなくなるだろう。


 あれほどの巨体だ、無尽蔵に動かせるエネルギーがあるとも思えない。しかしそれではルードは今回の任務で本当に何もしなかった紋影官シジル・シャドウになってしまう。


「よし……! せっかく後輩が作ってくれた見せ場だ、先輩としての役目は期待以上に果たさせてもらうぜ……! レオン、離れろぉ!」


 ルードの叫びを聞いてレオンは一瞬で遠く離れた場所へと移動する。〈アーク・ガルダ〉はそんなレオンを視線で追うように顔を横に向け……刹那ではあるが動きが止まった。


 それを確認してルードは溜めに溜めた力を拳に乗せて、その場で〈アーク・ガルダ〉に向かって振り抜く。


「おおおおおお! 【雷舞奏撃ライブダンサー】!」

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― 新着の感想 ―
んほおぉぉぉぉぉぉ!で締めるんじゃないよww
毎週二話の更新なので、待ち遠しく感じています。作者の方、どうぞ頑張ってください。
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