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普通の兵士になりたかったのに、皇帝直属の隠密として帝国の闇を任されすぎている  作者: ネコミコズッキーニ
4章 学院で軽く調査するだけの任務ですよね?

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学園地下 紋影官と黒曜聖徒

 いやもうここにたどりつくまでが本当に大変だった……!


 あれから俺はルード先輩を探して学院内を走り回っていたが、まったく見つけられなかった。講堂のほうで騒動が起こっているのは確認していたが、時間的に皇女捜索を優先していた。


 考えなくてはならないのは皇女だけではない。学院長の目的や学院内に潜り込んだ傭兵の規模、このことをどう外に伝えるか。アヴィエスは無事なのか。


 思考がまとまらない中で優先順位をつけなければならないのは、本当に大変なのだ。


 だが楽観的な見方をすれば、講堂の方はうまく逃げ延びた講師が学院外に救援を求めに行く可能性もある。


 それに異変を感じ取ったルード先輩が、すでに秘密裏に動いているかもしれない。


「とにかくノーヒントで大雑把に走り回ってもダメだ、皇女捜索はどこかに絞って取りかからないと……!」


 もう少しで日が完全に沈む。場合によっては皇女捜索を打ち切って学院外に出て、巡回騎士や兵士に助けを求めるという判断を下さねばならない。


 とはいえここまで大がかりに傭兵たちを動員しているのだ、簡単に人が外へ出ないように対策もしているだろうが……。


「ん……?」


 その異変に気付いたのは、それから少し時間が経ってからだった。第四校舎近辺の地面から大量の白いモヤが立ち上っているのだ。


「これは……例の幽霊騒動か!?」


 場所や特徴からして間違いないだろう。


 だがどうしてこれほど大量にモヤが現れる……!? これまでの幽霊騒動では、そんな報告はなかったはず。


 しかもモヤはどう見ても、第四校舎近辺の地下から吹き出てきている。というより、第四校舎の前にある広場が最も多くのモヤが出ている。


「地下に……何かあんのか……!?」


 もちろん俺はこのモヤを幽霊だとは思っていない。明らかにそういう類のものではないからだ。


 というよりここまで大量に吹き出ていると、おそらく龍気ドラグマだろうという予測がつく。


 この地下に龍気ドラグマの噴き出し口でもあんのか……? いや、そんな話は聞いたことがない。


 しかし学院長が騒動を起こしたこのタイミングで、突如として発生した大量のモヤ。今起こっている事件と無関係とも思えない。


「第四校舎を探るか……!」


 そう考え、校舎内に入ったときだった。なんと近くの扉から2人の兵士が出てきたのだ。


 その兵士は俺を見ると焦った顔で話しかけてくる。


「おい、ヤバいことになった!」


「んへっ!?」


 あ……もしかしてこいつらもリックと同じ傭兵? で、俺のことを仲間だと勘違いしている……!?


 たしかにこの時間にここらをうろついている兵士なんて、普通はいないだろう。というかこいつらもあらかじめ正規の巡回兵士たちに邪魔されないように、対策を打っていただろうし。


 この状況で自由に学院内を歩いているというのが、学院長に雇われた傭兵であるという証左なのかもしれない。


「地下で学院長とトラヴィンがやられた!」


「……へ?」


「グレーの髪をした女生徒が、一瞬で学院長たちを倒してしまったんだ……! とにかくこのままじゃヤバい、騎士たちが学院に押し寄せてくる前にずらかったほうがいい!」


「おい、もういいから早く逃げるぞ!」


「おう! そうだお前、ついでだし講堂の奴らにもこのことを伝えておいてくれ! じゃ!」


「あ、ちょ……!」


 逃げやがった……! 傭兵たちの出てきた扉の奥を覗き込むと、地下へ続く階段が見えた。


「地下から吹き出る龍気ドラグマ、それに学院長たちを倒したグレーの髪をした女生徒……」


 ……うん、アヴィエスかな? どうして地下にいるの?


 とにかくこの先に主犯の学院長や狙われていた皇女たちがいる可能性が高い。今は確認が先決。


 そう考え、階段を下りはじめる。同時にポシェットからフード付きローブを取り出して羽織り、〈蛇鎖の(サーペント)腕輪チェイン〉を両腕に装着する。そして懐から取り出した黒仮面を顔に装着した。


 この先で学院長を見つけても、“兵士としてのレオン”ではあまり圧を与えられず犯行を認めない可能性がある。


 だが紋影官シジル・シャドウ相手では、ただの兵士にはないプレッシャーを勝手に感じ取ってくれるだろう。……くれるよね?


 時間的にまだ十分に異能を発揮できないが……そんなことを言っている場合ではないのは明らかだ。


 そうして長い階段を下った先でようやく皇女たちを見つけたのだが……アヴィエスがなんかヤバそうな奴と対峙していた。


「そこまでだ……!」


 つかアヴィエスだけじゃない、他の生徒もいる!? なんで!? つかあのデカい騎士と剣はなんだよ!?


 どうして学院の地下にこんな広大な空間と巨人がいるんだ!? これどういう状況!? 学院長はここで何をたくらんでいたの!?


 謎が謎を呼びすぎる。ちなみにアヴィエスは声でバレる可能性があったので、今は意図して甲高い声を出していた。


 端から見れば黒仮面をつけた怪しい男が、やたら甲高い声で話しているように見えるだろう。


 これ、紋影官シジル・シャドウとしてのプレッシャーとか何もないよな……? つか男の甲高い声とかどこに需要があんだよ!


「ま、まさか……紋影官シジル・シャドウ……!?」


 1人の女子生徒が俺の姿を見て紋影官シジル・シャドウという単語を出す。


 昨今の紋影官シジル・シャドウさんは学生にまでその名と特徴が広まっているのか……。


 パッと見た感じ、紋影官シジル・シャドウという単語を知らなさそうなのはアヴィエスとアナスタシア皇女かな。2人は変な声を出す俺を見て首をかしげている。


 うん、恥ずかしい……。妹の前で甲高い声を出している兄という構図がものすごく恥ずかしいよ……。


 絶対に俺だとバレたくない。なんで俺、バニィちゃんにもらって余っている変声アメを持ってこなかったんだろ……。


「ば……バカな……!?」


 そんな恥ずかしい俺を見て驚愕の表情を見せてくれたのは、講師のトラヴィンだった。


 ガチでこいつも事件にかかわっていたのかよ……! ルード先輩は冗談めかして「あいつ女子生徒にモテてるからあやしくね?」とか言っていたのに……!


 つかルード先輩が怪しいと言っていた人物、その3分の2がここにそろってんじゃねぇかよ!


「なぜ紋影官シジル・シャドウがここに……!? い、いや……その足の長さ、ルーディンではないな!? まさか……紋影官シジル・シャドウは複数人送り込まれていたのか……!」


「…………っ!?」


 え……!? 今のトラヴィンの言葉……まさかルード先輩が紋影官シジル・シャドウだとバレてる!? なんで!?


 仮面をつけていてよかった。きっと俺は今、ものすごく驚いた表情をしているだろう。つか足の長さでルード先輩かどうかを見極めんな。


 ゆっくりと歩きながらトラヴィンと顔に入れ墨のある男へと近づいていく。


「ふふ……そうか、そういうことでしたか……!」


「なんや導士トラヴィン。何がわかったんや?」


紋影官シジル・シャドウの目的ですよ……! やはりあなた方ははじめからこの〈アーク・ガルダ〉をご存じだったのですね!」


 そう言うとトラヴィンは巨人を指さす。あの巨人……そんな名前なのか……。


「この最終局面で決定的な証拠をつかむまで、僕や学院長を泳がせていたということか……! たしかに皇女もいるこの場面を見られてしまえば、言い逃れのしようもないですからね!」


 いや知らねぇよ! 〈アーク・ガルダ〉なんてもん、今初めて知ったわ!


「ですが学院長が計画していた帝都崩壊計画も、そこのお嬢さんによって阻まれました。このことまではさすがにあなたの計算外……ですよね?」


 ものすっごく物騒な名前が聞こえた……! え、なに帝都崩壊計画って。字面のインパクトありすぎだろ。


 あと皇帝の実兄である学院長がなんでそんな計画を立てていたんだよ!? 情報が多すぎる! とりあえずアヴィエスと皇女が無事でよかった!


 あと奥に倒れている兵士とか全員アヴィエスがやっつけたのか……。


 もしかして俺、普段の実力ではすでにアヴィエスに追い抜かれている……? 昔から仙勁オーラのセンスも高いとは思っていたけど……。


「我々にとってもお嬢さんの存在は想定外でしたよ。ですが聖団はそうしたイレギュラーな事態でも対応できるように、あらかじめ聖徒ザルカーを派遣していたのです」


「聖団……」


「えぇ、そうです! あなた方、紋影官シジル・シャドウも我ら〈黒曜オブシディアン聖団サンクトゥス〉が姿を現し、確実に捕えられる機会を狙っていたのでしょう!? たしかにタイミングは完璧ですよ……! 学院長と我らを現行犯として同時に捕えられるのですから!」


 こ、こいつら……! よりにもよってあの〈黒曜オブシディアン聖団サンクトゥス〉かよ……! しかも聖徒ってことは、相当な実力者じゃねぇか……!


黒曜オブシディアン聖団サンクトゥス〉は過去に他国で大きな事件も起こしており、各国で強く警戒されているカルト集団だ。


 世界規模で活動しており、禁制品の研究やらを積極的に行っているヤバさしかない組織である。


 聖団に所属する者たちはいくつかの階級があるのだが、中でも〈黒曜聖徒〉と呼ばれる者たちは超がつく実力者と言われている。


 具体的に言うと推定仙勁(オーラ)レベル7以上。バケモノである。


「さぁ聖徒ザルカー! 頼みましたよ! ここを乗り切れば、皇女の命を燃やして〈アーク・ガルダ〉を起動できます!」


「あいよ。そんなわけでいきなりやけど……変な声の兄さん。わるいけどここで死んでもらおか」


 やっべぇ……! モーリックのときとは違って、高レベルな上に紋影官シジル・シャドウとしてのプレッシャーも意味をなさない相手だ……!


 はっきり言って俺が一番苦手とするタイプである。しかも今はまだ〈夜影疾走ナイトラン〉も十全に発揮できない時間だし……!


 そんな俺の焦りなどまったく感じてはいないのだろうが、入れ墨の男は金属板のような剣の刀身を俺に向けてきた。

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足短い方が主人公ですね?w
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