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普通の兵士になりたかったのに、皇帝直属の隠密として帝国の闇を任されすぎている  作者: ネコミコズッキーニ
4章 学院で軽く調査するだけの任務ですよね?

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焦る紋影官 動き出す計画

 つかなんだこの状況は! ここには不正な資金調査と幽霊調査に来ただけだぞ!? なんで今から学院長によるテロ行為が起ころうとしてんの!?


 いや……この男、リックはトラヴィンもかかわっていると言っていた。彼が皇女を担当するとかなんとか。


 リックから得られた情報を点と点で結んでいくと。


「学院長とトラヴィンが組んで、なんかろくでもないことをしようとしている……!?」


 もうそうとしか思えない。なんだよあの学院長! 


 入学式で厳かにいい感じのことを話していたから、皇帝の兄ということもあって「はぇー……なんかすごそうな人だなぁ……」と感心していたのに!


 つか皇帝の実兄がテロなんて考えてんじぇねぇよ!? いや、実兄だからなのか……? そんなことよりもここからどうするかを考えねば……!


「く……! ルード先輩はどこだ!? 普段の居場所とかわかんねぇし……! あ、でも皇女以外の、講堂に集められた生徒はたぶん何もされないから、かえって安全か……?」


 絶対に安全とはいえないが、俺1人でできることには限りがある。仮に講堂に向かって傭兵どもと戦闘になれば、俺は高確率で負ける。


 まず時間的に今は夜ではなく、異能が使えないという点。そして傭兵どもの仙勁オーラレベルはおそらく俺よりも上が多い点。最後に戦闘が始まると、講堂にいる生徒が人質に取られる可能性があるという点だ。


「やはり講堂で傭兵どもをどうにかして生徒の安全確保……というのは現実的ではないな……! く……アヴィエス……! …………まぁアヴィエスならワンチャン、傭兵ども相手でも勝てるか?」


 なぜだろう、兄として危機の迫った妹の心配をすべきところのはずなのに……いざテロが起こっても、アヴィエスならいつも通り冷静に対処しそうな気がする……。


「リックの話だと、講堂の生徒に意味もなく危害を加える可能性は低そうだが……」


 逆に言えば意味があれば……俺が講堂を解放しようと暴れたりしたら、生徒にも危害が加えられる可能性がある。


 この場合、やはり俺がへたに講堂に行くとかえって生徒たちを危険な目に遭わせてしまうかもしれない。


 だめだ……焦りで思考がまとまらない! まずは冷静に、何からしていけばいいのかを考えるんだ……! 

 学院から出てだれかに救助を求め……いや、もうその時間すら惜しいか……!?


「やるべきことはルード先輩を見つけるのと、学院長とトラヴィン、それに皇女を見つけることだな」


 なぜ皇女を狙っているのか……それはそこらの生徒を人質に取るよりもよっぽど価値があるからだろう。


 時間もない、まずは今あげた人物を見つけることに集中だ……!





 その日もアヴィエスはいつも通りに授業を受けていた。次は講堂に集まり、学院長の話を聞く時間になっている。


 数学の授業を終えた女講師があらためてクラス全員に声をかけた。


「はぁい、次はみなさん講堂よ~」


「先生。講堂では何をするのでしょう?」


「それがわたしも話を聞いていないのよね~。講師も出席と言われているし、きっと学院長のありがたい言葉をいただけるんじゃないかしら~」


 入学してはやくも1週間。アヴィエスは今も新鮮な気持ちで、アストラ学院で授業を受けることができていた。


 学院長の話を聞けるのは入学式以来である。この1週間で自分たちがどう貴族として成長したのか、確認をしたいのかもしれない。


 と、そのタイミングで教室に古代史の講師であるトラヴィンがやってくる。


「忙しいところすみません、アナスタシア様はおられますか?」


「ん……?」


 アナスタシアの名が出たところで彼女はビクリと肩を震わせ、アヴィエスの手を握ってきた。そんなアナスタシアに代わってアヴィエスが声を上げる。


「何か御用でしょうか」


「ああ、そちらにおられましたか。実は学院長より、アナスタシア様とセレーネ様にぜひ見せておいてほしい文献があると頼まれてしまいまして……」


「アナスタシアとセレーネに見せたい文献……?」


 学院長がトラヴィン講師に頼むほどなのだ、よっぽど重要なものなのだろう。


 なぜ姉妹限定なのかが気になったが、今は状況的にもっと気になることがあった。


「わたしたちは今から講堂へ行き、学院長の話を聞きにいくところなのですが」


「えぇ、どうやらそのことと関係があるみたいなのです。すみません、僕も学院長には逆らえなくて……少しご足労いただけますか?」


 たしかにトラヴィン講師も学院に……ひいては学院長に雇われている身だ。


 学院トップの意向には逆らえないし、ここで同行を拒否するとトラヴィン講師の迷惑になるだけでなく、学院長の意向に反することにもなる。


 そう考え、アヴィエスはアナスタシアにトラヴィン講師のもとへ行くように促そうとした……が。


「(フルフルフルフル)」


 アナスタシアはアヴィエスの手を握ったまま首を横に振っていた。


 1週間の付き合いにもなればアヴィエスにもわかる、アナスタシアが極度の人見知りだということを。


 きっと友人のいない場所へ行くのに強い拒否感があるのだろう。姉のセレーネもいるという話だが、ここには姿を見せていない。


「トラヴィン先生。わたしも一緒に行ってもいいでしょうか」


「えぇと……うぅん、困ったなぁ……」


 トラヴィンは悩まし気な表情を浮かべているが、ここでリュシアとリスティナが口を開く。


「ならわたしも行くわ! 友達が困っているし!」


「フフ……そうですね。心配しなくても文献についてはわたくしたちは見ませんわ。途中までついていくだけです」


 どうやら2人もついてくる気らしい。そしてここでさらに声が上がる。


「待て……僕もついていこうじゃないか」


「あらフリックス。どういう風の吹き回しでしょう?」


「べつに……僕だけ学院長の話を聞きにいくのもフェアじゃないと思っただけだ」


「フリックス~。この間、石を投げたことを謝るタイミングを見計らっているって、素直に言いなさいよ!」


「は!? ち、ちが……! そんなわけないだろう!」


 どんどん騒がしくなっていくクラス内。それを見てトラヴィンはハァとため息を吐いた。


 そして目は真剣なまま、口だけ笑ってみせる。


「…………うん、まぁこの際です。別に構わないでしょう」


「トラヴィン先生……?」


「ではさっそくついてきてください。セレーネ様には校舎の外で待っていただいています」


 アヴィエスはアナスタシアと手をつないだまま立ち上がる。そしてリュシアとリスティナ、フリックスとともに教室を出てトラヴィンの後をついていく。


 そうこうしている間に他のクラスからも生徒たちが廊下に出てきた。みんな講堂を目指しているのだ。


「…………あ、アヴィエス……みんな、も。ごめん……なさい。わたしの、せいで……その。学院長の、お話が……」


「気にしなくてだいじょうぶですよ、アナスタシア。友人がわたしを頼ってくれたのです、これに応えずして友は名乗れません」


「これを本心で言っているのがアヴィエスのすごいところよね……」


「フフ……アナスタシア、気にしなくていいですよ。学院長のお話なんて、聞いていても退屈なだけですし」


「ちょっと!?」


 冗談を言い合いつつもアヴィエスたちは廊下を進んで校舎の外へと出る。するとそこには2人の兵士に守られたセレーネの姿があった。


「あら、アナスタシアに……アヴィエス! あなたたちも来ましたの?」


「はい」


 セレーネはアヴィエスとアナスタシアがしっかりと手をつないでいるのを見て、微笑みを浮かべる。そしてこの場にアヴィエスたちがいることにも納得がいった様子だった。


「ではみなさん。僕について来てくださいね」


「はい先生」


 トラヴィンはそのまま別の校舎……第四校舎へと移動する。そして廊下の先、奥まった場所にある扉をカギを使って開いた。


 扉の中は教室……ではなく、地下へ続く階段が見える。


「これは……地下?」 


「はい。照明はしっかりとついていますのでご安心を」


 たしかに地下へ続く階段には等間隔で龍気ドラグマによって機能する照明が設置されていた。


 先頭にトラヴィン、その後ろをセレーネやアヴィエスたち、最後尾を2人の兵士が固める形で階段を下りていく。


「けっこう長い階段ですね……」


「どこに続いているのでしょう?」


 いったいこの先に何があって、学院長とトラヴィンはアナスタシアとセレーネに何を見せようとしているのか。


 ゆっくりと歩きつつ、トラヴィンは口を開く。


「そうですね……階段はもう少し先まで続きますので、少しここの話をしましょうか。みなさんは古代文明期の遺跡についてはどこまでご存知でしょう?」

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