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普通の兵士になりたかったのに、皇帝直属の隠密として帝国の闇を任されすぎている  作者: ネコミコズッキーニ
5章、他国でフワッとウワサを流すだけの任務ですよね?

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行き当たりばったりで対応力の試される男

 次々と魔獣騒動の情報が入ってくる中、ギルドマスターであるトロメーラは今後について思考を深めていた。


 これまでの状況証拠からしても、城内で何かが起こっているのは間違いない。原因が宰相の謀反と古代の魔獣という点についても、確証はないが納得できる部分が大きい。


 少なくともノーマンドの話をすべてウソと断じるより、真実であると考えたほうが、多くの点と点が結びついていくのだ。


「城に事態の報告を!」


「わかりました! ですがおそらく兵士たちからすでに報告が入っているものかと!」


「ではストライダー騎士、合同で魔獣討伐にあたりたいと打診を!」


 今、考えるべき点は大きく3つ。王都に迫る魔獣の対処、城内にこもる宰相への対応、そして地下に封じられているという古代の魔獣だ。


 どれも時間的な余裕はなく、即断が求められている。ここであらためてトロメーラは〈無名の灯火(ネームレス・ライト)〉の1人、レオンに視線を向けた。


 貴族の連名による推薦でストライダー登録された男。先ほども魔獣襲来のタイミングを完璧に読んでいた。


 こうした読みの確実性こそ、大貴族が推薦するに至った理由に違いない。


 そしてもしノーマンドの話が真実だった場合、城に潜り込んで宰相の身柄を押さえるには今が絶好の機会だろう。


 凶悪な魔獣が出現し続ける原因が城の地下にあるというのなら、ギルドとしても放置することはできない。


「……ノーマンド様。そちらの戦力は?」


「傭兵のザルカーを筆頭に、他にも腕の立つ傭兵が5人。それとセリアリス王女の護衛を何人か連れてきてはいる」


「なるほど……」


 ギルドとしては介入する理由が半分と介入すべきでない理由が半分といったところだ。そもそも政治に深くかかわらないのがギルドの方針ではある。


 もっともラブルローン王国においてギルドはそれなりの権威を持っているので、まったくの無関係ではいられないのだが。


 しかし王都やそこに暮らす人々、そしてストライダー全体の利益を考えると、特に古代の魔獣は無視できない。


 本当に王都に危険な魔獣を呼び込んでいるのかは別として、そんな存在の封印が解けかかっているという事態が見過ごせないのだ。


 なぜならもし封印が解ければ、最初に被害を受けるのは間違いなく王都ラブルリアになるのだから。


「ジスレット! ストライダーたちに緊急依頼を! こちらから打って出て魔獣が王都に入り込むのを防いで!」


「はい! 騎士との連携は!?」


「ここに緊急対策本部を設置し、騎士との連携を図ります!」


 騎士側の指揮官とともにここで状況を逐一把握し、ストライダーや騎士といった戦力を適宜配置して魔獣の襲来に対処する。


 ここでトロメーラは〈無名の灯火〉の面々に視線を向けた。


「あなたたちにも緊急依頼を出させてもらいます」


「フ……魔獣の対処だね?」


「そうです。ただし対処してもらうのは城の地下に封じられているという古代の魔獣です」


「ほう……」


 宰相の捕縛に関してはギルドは関わらない。やるのはあくまでノーマンドたちだ。


 ただしギルドはノーマンドが城内に入り込むタイミングで同調し、ストライダーを送り込む。


 あくまで目的は地下に封じられているという古代の魔獣。どのような魔獣なのかはわからないが、〈無名の灯火〉であればさまざまな状況に対応できる可能性が高い。


 それだけ彼らの積み上げてきた実績は確かなものだ。


 王国には他にも優秀なストライダーは多いが、パーティとしての実力は〈無名の灯火〉が頭一つ抜けているだろう。


「古代の魔獣は危険度が不明、ですがもし封印が解けた場合……王都が無事で済む保証はどこにもありません。宰相や〈王立古代遺物研究院《レリクス・ラボ》〉から再封印の可否についての確認、可能であればそのまま再封印を。最低でも現状の維持をお願いします」


 どちらにせよこの機会を活かさねば、おそらくストライダーを城内に送り込む機会はもう巡ってこない。


 そして今はこの判断がギルドとして正しいのかを論じている時間もないのだ。


 すべての責任を負ったうえでの判断。トロメーラの覚悟が通じたのか、ジェルトは不敵な笑みを浮かべる。


「私としても、そして〈無名の灯火〉としても無視できない問題なのでね! いいだろう、その緊急依頼……受けようではないかっ! 皆も構わないだろうか?」


「いいよ~!」


「お城に潜入~!」


「……はい、行きましょう!」


「ま、今が絶好の機会だしな……やるか!」



■



 なんて勢いよく答えたのはいいが……! まだなんの問題も片付いてねぇ!


 俺とノーマンドたちはしばらくギルドで待機することとなる。その間に王国騎士団の指揮官がやってきて、本格的にストライダーとの共同作戦が始まることとなる。


 もうすぐで騎士団も王都の外へ出るので、俺たちはその隙に城内へと入り込むことになる。そしてどうやって中へ入るのかと言えば。


「この事態だ、ギルドとスムーズな連絡を行うためにも城門は常に開かれているはず。入口の兵士たちには私の名を告げ、同時にセリアリス王女の帰還を宣言する! 宰相のことだ、慌てて姿を現すだろう!」


 ノーマンドが貴族としての名と立場を使って堂々と正面から入ることになった。


 当初俺が考えていた案と部分的に似ているが、最大の違いは城の外ではなく中でセリアリス王女の帰還を宣言することだろう。


 というかその王女が(仮)という問題は何も片付いていないんだけど!?


 国際的に手配されている組織の超上級戦闘員である聖徒ザルカーさんは、しれっと仲間かのようにノーマンドに続く。


「俺は宰相と一緒に王国最強の騎士が出てきた時の備えやな。まぁきちっと押さえとくから安心しぃや」


 だからお前の狙いはなんだよ!? 実は副業で傭兵をやっている、なんてことはないよな!?


 続いて商人であるジャスリンが前に出てくる。


「わたしは以前、仕事で城内を何度かたずねていました。地下へ続く階段も案内できると思います」


 城内の案内ができるということで、ジャスリンも強く同行を希望してきていた。


 相変わらずミステリアスな雰囲気を漂わせているが、その視線はチラチラとセリアリス王女(仮)が身に着けている〈星霊珠《マナ・カリス》〉に向いている。


 商人として気になるのかな……すごく高価な宝石っぽいし。


「私たちは地下に封じられし古代の魔獣、その状態の確認を優先させてもらうよ」


「はい。〈王立古代遺物研究院〉の研究員たちも自分たちの知的好奇心を満たすため、魔獣の封印を解こうとしている可能性があります。見つけたら意識を奪ったほうがいいかもしれません」


 宰相の命令というだけでなく、自分たちの興味のために封印を解こうとしているかもしれないってことか……。


 まぁ帝国の技管局も変人が多いし、その可能性も否定できない……のか……?



 とにかく俺の目的を果たすには、城内に入って状況を確認する必要がある。あとの問題はまぁ……とりあえず突っ走りながら考えるしかねぇ!


 なんか俺の仕事、いつも行き当たりばったりじゃない!?

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