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普通の兵士になりたかったのに、皇帝直属の隠密として帝国の闇を任されすぎている  作者: ネコミコズッキーニ
5章、他国でフワッとウワサを流すだけの任務ですよね?

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ノーマンドとセリアリス(仮)とばっちりなタイミング

 セリアリス王女(仮)はこの国で今、どのような陰謀が走っているのかを明かしていく。


「城の地下には幽牢獄晶《クワイエット・コア》と呼ばれる、古代の魔獣を封じたクリスタルがあります。宰相ヘルカントはすでにその封印の半分を解いており、今も〈王立古代遺物研究院《レリクス・ラボ》〉を使って残りの封印を解こうと画策しているのです」


 ここで〈王立古代遺物研究院〉が関わってくんのかよ……! 


 もしかしなくてもこれ、このままだと任務の達成がむずかしいぞ……!?


 ジェルトがこれまで見たことのないくらいの無表情で口を開く。


「ふむ……どうして宰相はそのようなことを……?」


 今、どういう感情なんだろうね……。たぶん俺もみんなも同じ表情をしていると思うけど。


「わかりません。ですが古代の魔獣の封印が半分解かれた影響はすでに出ています。そう……遺跡から凶悪な魔獣が何体も出てくるという異常が」


「……俺たちもキリバ遺跡を調査したけど。あのときに地上に出た断崖熊《クリフ・ベア》とも関係が?」


 なんでそこで古代の魔獣が関わってくるのかはまったく見当もつかないが……と思っていると、セリアリス王女(真)ことセリスがあっと声を上げる。


「そういえばあの時、何かが呼んでいるような音というか、声みたいなのが聞こえた気がして……」


「ああ、そんなことを話していたな」


「はい。もしかして封じられた古代の魔獣が、断崖熊を遺跡の外に誘導していた……?」


 どういうわけかセリスは古代の魔獣のいななきが聞こえたと? 


 おお……仮説でしかないけど、やっぱりこっちのほうが本物の王女様っぽいぞ……!


 ノーマンドが大きくうなずきを見せる。


「宰相ヘルカントの目的は不明だが、古代の魔獣の封印を解こうとしているのは間違いない。私はこの国をあるべき姿に戻し、そしてセリアリス王女の手に取り返すと決めている。そしてそのためには城に入り込み、宰相の身柄を押さえる必要がある」


「強引な手段に出ると」


「そうせざるを得ないほどに切迫しているのだ。何より王国最強の騎士であるマクシミリアンまでもが宰相に味方している……これ以上奴の好きにさせるわけにはいかないのだ!」


 く……! 俺が噓偽りなく普通のストライダーであれば「まぁ国の事情なんで……がんばってくださいね」とか言って深くかかわらないのに……!


 セリスが関係しているのはもちろんだが、〈王立古代遺物研究院〉と接触する本来の任務を考えても、これは無視できない問題だ……!


 というか無視したらほぼ任務失敗じゃない? 


 おかしいな……当初の予定では適当に研究員に接触して、〈アーク・ガルダ〉の話をしたら終わる任務だったのに……。


 気づけば国の陰謀に足を突っ込もうとしてない?


「この国の正しき姿を取り戻すため、ギルドにも協力いただきたい!」


「……たしかにこのまま高難度魔獣があふれ出続けるのも問題ですね」


「そうだろう! そこで腕の立つストライダーを探していたのだが……どうだろう、きみたち。賊のフリをして王都で暴れてくれないだろうか」


「はい!?」


 おいおい……いきなり何を言い出すんだこの貴族野郎は。


 言っておくがこちとら毎日のように貴族と話し、なんなら皇女様ともおしゃべりした経験があるんだぜ? 相手が貴族だろうがビビったりはしねぇ!


 ……というか俺も一応領主の息子だったわ。


「王都で暴れれば、城からは騎士が出てくるはず。我らはその隙を突いて城内へと入り、宰相を捕える! マクシミリアンをおびき出せれば完璧だが、そこまでは求めていないとも」


「ちょっと待ってくれたまえよ。さすがに聞き捨てならないねぇ」


 ここで声を上げたのはジェルトだった。さっきまで無表情だったが、今は明らかに呆れと侮蔑の感情が表情に出ている。


「腕の立つストライダーを探していると言っていたが、まさか賊行為をさせるためなのかい?」


「そうだ。腕が立つ賊でなければ、城内にいる騎士たちの気を引き付けることができないだろう?」


「ではハッキリと言わせてもらう。その依頼はノーだ。我々はストライダー、偽りとはいえ賊の真似事をするほど精神は落ちぶれてなどいない」


 おお……めちゃくちゃはっきり言ってくれた……!


「そうよそうよ!」


「わたしたちツイン☆ルミナスが」


「賊になるなんてありえない!」


「ぜったいにお断りよ!」


 ルナとルミアもお怒りのようだ。


 ここまで反対されるとは思っていなかったのか、ノーマンドは本気で驚いた表情を見せていた。


「バカな……この国のためなのだぞ!? 宰相の野望を打ち砕く正義の行いなのだぞ!? それ以上に優先すべき矜持や事情があるというのか!?」


「ふむ……それ以上は我らストライダーの誇りを傷つける行為だ、口を慎みたまえ。そしてそういう依頼であれば、ストライダーではなくそれこそ金でなんでも請け負う傭兵に振るべきだ。頼む相手を間違えているのではないかね?」


 そう言うとジェルトはザルカーに視線を向ける。ひぃ……! たぶんそいつ、ジェルトより強いよ……!


 だが賊の真似事をする気がないのは俺も同様だ。というかそれでもし騎士と本格的に騒ぎを起こして捕まったりなんかしたら……したら……!


 俺を推薦した4名の貴族にどんな迷惑がかかるか想像もできねぇ! 


 というか友人であるリシェルまで巻き込まれる! あと外務卿と軍務卿からはガチで賠償金を求められそうでこわい!


 ギルドマスターたちも今のノーマンドの話は初めて聞いたのか、少し呆れている様子だった。


「ノーマンド様……腕の立つストライダーを求めたのは、もっと別の理由かと思っていました……」


「……ギルドマスターにまでそう言われるとなると、どうやら非常識なことを言ったのは私のほうだったみたいだな。すまない、謝罪をしよう」


 ほ……っ。どうやらノーマンドは物分かりのいい貴族のようだ。


 というかこれまで物分かりのわるい貴族って会ったことないんだけど。


 だがこれはラブルローン王国において、ストライダーがそれだけ力を持っているという証明でもある。貴族であってもギルドマスターの意向は無視できないのだろう。


 もしかして帝国がストライダーを優遇しないのは、こうした事態……民間団体が下手に影響力を持つのを避けたいという狙いもあるのかな。


「だが腕の立つストライダーは何人いても困らない。我々の身辺警護に雇いたいと言った場合はどうなる?」


「その場合はギルドへの正式な依頼として受け付けます。身辺警護の最中に騎士と衝突した場合の対処については契約内容にてよく話し合う必要がありますが……少なくともギルドが仕事を請け負った以上、最終的な責任を負うのは我々になります」


 暗に「身辺警護だからとなんでもやるわけではない」と伝えているな。


 というかこのぶんだとノーマンドの身辺警護という名目で、城の中に押しかける可能性があるのか……?


「そうか……ではあたらめてそこも話し合うとして、問題はどう王都の騎士たちの目を外に向けさせ、城へと入り込むかだな……」


 なるほど……要するに王都の戦力をどうにか外へ吐き出させたいわけか。できるだけ宰相の近辺を手薄にして、その隙を狙いたいと。


 それだけでいいのなら、他にやりようはいくらでもある。


 同時多発的に王都のあちこちで煙を焚いてもいいし、あるいは正面から「王女様がお帰りになられたぞ!」と騒いでもいい。


 宰相が王女を確保したいと考えているのなら、騎士を送り込んでくるはず。うん……我ながらわるくないアイデアだな。


 なんにせよアプローチ方法を変えないと〈王立古代遺物研究院〉と接触できないみたいだし、ノーマンドとセリアリス王女(仮)を活用するのはわるくない手だ。


 もし宰相が王女帰還騒動を重要視して手ごわい騎士を差し向けてきたとしても、彼らが狙うのはセリアリス王女(仮)であってセリスじゃないし。


「そういうことならもっと簡単な方法がある」


「ほう? どのような方法かな?」


 ノーマンドが前のめりで期待するような目を向けてくる……! そ、そんなに期待はしないでほしい……!


「落ち着けよ、それにタイミングもいい」


「タイミングだって……?」


 お前らが来たこのタイミングだよ! 


 俺も滞っていた仕事を前に進められそうで本当にいい時期に王都に来てくれたもんだぜ……!


「ああ、確実に騎士たち……いや、宰相の目も引き付けられる方法がある。タイミングもバッチリだ」


「聞かせてくれ。その方法とは?」


「なぁに、単純なものさ。すぐに理解できる。それは……」


 その時、扉に強いノックが鳴る。そしてギルドマスターの返事を聞かずに扉が開いた。


「今は来客中ですよ」


「すみません! ですが緊急事態です……! 断崖熊《クリフ・ベア》に紅殻魔蠍《クリムゾンスコルピオ》、黒角王《ダークホーン》らが群れを成して王都に向かってきています! 中には変異種の個体も!」


「な……なんですって!?」


 え……ヤバくない!? 遺跡から出てきた魔獣が、城の地下にいるとかいう古代の魔獣に呼ばれてきたのだろうか。


 とにかくこれはまずい。ストライダーの力も求められる事態だろう……と思っていると、ノーマンドが俺に驚愕の視線を向けてきていた。


「ま、まさか……きみのいう方法とは、これのことかね……!」


「……へ?」


「タイミングは完璧、かつすぐに理解できる単純な方法……! き、きみはこのタイミングで遺跡から出てきた魔獣が王都に向かってくると読んでいたというのかい!?」


 ちげぇよ!

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