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屍の黒騎士

 時折スケルトンと戦闘になるものの、交代で戦闘をこなしながらダンジョン内を進む。

 カルレランに関しては、五階層目までの地図があるため迷うことはないが、俺たちの探しているスケルトン・ナイトはダンジョン内を自由に徘徊しているため、最短で階層を進めば良いというわけではなく、しらみ潰しに探索をする必要がある。


 今は三階層目まで来ているが、未だにスケルトン・ナイトの姿は見られなかった。


「صباح الخير.!」

 ジャックさんに両断された最後の黒いスケルトン・ソルジャーが、呻き声をあげながら倒れる。

 二層からは出てくる魔物の種類も増え、攻撃性の高い黒色のスカルビーストや黒色のスケルトン・ソルジャー等の黒色変異種──所謂B型種の魔物が多数出てくるようになっていた。


「この辺りで、お昼を兼ねて一回休憩を挟みましょうか」

 次の階層へ続く鳥居が見えたところでそう伝える。

 四階層からは、一部のスケルトンが魔法や固有の能力を使うようになるため、四階層目へと続く門が見えたところで、一度休憩をとることにした。


「まだ撃ち足りないです……」

 休憩にはいるなり、オリビアが愚痴気味にそう漏らす。


「あんまり、拗ねるなよ。後でいくらでも撃てるんだから」

 オリビアが、ただ闇雲に戦闘を求めているわけではないことはわかっている。


 彼女の場合は少し事情が複雑で、数年前に()()()()になった父親と再会するために、世界中に轟くだけの功績をあげようとしている。

 そのために、少しでも結果を残したいのだろう。


 ──俺にオリビアの事情を話してくれたニコの話が正しければ、どれだけ結果を残そうと、彼女が父親と再会することはないわけだが。


「ルシェフさん、はい」

「ありがとう」

 せっせとバッグから昼食を取り出していたレオナから、俺の分の昼食を受けとる。


「サンクレイア」

 食前の感謝を済ませてからカゴを開けると、中にはサンドイッチが入っていた。

 全体的に肉の多い気がしなくはないが、中には揚げた白身魚(ホワイトアルニ)を挟んだものや、卵の使われたものもあった。


「どう?」

 レオナが不安そうにそう尋ねてくる。


「美味しいよ」

「良かった」

 俺がそう言って笑みを作ると、レオナの表情も柔らかくなる。


 昼食後は第一層に来たときと同じ隊列で門を潜り、第四層へと移動した。


「──っ!オリビア、ノックバック!」

 四層に移動するなり慌ててそう叫び、全員に【ロニゲスメイシュ】をかける。


 今、俺たちの目の前には、俺たちの目的であった体長三メートルほどのスケルトン・ナイトと、その取り巻きである数体のスケルトン・ソルジャーがいた。

 唯一救いがあるとすれば、スケルトン・ソルジャーが()()数体であった事くらいか。


「はい!」

 オリビアは、すぐに【旋律の光球体】を放ち、続けざまに放った【アトラフェニクス】をスケルトン・ナイトに直撃させ、追い撃ちとばかりに続け様に放った光球体も誘爆させる。


「こっちだ、木偶の坊!」

「الكاري لذيذ!」

 俺は俺でスケルトン・ナイトの元に駆け寄り、目の前で跳脚、すれ違い様に【四次元空間】から取り出した【アクワグラシェリア】で肩を斬りつけにかかる。

 それはスケルトン・ナイトの大盾で防がれたものの、手筈通りにスケルトン・ナイトの注意を引きつける。


 スケルトン・ナイトと戦うときは集団戦になるのが目に見えていたため、ジャックさんには竜化をしてもらい、レオナとオリビアと共にスケルトンたちの相手を頼み、アメリアに取り巻きのソルジャーたちを抑えてもらいながら、俺が一人でスケルトン・ナイトを相手取るという計画で話がついていた。


 スケルトン・ナイトの視線は俺を追い、注意を引き付けることには成功したようだったが、奴はしっかりと周囲にスケルトン・ソルジャーやスカルビーストを造ってから俺を追いかけてくる。

 そのスケルトン・ナイトを追随する形でアメリアもついてきた。


「っらぁ!」

 スケルトン・ナイトを取り巻きから十分に離したところで、反転してスケルトン・ナイトに斬り込むが、その一撃はスケルトン・ナイトの持つ大盾で防がれてしまう。


 守りも固そうだったので、【アクワグラシェリア】に魔力を多分に流し、魔力を受けた青水晶(刀身)の起こす魔力振動で大盾を抉りにかかることにする。

 スケルトン・ナイトの大盾からは金切り声のような金属音が鳴り響き、火花が散っていた。


 スケルトン・ナイトも自身の持つ巨剣を振り下ろしてくるが、危なげなくそれを避ける。

 思ったよりも足は速くないようで助かった。【ロニギスメイシュ】がかかっている間は回避も問題なさそうだ。


 その間、アメリアはスケルトン・ナイトの周囲に残る取り巻きを掃討しにかかっていた。


 俺がヒットアンドアウェイを繰り返しながら【アクワグラシェリア】でスケルトン・ナイトの大盾を三度抉りかかって離れた瞬間、スケルトン・ナイトの目が赤く光り、次の瞬間には奴の目から熱光線が放たれた。


「──っ!」

 何とか避けることが出来たものの、この熱光線には気をつけた方が良さそうだな……。


 ……取り敢えず、三人で良いだろうか?

 熱光線を警戒し、今度は的を絞らせないようにフェイントなども絡め、常に動き回りながら近距離で立ち回る。


 あまりスケルトン・ナイトから注意を逸らすことは出来ないので漠然としかわかっていないが、今のところは周囲の魔物をしっかりと抑えてくれているようだ。

 ニコがナイフの投擲で詠唱に入った術師(スケルトン)を仕留めているのがかなり大きいか。隙を見てそれとなく魔石を回収しているようにも見えるが。


「شكرا لك!」

 スケルトン・ナイトは、三人に増えた俺を見て少したじろぎながらも、巨剣を振り回してくる。

 行動自体は遅いものの、常に周囲からはスケルトン系統の魔物が沸き上がってくるため、あまりモタモタもしていられないな。


 【アクワグラシェリア】の刃が大盾を半ばまで削ったところで、ガキッ!と何か硬いもの同士が当たったような金属音が響く。念のためにすぐにその場を離れて盾を見ると、削られた大盾の内部から、何らかの鉱石が見えた。

 ──もしかして、真金剛石か?


 だとしたら、不味いな……。【アクワグラシェリア】では、あの鉱石を切断することは難しいだろう。

 真金剛石は、装飾品にあしらわれることよりも、その固さを活かして武具や工具に使われることの方が多い。供給量が少ないこともあり、普及しているとは言い難いが。


 強化魔法を使えば何とか壊せなくもないが、それを使うと【ロニゲスメイシュ】を解いた状態で戦わなくてはならなくなるため、多少の危険も伴う。


 俺もオリビア同様に索敵魔法を使っているため、遠方からスケルトン・ソルジャーなどの群れの気配も近づいてきていることもわかっている。

 ──あまり迷っている暇はなさそうだ。


 一度自身に掛けた【ロニゲスメイシュ】を解き、【リズスワデ・スマアベル】を掛ける。それと同時に、赤い(オーラ)が俺を包んだ。


「っと!」

 頭上から迫る巨剣をギリギリで避け、大盾に向けて力任せに【アクワグラシェリア】を振り下ろす。勿論、それだけで盾の破壊は出来ないので、しっかりと魔力振動を起こして大盾にダメージを蓄積させていく。


 あれから、スケルトン・ナイトの攻撃を紙一重で避けながら何度か斬り込み、大盾を破壊する目処はたったものの、スケルトン・ナイトが生み出す魔物の処理が段々と追い付かなくなってきた。

 そのため、最大人数である四人にまで増やした俺の内三人を魔物の処理に回すことになり、スケルトン・ナイトとは完全にソロで戦うことになってしまっていた。


 如何せん、手数が足らないのが痛いな……。状況によっては、撤退まであるかもしれない。

 幸いにも怪我人も出ていないし、今以上の危険が伴うなら帰れる内に帰った方が良いだろうか。スケルトン・ナイトの高額な報酬も、命には代えられないからな。


 そう思った矢先、俺の索敵に高速で移動する巨体の反応が一つ表れる。よくよく確認すると、フレディが来てくれたようだった。


「よぅ、苦戦してそうだな」

「あぁ。手数が足りなくてな。──それよりフレディ、用事はもう済んだのか?」

「今その話は良いだろうが!」

「お、おう」

 すごい剣幕でそう吠えるフレディに少し戸惑いながらも、彼に【リズスワデ・スマアベル】を掛ける。


「フレディ、あの大盾は真金剛石で出来ている。少し硬いからそのつもりでな」

「そうかよ!」

 フレディはそう言いながら、自身の斧でスケルトン・ナイトの振り下ろした巨剣の軌道を変え、俺はその隙にスケルトン・ナイトの眼前へと迫り、大盾を抉りにかかる。


 スケルトン・ナイトが熱光線で俺の無理矢理離しにかかるが、今度は入れ替わりにフレディが奴に肉薄した。


「くそっ、硬ぇな!」

 スケルトン・ナイトの大盾に渾身の一撃を叩き込んだフレディがキレ気味にそう漏らす。


 フレディが離れたところで今度は俺がスケルトン・ナイトに斬り込み、交互にスケルトン・ナイトの攻撃をいなしながら大盾を抉っていく。

 無駄なことを考えている暇などないのだが、ふと『俺たちが組めば、何も恐れるものなんてない』というフレディが昔言っていた言葉を思い出していた。


 そしてとうとう大盾を両断し、無防備になったスケルトン・ナイトに向けて放たれた俺の一撃は、突如地面に描かれた魔方陣から出てきたもう一本の巨剣で受け止められる。

 思わぬ不意打ちに、少しバランスを崩しつつも何とか着地したが、俺の頭上からは巨剣が迫ってきていた。

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