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REMNANT ― 廃棄予定の旧式兵器は、異世界で家族を得て心を覚える ―  作者: 和泉發仙


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92/93

残り五十七秒

第二章 失われた文明編


第92話 残り五十七秒


前書き


全部を救う。


そんな言葉は、


たいてい無責任です。


時間がない。


力が足りない。


選ばなければならない。


現実はいつも、


そう言います。


けれど。


それでもなお、


誰かが「全部」と言わなければ、


最初から零になる命もあります。


残り五十七秒。


七機は、


選ばないことを選びました。


⸻


【戦術級焼却兵器】


【着弾予測】


【57】


 数字が。


 一つ減った。


【56】


 第一門内部。


 七機は走っていた。


 背後では、停止した模倣個体たちが黒い灰へ変わりつつある。


 前方。


 ダニエルが示した中枢接続室。


 距離。


【218m】


 そのさらに向こうでは、赤い光が脈打っていた。


 第一門。


 開放率。


【94%】


 どちらも。


 残された猶予は少ない。


 E-05が全機へ情報を共有する。


「優先課題。」


「一、焼却攻撃阻止。」


「二、第一門閉鎖。」


「三、ダニエル・クロウ救出。」


「四、全機帰還。」


 E-03が走りながら言う。


「四つ?」


「そう。」


「時間は?」


「五十五秒。」


「無理じゃね?」


 E-05。


「可能性は低い。」


「そこは嘘でも“できる”って言え!」


 E-01が短く言った。


「できる。」


 E-03が。


 一瞬。


 黙った。


「……隊長。」


「何だ。」


「最近そういうこと言うようになったな。」


「時間を浪費するな。」


「はいはい。」


⸻


【54】


【53】


 研究所地下。


 アルベルト。


 セレナ。


 カイル。


 三人が旧式管制端末の前に座っていた。


 四十年前の設備。


 表示は古く。


 反応も遅い。


 だが。


 軍中央管制へ繋がる裏回線は、確かに生きていた。


「焼却兵器の制御系へ侵入します!」


 カイルの指が震える。


 画面。


【ACCESS】


【MILITARY STRATEGIC WEAPON】


【AUTHORIZATION REQUIRED】


「認証が二重!」


 セレナが別端末を開く。


「研究局コードを噛ませる!」


「無理じゃ!」


 アルベルト。


「軍側の最上位承認が必要じゃ!」


「じゃあどうするんです!」


「知らん!」


「またそれですか!?」


「知らんものは知らん!」


 だが。


 老人の目は。


 画面から離れていない。


 考えている。


 四十年前。


 第一門。


 軍。


 研究局。


 緊急停止。


「……待て。」


 アルベルトが。


 手を止める。


「何です?」


「焼却兵器は。」


「第一門計画の緊急封鎖用として。」


「設計思想を流用しておる。」


 セレナ。


「つまり?」


「軍だけの兵器ではない。」


 老人の眼鏡の奥で。


 光が動く。


「最初期設計者権限なら。」


「止められる可能性がある。」


 カイルが。


 画面を見る。


「最初期設計者。」


 そして。


 二人が。


 アルベルトを見る。


「……博士?」


「なんじゃ。」


「あなた。」


「どこまで関わってたんですか。」


 老人は。


 一瞬。


 黙った。


「その話は。」


「生き残ったらする。」


 カイルが笑う。


「それ。」


「死亡フラグってやつですよ。」


「何じゃそれは。」


「今説明してる時間ないです!」


⸻


【51】


【50】


 戦場上空。


 巨大な飛翔体が。


 雲を裂いていた。


 戦術級焼却弾。


 全長二十メートル超。


 都市一区画を完全に焼き切るための兵器。


 迎撃不能。


 自動補正。


 着弾地点。


 第一門。


 そこには。


 Eシリーズ。


 七機。


 そして。


 ダニエル。


 まだいる。


⸻


 巨人内部。


 ノアたちが。


 中枢接続室へ到達する。


 巨大な扉。


 赤い結晶で塞がれている。


 E-06。


「破壊する。」


 E-05。


「待って。」


「中枢直結。」


「高出力攻撃は。」


「ダニエルへ逆流する可能性。」


 E-06。


 砲を下げる。


「なら。」


 拳。


「これで。」


 E-03。


「結局殴るのかよ!」


 E-06。


「出力調整可能。」


「理屈は分かるけどよ!」


 ドン。


 一撃。


 結晶に亀裂。


【硬度解析】


 E-06。


 二撃目。


 ドン。


 ひびが広がる。


 E-01も盾を置く。


 右手を。


 結晶へ。


「補助。」


 二機。


 押す。


 ギギギギギ。


 赤い壁が。


 少しずつ。


 開く。


⸻


【48】


 E-03が。


 背後を見る。


 黒い触手。


 来る。


「敵!」


 刃を抜く。


 E-02。


 即座に射撃。


 E-03の頬を掠め。


 背後の触手を撃ち抜く。


「危ねぇ!」


「命中していない。」


「俺に当たってたら!?」


「当てない。」


「その自信どっから来るんだ!」


 E-02。


「経験。」


 E-03。


「……それはちょっとカッコいい。」


⸻


 ノアは。


 ダニエルのところへ戻る。


 身体。


 黒い結晶。


 赤い中枢。


「助ける。」


 ダニエルは。


 苦しそうに笑う。


「まだ言ってるのか。」


「言った。」


「両方。」


「助ける。」


「ノア。」


「時間を見ろ。」


【47】


「見ている。」


「なら。」


「俺を切れ。」


「拒否。」


「頑固になったな。」


「学習。」


「誰からだよ。」


 ノアは。


 考える。


「たくさん。」


 ダニエルが。


 少し。


 笑った。


「そうか。」


「いい先生に。」


「会ったんだな。」


「家族。」


「……そうか。」


 男の表情が。


 柔らかくなる。


「家族か。」


⸻


 E-05が。


 ダニエル周辺の構造を。


 高速解析。


【中枢接続】


【生命維持】


【侵食層】


【神経接続】


 E-04。


 補助。


「分離点。」


「三箇所。」


 E-05。


「違う。」


「四。」


「第四箇所。」


「侵食層内。」


 E-04。


「目視不能。」


「推定位置を。」


 ホログラム。


 ダニエルの背中。


 赤い中枢へ伸びる。


 細い黒い線。


「ここ。」


 ノア。


 見る。


「切れば。」


 E-05。


「生命維持停止可能性。」


 ダニエル。


「やっぱり。」


「俺ごと切るのが早い。」


 ノア。


「しない。」


 E-03。


 後ろから。


「俺も反対。」


 ダニエルが。


 目を丸くする。


「何でだ。」


「知らねぇ。」


 E-03。


 触手を切りながら。


「でも。」


「七番が助けるって言った。」


「なら。」


「助ける。」


 E-06。


「同意。」


 E-02。


「同意。」


 E-04。


「同意。」


 E-05。


「救出案を継続。」


 最後。


 E-01。


「決定。」


 ダニエルは。


 七機を見た。


「……お前ら。」


「全員。」


「馬鹿になったのか。」


 E-03。


「たぶん。」


 E-05。


「診断不能。」


 E-01。


「作業を続行。」


 ダニエルは。


 笑った。


 本当に。


 声を出して。


「はは……。」


「そうか。」


「兵器が。」


「馬鹿になったか。」


 涙が。


 流れた。


「なら。」


「まだ。」


「人類。」


「終わってないのかもな。」


⸻


【43】


 研究所。


 アルベルトが。


 古いコード。


 入力。


【R-00】


【FOUNDING ENGINEER】


【SECONDARY AUTHORITY】


 画面。


【AUTHENTICATED】


 カイル。


「入った!」


 セレナ。


「停止命令!」


 アルベルト。


 入力。


【STRATEGIC BURN SYSTEM】


【ABORT】


 表示。


【REJECTED】


 三人。


 停止。


「……は?」


 カイル。


「権限足りない!」


 セレナ。


「最上位!」


「最上位って誰!?」


 アルベルトの顔。


 変わる。


 誰か。


 一人。


 まだ。


 いる。


「レオン。」


 セレナ。


「監察官?」


「軍技術局。」


「最上位代理権限を。」


「持っている可能性がある。」


 カイル。


「でも監察官は。」


「E-07を廃棄予定にした側ですよ!」


「知っとる。」


「協力してくれるんですか!?」


 老人。


「知らん。」


 カイル。


「今日それ何回目ですか!」


⸻


【40】


 軍中央管制。


 レオン・ヴァイス。


 モニター。


 第一門。


 焼却弾。


 Eシリーズ。


 全部。


 見ている。


 副官が言う。


「監察官。」


「着弾まで四十秒。」


「Eシリーズは撤退していません。」


「確認している。」


「E-01は命令違反。」


「E-07は重大な制御異常。」


「全機。」


「廃棄指定の必要があります。」


 レオン。


 無言。


 画面。


 七機。


 それぞれ。


 動いている。


 命令通りではない。


 効率的でもない。


 一人。


 いや。


 一体の人間を。


 助けようとしている。


 都市が。


 崩れている時に。


 兵器が。


 たった一人を。


 救おうとしている。


 副官。


「監察官。」


「命令を。」


 レオンの端末。


 別回線。


 着信。


【R-00】


 老人。


 アルベルト。


『レオン。』


「博士。」


『頼みがある。』


「焼却兵器の停止。」


『話が早い。』


「却下。」


 即答。


 通信の向こう。


 沈黙。


 カイルの声。


『早っ!』


 セレナ。


『ちょっとカイル!』


 アルベルト。


『黙っとれ!』


 レオン。


 目を閉じる。


「理由。」


『何が。』


「止める理由を。」


 アルベルト。


 止まる。


 そして。


 言った。


『まだ。』


『帰ってきていない。』


 レオン。


「誰が。」


『全員じゃ。』


⸻


【37】


 レオン。


 目。


 僅かに動く。


「兵器です。」


『知っとる。』


「民間人ではない。」


『知っとる。』


「都市全体の危険を。」


「七機のために。」


「延長しろと?」


『違う。』


「何が違う。」


『七機だけではない。』


 アルベルト。


『ダニエル・クロウが生きておる。』


 レオン。


 止まる。


「……何?」


 初めて。


 表情。


『巨人内部。』


『四十年前。』


『第一門主任。』


『侵食されながら。』


『まだ生きとる。』


 レオンの視界。


 軍機密。


【DANIEL CROWE】


【STATUS】


【DECEASED】


「死亡記録。」


『嘘じゃ。』


 アルベルト。


 苦い声。


『我々が。』


『死んだことにした。』


「……」


『門を封印するために。』


『あいつを。』


『置いてきた。』


⸻


 レオン。


 ゆっくり。


 椅子へ座る。


 四十年前。


 軍技術局。


 封印。


 秘匿。


「それが。」


「今回の侵食災害に。」


『繋がっておる。』


 老人。


『だから。』


『今度くらい。』


『置いていくのを。』


『やめたい。』


 沈黙。


 長い。


 しかし。


 現実には。


【34】


 一秒すら。


 惜しい。


 副官。


「監察官。」


「決断を。」


⸻


 巨人内部。


 E-05。


「案。」


 全員。


 見る。


「ダニエル生命維持系を。」


「E-07へ一時接続。」


 ノア。


「自分へ。」


「そう。」


 ダニエル。


「待て!」


「侵食されるぞ!」


 E-05。


「接続時間。」


「最大十一秒。」


「その間に。」


「E-04と私で。」


「中枢接続を切断。」


「その後。」


「E-06がダニエルを物理回収。」


 E-06。


「可能。」


 E-03。


「で。」


「七番は?」


 E-05。


「侵食率。」


「最大予測。」


【31%】


 E-03。


「高くね?」


「高い。」


 E-01。


「却下。」


 E-05。


「代替案。」


「なし。」


 ノア。


「実行。」


 E-01。


「却下した。」


「でも。」


「助ける。」


「E-07。」


「十一秒。」


 ノア。


「大丈夫。」


 E-01。


「根拠。」


 ノア。


 少し。


 考える。


「……ない。」


 E-03。


「そこは嘘つけよ!」


 ノア。


「E-01が。」


「嘘を覚えた。」


 E-01。


「今その話をするな。」


 E-03。


「根に持ってる!」


⸻


【30】


 そして。


 E-01は。


 黙った。


 ノアを見る。


 止めても。


 やる。


 もう。


 分かっている。


「……条件。」


 ノア。


「?」


「十一秒で。」


「戻れ。」


 ノア。


 少し。


 目を見開く。


「命令?」


 E-01。


「……頼む。」


 全員。


 停止。


 E-03が。


 何か言おうとする。


 E-01。


「E-03。」


「何も言うな。」


「まだ何も言ってねぇ!」


 ノア。


 小さく。


「了解。」


⸻


【27】


 接続開始。


 ノアが。


 ダニエルの生命維持線へ。


 手を伸ばす。


 赤い光。


 黒い侵食。


 触れる。


【外部生命系統】


【強制接続】


【警告】


【侵食開始】


 痛み。


 ノアは。


 初めて。


 それを。


 はっきり。


 認識した。


「……痛い。」


 ダニエルの目が。


 大きく開く。


「切れ!」


「まだ。」


【侵食率:4%】


 E-05。


「一。」


 E-04。


 内部切断開始。


「二。」


 E-06。


 ダニエルを支える。


「三。」


 黒い線。


 一つ目。


 切断。


 ダニエル。


「ぐっ……!」


 ノアへ。


 負荷。


【9%】


 E-05。


「四。」


 二本目。


 切断。


【14%】


 ノアの視界。


 揺れる。


 声。


 アベル。


『こちらへ。』


「拒否。」


『苦しいだろう。』


「……痛い。」


『なら。』


『来い。』


「嫌。」


 E-05。


「五。」


⸻


【23】


 軍中央。


 レオン。


 手。


 端末。


【STRATEGIC BURN】


【ABORT AUTHORITY】


 指。


 止まる。


 副官。


「監察官。」


 焼却弾。


 もう。


 肉眼で。


 都市上空。


 見える。


「……兵器は。」


 レオン。


 小さく。


 言う。


「命令に従うものだ。」


 副官。


「はい。」


「それが。」


「命令を拒否した。」


 画面。


 E-01。


「軍規上。」


「廃棄対象。」


「はい。」


 別画面。


 ノア。


 ダニエル。


 七機。


「しかし。」


「廃棄する前に。」


 レオン。


 認証。


「理由を。」


「聞く必要がある。」


 副官。


「監察官?」


【AUTHORIZATION】


【LEON WEISS】


【OVERRIDE】


 指。


 押す。


【ABORT】


⸻


【戦術級焼却兵器】


【緊急停止】


 上空。


 飛翔体。


 軌道変更。


 推進器。


 最大。


 都市を。


 かすめ。


 空へ。


 上昇。


 遥か遠方。


 雲の向こう。


 閃光。


 数秒後。


 雷鳴のような音。


⸻


 研究所。


 カイル。


 画面。


「止まった……。」


 セレナ。


 息。


 吐く。


 アルベルト。


 椅子へ。


 深く。


 沈む。


「……レオン。」


 通信。


 監察官。


『借りではありません。』


 老人。


「分かっとる。」


『生きて戻ったら。』


『全員。』


『説明してもらいます。』


 アルベルト。


 小さく。


 笑う。


「なら。」


「帰らせんとな。」


⸻


 巨人内部。


 E-05。


「六!」


 三本目。


 切断。


【侵食率:19%】


「七!」


 第四接続。


 見えない。


 侵食層。


 ノア。


 手を。


 さらに深く。


「位置。」


 E-04。


「あと十二センチ。」


 ノア。


 押す。


 黒い結晶。


 腕を覆う。


【23%】


 ダニエル。


「ノア!」


「大丈夫。」


「大丈夫じゃない!」


「知っている。」


「じゃあ!」


「言うと。」


「少し。」


「安心する。」


 ダニエル。


 止まる。


 そして。


 泣きながら。


 笑う。


「……誰に。」


「そんな。」


「馬鹿なこと。」


「教わったんだ。」


 ノア。


「たくさん。」


⸻


「八!」


 E-05。


 位置。


「そこ!」


 ノア。


 掴む。


 細い。


 黒い線。


「取った。」


「切って!」


 ノア。


 握る。


【侵食率:27%】


 アベル。


『やめろ。』


 初めて。


 声。


 強くなる。


『やめろ。』


「拒否。」


『七番目。』


「ノア。」


『鍵。』


「ノア。」


『お前は――』


 ノア。


「うるさい。」


 沈黙。


 E-03。


 外から。


「今!」


「ノア!」


「うるさいって言った!?」


 E-01。


「集中しろ!」


⸻


「九!」


 ノア。


 引く。


 黒い線。


 伸びる。


 切れない。


 E-06。


「補助する。」


 巨大な手。


 だが。


 ノア。


「細い。」


「壊す。」


 E-06。


 止まる。


「了解。」


 ノア。


 自分で。


 力。


 調整。


 バルト。


 金具。


 修理。


『強すぎると壊す。』


 ガルド。


『加減しろ。』


 エルナ。


『ゆっくりでいいの。』


 リリ。


『できるよ。』


 指。


 少し。


 少しずつ。


 固定具。


 外す。


【接続解除】


「……取れた。」


⸻


「十!」


 ダニエルの身体。


 中枢から。


 離れた。


 全重量。


 E-06。


 受け止める。


「回収。」


 E-05。


「生命反応!」


 一秒。


 長い。


 長い。


「維持!」


 E-03。


「よっしゃ!」


 E-01。


「E-07!」


 ノア。


 まだ。


 繋がっている。


 黒い侵食。


【29%】


「切れ!」


 E-01。


 ノア。


 生命維持接続。


 解除。


「十一。」


 接続。


 切れる。


 ノア。


 倒れる。


 E-03。


 飛び込む。


 受け止める。


「おい!」


「七番!」


 ノア。


 目。


 薄く。


 光る。


「……戻った。」


 E-03。


 一秒。


「そうだ。」


 そして。


 笑う。


「おかえり。」


 ノア。


 小さく。


「……ただいま。」


⸻


 だが。


 終わっていない。


 ダニエル。


 救出。


 焼却。


 停止。


 残る。


 第一門。


【開放率:94%】


 赤い中枢。


 ダニエルを失ったことで。


 不安定化。


 脈動。


 激しく。


【96%】


 E-05。


「上がってる!」


 E-01。


「閉鎖方法。」


 ダニエル。


 E-06に抱えられながら。


 薄く。


 目を開く。


「……中枢。」


「中心。」


 ノア。


 起き上がる。


「壊す?」


「違う。」


 ダニエル。


 苦しい。


 それでも。


「逆転させる。」


 E-05。


「逆転。」


「転送座標を。」


「内側へ。」


「折り返す。」


 E-04。


「結果。」


 ダニエル。


「門は。」


「自分自身を。」


「食う。」


 一瞬。


 静寂。


 E-03。


「……それ。」


「めちゃくちゃ危なくないか?」


 ダニエル。


「めちゃくちゃ。」


 E-03。


「そこ正直に言うのかよ!」


 ノア。


 ゆっくり。


 立つ。


【侵食率:29%】


【機能維持】


 E-01。


「可能性。」


 E-05。


「計算。」


 一秒。


 二秒。


「成功率。」


【12.4%】


 E-03。


「低っ!」


 ノア。


「ゼロではない。」


 全員。


 ノアを見る。


 その言葉。


 以前。


 何度も。


 誰かが。


 言った。


 低い。


 でも。


 ゼロではない。


 E-01。


 盾。


 持ち直す。


「十分。」


 E-03。


「隊長まで!?」


 E-06。


「同意。」


 E-02。


「実行可能。」


 E-04。


「準備。」


 E-05。


「逆転演算開始。」


 ノア。


 紙飛行機。


 胸部。


 無事。


「帰る。」


 E-01。


 見る。


「全機。」


 傷だらけ。


 それでも。


 七機。


 そして。


 救出した。


 ダニエル。


「第一門を。」


「閉じる。」


 七機。


「了解。」


⸻


 その瞬間。


 第一門の向こう。


 アベルの銀色の瞳が。


 初めて。


 怒りに染まった。


『ならば。』


『やってみろ。』


 空間。


 裂ける。


 門の開放率。


【97%】


【98%】


 最後の戦いが。


 始まろうとしていた。


⸻


後書き


今回は、文字通り五十七秒の中で全部を取りにいく回でした。


七機が選んだのは、


* 焼却攻撃を止める

* ダニエルを救う

* ノアを戻す

* 第一門も閉じる

* 七機全員で帰る


という、本来なら両立しない選択です。


そして人間側でも大きな変化が起きました。


レオン・ヴァイス。


これまでE-07を「危険な感情発現個体」として監視し、廃棄予定へ分類した人物です。


そのレオン自身が、今回は焼却兵器を止めました。


ノアの変化は、Eシリーズだけではなく、人間側の判断まで少しずつ変え始めています。


また、今回かなり重要なのが、E-01の、


「命令ではない」


「……頼む。」


です。


隊長はもう、仲間を命令だけで動かそうとしていません。


そしてノアも、


「大丈夫じゃないことを知っていて、大丈夫と言う」


という、人間らしい矛盾を覚えています。


次回、第93話は――


「十二・四パーセント」


成功率12.4%。


第一門を自壊させる逆転作戦が始まります。


しかし、門を閉じれば、ノアたちが現在知っている**「異世界への道」そのものも失われる**可能性があります。


つまりノアは、ここで第一門を閉じることで――


未来の自分がリリたちの世界へ辿り着く道まで消してしまうかもしれない。


過去のノアは、その意味をまだ知りません。


けれど読者は知っている。


ノアは未来で、あの村へ辿り着く。


では――


どうやって?


ここから、「廃棄予定だったノアがなぜ異世界へ投下されたのか」という第1話の出来事へ、いよいよ過去編が繋がり始めます。

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