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REMNANT ― 廃棄予定の旧式兵器は、異世界で家族を得て心を覚える ―  作者: 和泉發仙


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門へ

前書き


門とは、


向こう側へ行くためにあります。


ですが、


すべての門が、


希望へ続くとは限りません。


誰かが閉じた門には、


閉じなければならなかった理由があります。


それでも。


進まなければ、


守れない未来があるのなら。


七つの鋼は、


その門を越えていきます。


第二章 失われた文明編


第80話 門へ



 轟音が、都市全域を揺らしていた。


 E-01が黒き巨腕を押し止めている間に、残る六機は第一の門へ向かって疾走する。


 崩れた高架道路を飛び越え、炎上するビルの間を駆け抜ける。


 E-05の通信が全機へ流れる。


「門まで二百四十メートル。」


「侵食体反応、前方密集。」


「左右ビル内部にも潜伏反応あり。」


 E-03が笑う。


「歓迎が派手だな!」


「前だけ見ろ。」


 E-02の狙撃が屋上の侵食体を撃ち抜く。


 黒い破片が雨のように降り注ぐ。


 ノアは先頭近くを走りながら、第一の門だけを見つめていた。


 あの向こうに、答えがある。


 ユリア。


 紙飛行機。


 黄金の瞳。


 そして、自分が「七番目」である理由。


 すべてが、あの門へ繋がっている気がした。



 その時だった。


 都市全域の照明が、一斉に消える。


 昼間だというのに、世界が一瞬だけ夜になった。


「停電!?」


 観測車両でカイルが叫ぶ。


 しかし、次の瞬間。


 第一の門の外周に刻まれていた黒い紋様が、赤く発光し始めた。


 円環がゆっくりと回転する。


 重々しい音が、大地そのものから響いてくる。


 ゴォォォ……


 まるで巨大な歯車が、四十年ぶりに動き出したかのようだった。



 研究所中央司令室。


 エドガー・ローゼンクロイツ博士は、その映像を見て静かに目を閉じた。


「第二封印が……解かれたか。」


 セレナが息を呑む。


「博士、門は一つではないのですか?」


 老人はゆっくり首を振る。


「門は入口に過ぎん。」


「本当に恐ろしいのは、その先にある”回廊”じゃ。」


 室内が静まり返る。


「回廊……?」


「文明そのものを繋ぐ中枢。」


「我々は四十年前、その中へ踏み込んだ。」


 博士の声は重かった。


「そして……帰ってきた者は、ほとんどおらんかった。」



 一方、戦場。


 E-06が重砲を撃ち続けていた。


 爆炎が侵食体を吹き飛ばす。


 だが、その爆煙の中から新たな影が現れる。


「前方!」


 E-03が跳ぶ。


 高速で接近する敵を迎撃する。


 しかし剣が止まった。


「硬い!」


 目の前に立っていたのは、今までの侵食体とは違う個体だった。


 人型。


 全身を黒い結晶で覆い、肩には白い装甲の名残。


 胸部には数字が刻まれている。


 ──A-12。


 ノアの瞳が揺れた。


「機構体……?」


 敵は無言で剣を抜く。


 その動きは、侵食体というより訓練された兵士だった。


「識別。」


「迎撃対象。」


 その声には、ノア自身とよく似た電子音が混じっていた。



「新型か!」


 E-03が叫ぶ。


 A-12は一瞬で距離を詰める。


 剣と剣がぶつかり、火花が散る。


 ノアはその動きを分析していた。


【戦闘パターン照合】


【Eシリーズとの類似率 68%】


 兵器。


 しかも、自分たちと同じ系統。


「……違う。」


 ノアは呟く。


「侵食された。」


 その一言に、E-05が反応する。


「感染ではなく、取り込まれた個体……?」


 エドガー博士も司令室で目を見開いた。


「そうか……。」


「四十年前の実験体か。」



 A-12の後方から、さらに三体の同型機が現れる。


 B-09。


 C-04。


 D-18。


 どれも損傷が激しい。


 だが、戦闘能力は高い。


 E-02が低く言う。


「これは侵食体じゃない。」


「元は、俺たちと同じ兵器だ。」


 その事実が、Eシリーズ全員の胸に重くのしかかった。



 ノアは静かに剣を構える。


 目の前のA-12を見る。


 その瞳には、かつて自分が持っていたのと同じ、命令だけが残っていた。


「停止しろ。」


 ノアは呼びかける。


 返事はない。


「任務。」


 それだけを呟き、A-12は再び斬りかかってきた。


 ノアは受け止める。


 刃がぶつかる音が響く。


 その瞬間。


 ノアの胸部収納で、紙飛行機がかすかに光を放った。


 まるで、


「この人たちも、帰れなかったんだね。」


 そう語りかけるように。



 第一の門は、ゆっくりと開き始める。


 その奥には、光も闇もない空間が広がっていた。


 E-05が震える声で告げる。


「内部空間……観測不能。」


「距離が測れません。」


 E-03が苦笑する。


「つまり?」


「入ってみるまで分からない。」


 ノアは門の奥を見つめた。


 その先から、またあの声が聞こえる。


「七番目。」


「ようやく……ここまで来た。」


 ノアは一歩前へ踏み出す。


 もう迷いはなかった。


 この門を越えなければ、


 ユリアとの約束にも、


 自分の本当の過去にも、


 辿り着けないのだから。



後書き


今回は、


* 第一の門が本格的に開き始めたこと

* 「門」の先にはさらに巨大な空間「回廊」が存在すること

* 四十年前の実験で失われた旧型機構体 A-12、B-09、C-04、D-18 が敵として登場したこと

* ノアが彼らを「侵食された仲間」と認識し始めたこと


を描きました。


次回 第81話「回廊」 では、いよいよEシリーズが第一の門内部へ突入します。そこで彼らは、ゼルヴァニア文明が四十年前に隠した「最初の侵食」と、人類最大の過ちを目撃することになります。

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