四十年前の罪
第二章 失われた文明編
第76話 四十年前の罪
前書き
歴史には、
語られる歴史があります。
そして、
語られない歴史があります。
消されたのではありません。
語れば、
同じ過ちを繰り返す者が現れる。
だから人は、
真実を封印するのです。
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司令室には誰一人として声を発する者がいなかった。
大型スクリーンには、都市中央に出現した黒い環――
《第一の門》
が映し出されている。
静寂を破ったのは、エドガー・ローゼンクロイツ博士だった。
「……四十年前。」
「ゼルヴァニア=クロノスは、完成していなかった。」
誰も口を挟まない。
「我々は永遠を求めた。」
「資源も。」
「寿命も。」
「文明も。」
「すべてを越えようとした。」
アルベルトが静かに目を閉じる。
「……やはり。」
「あなたも計画に。」
「参加していた。」
博士はゆっくり頷いた。
「私は主任研究員だった。」
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スクリーンが切り替わる。
四十年前の映像。
まだ若かった博士。
巨大な地下施設。
数千人の研究者。
歓声。
拍手。
中央に設置された巨大な黒い環。
「これが……。」
セレナが息を呑む。
「第一の門。」
「完成直前の姿だ。」
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若き博士が演説していた。
「諸君。」
「今日、人類は限界を越える。」
拍手。
歓声。
「新たな世界への扉は開かれる。」
「エネルギー問題は終わる。」
「飢餓も。」
「戦争も。」
「死さえも。」
誰も疑わなかった。
未来しか見えていなかった。
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「……止める者はいなかったのですか。」
レオンが尋ねる。
博士は苦く笑う。
「いた。」
「何人もいた。」
「しかし。」
「夢は正論を飲み込む。」
誰も反対できなかった。
世界中が期待していた。
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映像が乱れる。
実験開始。
黒い環が起動する。
青白い閃光。
膨大なエネルギー。
歓声。
そして。
静寂。
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一人の研究員が叫ぶ。
「数値がおかしい!」
「閉じません!」
「停止!」
「停止しろ!!」
施設中に警報が鳴る。
『未知反応』
『空間歪曲』
『制御不能』
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黒い環の中心。
暗闇。
その暗闇の向こうで、
何かが、
こちらを見返していた。
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「…………。」
博士はそこで映像を止めた。
「その先は。」
「記録を残していない。」
「残せなかった。」
誰も理由を聞けなかった。
博士の手が震えていたからだ。
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一方。
戦場。
Eシリーズは再集結していた。
「目標。」
E-01が門を見る。
「第一の門。」
「放置不可。」
「突破する。」
誰も異論を唱えない。
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「E-02。」
「狙撃支援。」
「了解。」
高層ビル屋上へ。
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「E-03。」
「前衛。」
「任せろ!」
巨大剣を抜く。
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「E-04。」
「左翼制圧。」
「了解。」
高速移動を開始。
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「E-05。」
「解析。」
「門を調べる。」
無数のホログラムが展開される。
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「E-06。」
「後方援護。」
「了解。」
大型火器を展開。
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最後に。
E-01はノアを見る。
「E-07。」
「前へ出ろ。」
ノアが顔を上げる。
「……私?」
「お前だけが。」
「奴の声を聞いている。」
「答えを見つけろ。」
一瞬。
ノアは動かなかった。
初めてだった。
E-01が命令ではなく、
役目を託したのは。
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ノアは静かに頷く。
「了解。」
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七機が横一列に並ぶ。
崩壊する都市。
燃え続ける空。
その向こうに立つ黒い門。
E-01が右腕を上げる。
「Eシリーズ。」
「進撃開始。」
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七機が同時に駆け出した。
その姿はまるで、
滅びゆく文明が最後に送り出した七人の騎士だった。
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そして門の奥。
誰もいないはずの闇の中で、
一対の黄金色の瞳が、
静かに開かれた。
「……来るか。」
低く、穏やかな声。
敵意とも歓迎ともつかないその声は、
門の深淵へと溶けていった。
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後書き
今回は「四十年前の罪」の全貌ではなく、「人類が禁忌に手を伸ばえた」という事実だけを描きました。
また、戦場ではE-01からE-07まで全員に役割を与え、これまでの「命令されるノア」から、「答えを見つける使命を託されたノア」へと立場が変化しています。
そしてラストで登場した黄金の瞳の主は、黒き巨人とも侵食体とも異なる第三の存在です。その正体はまだ伏せられていますが、第二章後半の物語を大きく動かす重要人物となります。ここから物語は「怪物との戦い」ではなく、「文明が何を生み出してしまったのか」という真実へ踏み込んでいきます。




