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REMNANT ― 廃棄予定の旧式兵器は、異世界で家族を得て心を覚える ―  作者: 和泉發仙


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第二章 失われた文明編 第70話 黒き巨人



前書き


どれほど強い盾にも、


受け止められない衝撃があります。


どれほど鋭い剣にも、


届かない相手がいます。


その日、


七つの鋼鉄は初めて知りました。


「恐怖」という言葉を。





 黒煙の向こうで、大地が震えた。


 ドォン……


 ドォン……


 規則正しく響く振動。


 崩れた高層ビルの間から、ゆっくりと巨大な影が姿を現す。


 その全高は、およそ百メートル。


 漆黒の装甲のような外殻。


 全身を覆う侵食結晶。


 頭部には王冠にも見える巨大な角。


 その赤い単眼が、都市全体を見渡していた。


 避難していた市民の一人が震える声で呟く。


「……あれが、侵食体……?」


 誰も答えられなかった。



 E-01が即座に分析を開始する。


【目標確認】


【個体識別不能】


【危険度:測定不能】


【全機、警戒】


 七機が自然と円陣を組む。


 まるで互いを守るように。



 E-02が狙撃姿勢を取る。


「長距離砲、最大出力。」


 エネルギーが砲身へ収束する。


 轟音。


 青白い閃光が一直線に巨人へ突き刺さった。


 爆煙。


 ビル一棟分の爆発。


 しかし──


 煙が晴れる。


 巨人は一歩も動いていなかった。


 装甲には、小さな焦げ跡が残るだけ。


 観測車両のカイルが息を呑む。


「直撃……ですよね?」


 ベテラン通信士は黙ったままだった。



 E-03が叫ぶ。


「接近戦へ移行!」


 脚部スラスター全開。


 青い閃光となって巨人へ突撃する。


 肩。


 腕。


 首。


 高速で斬撃を叩き込む。


 火花が散る。


 しかし刃は外殻を浅く削るだけだった。


 巨人はゆっくり腕を振る。


 それだけだった。


 ゴォォッ!


 衝撃波が街路を薙ぎ払う。


 E-03は吹き飛ばされ、ビルへ激突した。


「E-03損傷!」


 E-04が叫ぶ。



 ノアは瓦礫の中へ駆け寄る。


「E-03。」


「応答。」


 瓦礫を押しのけると、E-03がゆっくり立ち上がる。


「……問題ない。」


 だが右腕は垂れ下がり、火花を散らしていた。



 その隙を狙うように、小型侵食体が四方から押し寄せる。


 E-05が前へ出る。


「電子妨害、開始。」


 青いリングが周囲へ広がる。


 侵食体の動きが一斉に鈍る。


 E-06が巨砲を構えた。


「一掃する。」


 轟音。


 道路ごと吹き飛ばす一撃。


 黒い群れが消し飛ぶ。



 しかし。


 倒したはずの侵食体が、黒い泥となって再び形を作り始める。


 カイルが震える声で叫ぶ。


「再生しています!」


 アルベルトの声が通信へ流れる。


『核があるはずじゃ!』


『どこかに中枢がある!』



 ノアは巨人を見る。


 赤い単眼。


 胸部。


 肩。


 どこにも核らしきものは見えない。


 その時だった。


 胸部収納の中で、紙飛行機が小さく揺れる。


 ユリアの言葉が脳内に蘇る。


『ちゃんと見れば、きっと分かるよ。』


 ノアは目を閉じる。


 戦うためではなく。


 観察するために。


 ゆっくりと巨人を見る。


 すると──


【解析開始】


【侵食流動を追跡】


【異常反応】


 黒い流れが、一瞬だけ巨人の左脚へ集まる。


「……左脚。」


 E-01が振り向く。


「理由。」


「……集中している。」



 E-01は一瞬だけ考えた。


 そして命令する。


「全機。」


「E-07を援護。」


 E-02が驚く。


「旧式を?」


「命令だ。」


 その一言で全員が動いた。



 E-04とE-05が妨害電波を展開。


 E-06が巨人の上半身へ集中砲火。


 E-03は壊れた右腕のまま囮となって駆ける。


 E-01は巨大な盾で正面から巨人の進路を塞ぐ。


 その間に──


 ノアが走る。


 誰よりも速く。


 誰よりも低く。


 瓦礫を蹴り、


 炎を越え、


 黒い脚へ飛び込んだ。



 巨人の左脚。


 外殻の隙間。


 そこだけ僅かに赤黒い光が脈打っている。


【侵食核候補】


【一致率:83%】


 ノアは拳を握る。


 次の瞬間。


 巨人の単眼がゆっくりとノアを見下ろした。


 そして初めて、その口が開く。


「──七番目。」


 機械とも、生物とも違う、不気味な声。


 戦場の誰もが動きを止める。


 侵食体が、


 ノアの番号を知っている。



 その瞬間、遠くの廃ビルの屋上で、銀髪の人物が静かに微笑んだ。


「始まったか。」


「運命が。」


 風が黒い外套を揺らす。


 その瞳は、まっすぐノアだけを見つめていた。





後書き



今回は、


* 超大型侵食体の圧倒的な強さ

* E-02〜E-06それぞれの役割と連携

* 「再生する侵食体」という新たな脅威

* ノアの観察力が戦況を変え始めたこと

* 超大型侵食体がノアを「七番目」と認識しているという大きな謎


を描きました。


次回、第71話 **「七番目の選択」**では、ノアが発見した弱点を突くため、Eシリーズ七機が命懸けの連携作戦を展開します。一方で、この戦いを境にE-07を見る仲間たちの意識にも少しずつ変化が生まれていきます。ここから物語はさらに大きく動き始めます。

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