↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
REMNANT ― 廃棄予定の旧式兵器は、異世界で家族を得て心を覚える ―  作者: 和泉發仙


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
69/88

第二章 失われた文明編 第69話 蒼穹の七機


前書き


英雄とは、


勝つ者ではありません。


誰かが生きるために、


立ち止まる者です。


その日、


七つの鋼鉄は、


空の青さを守るために歩き出しました。



 巨大な隔壁が開く。


 外から熱風が吹き込んだ。


 研究都市ゼルヴァニア=クロノス。


 その美しい街並みは、黒い侵食に少しずつ飲み込まれている。


 高層ビルの窓は割れ、無人車両が道路を塞ぎ、遠くでは火の手が上がっていた。



 Eシリーズ七機が都市へ進む。


 先頭を歩くのはE-01。


 重装甲型。


 巨大な盾を左腕に装備している。


「全機、隊形アルファ。」


 低く落ち着いた電子音声。


 他のEシリーズが即座に展開する。


 右側面にE-02。


 長距離射撃型。


 高架道路へ跳び上がり、狙撃位置を確保する。


 左側にはE-03。


 高速戦闘型。


 脚部スラスターを吹かし、一瞬で交差点まで駆け抜ける。


 中央後方にはE-04とE-05。


 支援と電子戦を担当する二機。


 通信網を維持し、味方の位置情報を共有していく。


 最後尾にはE-06。


 重火器運搬型。


 巨大な弾薬コンテナを背負い、歩く兵站基地として仲間を支える。


 そして——


 E-07。


 ノア。


 ユリアから託された紙飛行機を胸部収納にしまい、静かに歩いていた。



 観測車両の中では、若い観測士カイルが緊張した面持ちでモニターを見つめていた。


「これが……Eシリーズ。」


 隣に座るベテラン通信士が笑う。


「初めて見るか?」


「はい。」


「学校じゃ伝説みたいに教わりました。」


「人類最後の盾だって。」


 ベテランは少しだけ寂しそうに笑う。


「伝説なんてのはな。」


「終わったあとに付く名前だ。」



 前方三百メートル。


 侵食体の群れが姿を現した。


 黒い人影。


 四足歩行の獣。


 建物を這う巨大な影。


 その数、およそ四百。


 E-01が即座に命令を下す。


「迎撃開始。」



 E-02の長距離砲が火を吹く。


 轟音。


 一撃で十数体が吹き飛ぶ。


 同時にE-03が敵陣へ飛び込む。


 青い残光だけを残し、侵食体を切り裂いていく。



 しかし。


 敵は止まらない。


 倒れても。


 踏み越え。


 押し寄せる。



 E-04が叫ぶ。


「地下反応!」


 マンホールが吹き飛ぶ。


 黒い腕が地中から伸び、避難車両へ襲い掛かった。


「しまっ——!」


 ノアが走る。


 避難車両の前へ飛び込み、巨大な腕を両手で受け止めた。


 ギギギギ……


 装甲が軋む。


 足元のアスファルトが砕ける。



 車内では、小さな少女が泣いていた。


「お母さん……!」


 若い母親は震えながらノアを見つめる。


「助けて……!」


 その声を聞いた瞬間。


 ノアの内部で何かが反応した。


【優先対象】


【市民】


【保護】


 ユリアの声が記憶の中で重なる。


『誰かを助けることは、間違いじゃないよ。』



「E-07!」


 E-01が叫ぶ。


「持ち場へ戻れ!」


 命令。


 しかしノアは動かない。


 巨大な腕を押さえ続ける。


「避難完了まで。」


「保持する。」



 その時だった。


 E-06が前へ出た。


「援護。」


 巨大なキャノン砲を至近距離で発射。


 黒い腕が吹き飛ぶ。


 ノアはようやく車両から離れた。


 母親は窓を開け、涙を流しながら叫ぶ。


「ありがとう!」


 ノアは静かに頷くだけだった。



 その光景を、遠くのビル屋上から見つめる人物がいた。


 長い銀髪。


 黒い外套。


 年齢も性別も判別できない。


 侵食体たちは、その存在だけは避けるように動いている。


 静かに呟く。


「……七番目。」


 口元に微かな笑みが浮かぶ。


「やはり、お前だけが違う。」


 その人物は黒い霧へ溶けるように姿を消した。



 一方、研究所。


 セレナは戦闘映像を見つめながら呟く。


「また……。」


「また命令より人を選んだ。」


 アルベルトは静かに答える。


「違う。」


「人を選んだんじゃない。」


「ノアは、自分で考え始めたんじゃ。」



 その瞬間。


 警報が鳴り響く。


『超大型侵食反応、確認。』


『第一戦区後方。』


『脅威度……測定不能。』


 モニターに映し出されたのは、ビルほどの高さを持つ黒い巨体。


 侵食体の群れが、その存在へ道を開ける。


 まるで王を迎えるように。


 E-01が静かに武器を構えた。


「全機。」


「第二戦闘態勢。」


 ノアも前を見る。


 胸部収納の中で、紙飛行機が小さく揺れた。


 約束を守るために。


 ノアは一歩、前へ踏み出した。





後書き


今回は、Eシリーズ七機が初めて連携して戦う姿を描き、それぞれの役割を明確にしました。


さらに新たな謎として、侵食体からも一目置かれる銀髪の謎の人物を登場させています。彼はノアを「七番目」と呼び、特別な存在として認識しているようです。


次回、第70話 **「黒き巨人」**では、超大型侵食体との激突が始まります。この戦いでEシリーズは初めて「勝つため」ではなく、「生き延びるため」の戦いを強いられることになります。また、各機の能力や連携がさらに掘り下げられ、ノアが仲間たちからどう見られているのかも描かれていきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。