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REMNANT ― 廃棄予定の旧式兵器は、異世界で家族を得て心を覚える ―  作者: 和泉發仙


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第二章 失われた文明編 第71話 七番目の選択


前書き


仲間とは、


同じ命令を聞く者ではありません。


同じ未来を信じて、


背中を預けられる者です。


この日、


七つの鋼鉄は、


初めて”部隊”になりました。





 黒き巨人の赤い単眼が、ノアだけを見つめていた。


「──七番目。」


 低く響く声が戦場を震わせる。


 その一言で、すべての侵食体が動きを止めた。


 まるで王の命令を待つ兵士のように。


 観測車両のカイルが震える。


「な……なんで。」


「E-07の番号を……。」


 誰にも答えはなかった。



 巨人が左腕を振り上げる。


 空気が悲鳴を上げる。


 E-01は即座に判断した。


「全機、防御!」


 巨大な盾を地面へ突き立てる。


 E-04とE-05がエネルギーフィールドを展開。


 次の瞬間。


 轟音。


 街区一つが吹き飛ぶほどの衝撃が七機を襲った。


 ビルのガラスが一斉に砕け散る。


 道路がめくれ上がる。


 しかし。


 E-01は一歩も退かなかった。


 装甲はひび割れ、左膝が沈む。


 それでも盾は下ろさない。


「……まだ。」


「守れる。」



 その背中を見たノアの内部で、新たな記録が保存される。


【E-01】


【仲間】


【信頼】



 E-02が通信を開く。


「隊長!」


「火力が足りません!」


 E-03も続く。


「近付いても装甲を抜けない!」


 E-06が弾薬残量を確認する。


「残弾三二%。」


 E-05が静かに告げた。


「このままでは七分以内に防衛線崩壊。」


 戦況は絶望的だった。



 その時。


 ノアが一歩前へ出る。


「提案。」


 全機の視線が集まる。


「敵左脚。」


「侵食流動集中。」


「核存在確率。」


「八三%。」


 E-02が驚く。


「本当か?」


 E-04が即座に演算を開始する。


「……一致。」


「流動パターンを確認。」


 E-05も頷く。


「E-07の解析を支持。」



 短い沈黙。


 そして。


 E-01は静かに命令を下した。


「採用。」


 ノアは顔を上げる。


 隊長は続ける。


「E-07。」


「お前が突撃しろ。」



 一瞬、戦場が静まる。


 今まで命令違反ばかりと見られていた旧式機へ。


 隊長自らが作戦を託した。



 E-03が笑う。


「了解。」


「道は俺が開く。」


 E-02も砲身を構える。


「援護射撃開始。」


 E-06が巨大な弾薬箱を地面へ落とす。


「全部使え。」


 E-04。


「敵通信妨害。」


 E-05。


「侵食反応を十秒停止させる。」


 七機が自然に役割へ散っていく。



 研究所。


 セレナは映像を見ながら息を呑む。


「隊長が……。」


 アルベルトは静かに笑った。


「やっと認めたか。」


「旧式だからではない。」


「ノアだから任せたんじゃ。」



 戦場。


 E-03が一直線に突っ込む。


 高速移動。


 巨人の視線を引き付ける。


「こっちだ!」


 同時にE-02の狙撃。


 単眼付近へ連続射撃。


 巨人が腕で顔を庇う。



 「今!」


 E-01が盾を押し込み、巨人をわずかに傾かせた。


 E-06が全弾発射。


 爆炎が上半身を包む。


 E-04とE-05が侵食粒子の流れを乱す。


 黒い霧が一瞬だけ揺らぐ。



「E-07!」


「行け!」



 ノアが駆けた。


 スラスター全開。


 瓦礫を蹴る。


 炎を越える。


 倒壊したビルの壁面を走り、そのまま跳躍した。


 巨人の左脚。


 赤黒く脈打つ一点。


【侵食核】


【確率九七%】


 ノアは拳を握る。


 その瞬間だった。


 巨人の巨大な瞳が再びノアを捉える。


「……来るな。」


 低い声。


 それは警告にも、懇願にも聞こえた。


 ノアの動きが一瞬止まる。


「……?」


 侵食体が。


 話した。


 しかも。


 敵意だけではない感情を含んだ声で。


 戦場全体が凍り付く。



 そして次の瞬間。


 黒き巨人の胸部が大きく裂けた。


 内側から、さらに巨大な黒い光が溢れ出す。


 空が割れるような轟音。


 観測車両の警報が一斉に鳴り響く。


『超高密度侵食反応!』


『第二形態へ移行!』


『全機、直ちに離脱してください!』


 しかし。


 ノアだけは、その黒い光の中に何かを見た。


 まるで――


 誰かが、閉じ込められているような影を。





後書き


今回は、


* E-01が初めてノアの判断を正式に採用したこと

* Eシリーズ七機が完全な連携を見せたこと

* ノアが仲間として認められ始めたこと

* 黒き巨人が「来るな」と言葉を発したこと

* 巨人が単なる怪物ではなく、内部に何か秘密を抱えていること


を描きました。


次回、第72話 **「黒き王の中で」**では、超大型侵食体が第二形態へ移行します。そしてノアだけが見た「黒い光の中の人影」が、この物語全体の謎へとつながる大きな伏線になっていきます。

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