第48話 灰色の街道都市
前書き
旅をしていると、
時々、世界の“広さ”を思い知らされます。
大きな街。
知らない文化。
数えきれない人。
でも。
人が増えるほど、
見えにくくなる“壊れ方”もあるのかもしれません。
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街道を進み続けて五日。
景色はまた変わっていた。
山が遠ざかる。
代わりに広がる平原。
麦畑。
風車。
長く続く街道。
そして。
遠くに見えてきた巨大な壁。
「……でか」
ピップがぽかんと口を開ける。
灰色の石壁。
見張り塔。
煙。
何本もの旗。
街だった。
今まで見たどの村より大きい。
「街道都市グランヴェイル」
ベラスが言った。
「北方交易の中継地です」
マルタが笑う。
「飯がうまいぞ」
「そこ?」
「重要だ」
ディンも頷く。
「重要」
ピップが吹き出した。
ノアは街を見る。
人が多い。
匂いも音も。
全部混ざっている。
内部感覚が少しだけ忙しかった。
「……騒がしい」
「都会ってやつだよ」
ピップが笑う。
「疲れる?」
「少し」
「わかる」
⸻
街門前には長い列ができていた。
商隊。
旅人。
冒険者。
農民。
色んな人間が並んでいる。
門兵が荷物を確認していた。
「次!」
怒鳴り声。
鉄鎧の門兵がこちらを見る。
「旅人か?」
「うん」
「武器持ち込みは登録だ」
マルタが前へ出る。
「護衛証だ」
門兵が確認する。
「よし、通れ」
ノアを見た瞬間。
少しだけ空気が止まった。
「……お前」
ノアは静かに立っている。
灰色の目。
大柄な体。
普通じゃない雰囲気。
だが。
門兵は数秒見たあと、鼻を鳴らした。
「最近は変なの多いな」
それだけだった。
ピップが小声で呟く。
「都会、雑……」
⸻
門をくぐった瞬間。
音が爆発した。
「うわぁ……!!」
ピップが目を輝かせる。
市場。
露店。
荷馬車。
怒鳴り声。
笑い声。
鐘。
焼いた肉の匂い。
香辛料。
酒。
ありとあらゆるものが混ざっている。
ノアは少し止まった。
「多い」
「だから都会なんだって」
ピップが笑う。
だが。
ノアは少しだけ違和感を覚えていた。
人は多い。
活気もある。
なのに。
どこか疲れている。
笑っていても。
急いでいても。
余裕がない。
「……変」
「え?」
「みんな急いでる」
ベラスが少し苦笑した。
「この街は競争が激しいですからね」
「競争」
「商売、仕事、依頼。止まると食べていけない」
マルタが肩をすくめる。
「まあ街ってのはそんなもんだ」
ノアは人々を見る。
村とは違う。
助け合いだけじゃない。
押し合って生きている。
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しばらく進むと、広場が見えてきた。
中央には巨大な掲示板。
紙が大量に貼られている。
その前には武装した人々。
「……あれ何」
ノアが聞く。
ピップが先に反応した。
「冒険者ギルドだ!!」
目がキラキラしている。
マルタが笑った。
「お前、好きそうだな」
「だって冒険者だよ!?」
ベラスが説明する。
「依頼管理組織です。護衛、討伐、採集、遺跡探索など様々ですね」
ノアは掲示板を見る。
紙。
文字。
報酬。
依頼。
人が集まる理由。
「仕事」
「そう。外では“できること”が金になる」
ノアは少し考える。
「止めるのも?」
マルタが笑った。
「なるな」
「むしろ今は需要高い」
その時だった。
ギルド前がざわついた。
「おい、またかよ……」
「最近多すぎねぇか?」
数人の冒険者が話している。
ベラスが耳を向けた。
「何かあったんですか?」
冒険者の一人が顔をしかめる。
「北区画で行方不明」
空気が少し変わる。
「また?」
「ああ。しかも今度は三人」
ノアの目が細くなる。
「消えた?」
冒険者がノアを見る。
「あ? なんだ坊主」
「どうやって」
「知らねぇよ。夜の巡回が見つけた時には血だけ残ってた」
ピップの顔が曇る。
谷の村。
鐘。
消える人。
似ている。
ベラスも真面目な顔になっていた。
「……街の中まで来ているのか」
マルタが舌打ちする。
「笑えねぇな」
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その時。
人混みの向こうで騒ぎ。
「どけどけ!!」
怒鳴り声。
武装した男たちが通る。
黒い革鎧。
剣。
そして。
中央に一人の女。
長い黒髪。
細身。
だが異様な気配。
腰には細剣。
目つきは鋭い。
周囲の冒険者たちがざわついた。
「おい、あれ……」
「“灰狼”の……」
「なんでこんな街に」
女は立ち止まり。
掲示板を見る。
その瞬間。
ノアと目が合った。
数秒。
女の目が細くなる。
空気が変わる。
ピップが小さく言った。
「……なんか怖い人来た」
女はノアをじっと見ていた。
観察するみたいに。
そして。
ぽつりと呟く。
「……妙なのがいる」
ノアも見返す。
「……強い」
女の口元がわずかに動いた。
笑ったのかもしれない。
だが。
その直後。
街の奥から悲鳴が聞こえた。
「きゃああああっ!!」
全員が振り返る。
次の瞬間。
鐘の音。
ゴォン――
街の空気が凍った。
ノアの内部が反応する。
「……同じ音」
人々がざわめく。
「また鳴った!?」
「北区画だ!!」
黒髪の女が剣へ手をかける。
ノアも動いた。
ピップが叫ぶ。
「ノア!?」
街の奥。
煙。
悲鳴。
そして。
赤い光が、建物の影で揺れていた。
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後書き
今回は、
* 初の大都市
* 冒険者ギルド
* 街の中へ広がる異常
を描きました。
そしてラスト。
新たな強者が登場。
ここから旅は、
“世界の中心側”へ近づいていきます。




