表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
REMNANT ― 廃棄予定の旧式兵器は、異世界で家族を得て心を覚える ―  作者: 和泉發仙


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
46/52

第46話 街道の夜戦

前書き


旅の火は、人を集めます。


でも。


光がある場所には、

時々“別のもの”も寄ってくる。


今回は、

街道野営地での共闘回です。


ノアだけじゃない。

ピップだけじゃない。


それぞれが、

それぞれのやり方で戦います。






 夜風が止まった。


 焚き火の炎だけが揺れている。


 旅人たちの笑い声は、もうない。


 全員が街道の暗闇を見ていた。


 赤い光。


 一つじゃない。


 二つ。


 三つ。


 どんどん増える。


 馬が怯えて暴れた。


「落ち着け!!」


 護衛の男たちが必死に手綱を掴む。


 だが馬は震えている。


 本能で分かっているのだ。


 “普通じゃない”。


 マルタがゆっくり立ち上がった。


 巨大な斧を肩へ担ぐ。


「……数は?」


 ノアが暗闇を見る。


「九」


 周囲が凍った。


「きゅ、九ぅ!?」


 ディンが声を裏返す。


 ベラスの顔も青い。


「こんな街道近くまで来ているなんて……」


 ユナはローブを強く握っていた。


 だが逃げていない。


 ノアは気づく。


 みんな怖がっている。


 でも。


 ここには逃げ遅れた人が多い。


 荷馬車。


 馬。


 子ども連れ。


 だから。


 誰かが残らなければならない。


 マルタが低く言った。


「護衛組、前へ」


 三人の護衛が武器を抜く。


 剣。


 槍。


 弓。


 だが。


 彼らの目に余裕はない。


 ピップがノアへ近づく。


「……どうする?」


 ノアは周囲を見る。


 野営地。


 焚き火。


 荷馬車。


 地形。


 そして。


 壊れた存在たち。


 動き。


 速度。


「……狭い」


「え?」


「ここ」


 ノアは荷馬車の位置を見る。


 街道は広くない。


 馬車を並べれば。


 通れる場所は限られる。


「ピップ」


「うん」


「動かせる?」


 ピップはすぐ理解した。


「道を作るのか」


 ノアが頷く。


「一度に来る数を減らす」


 マルタが目を細めた。


「なるほどな」


 次の瞬間。


 壊れた存在たちが霧の中から飛び出した。


「来るぞぉぉ!!」



 最初に突っ込んできたのは、男だった。


 服はボロボロ。


 だが。


 異常に速い。


 護衛の槍が突き出される。


 だが。


 壊れた存在はそのまま槍を掴んだ。


「なっ!?」


 力任せに引き寄せる。


 護衛が崩れる。


 そこへ。


 マルタの斧。


 ドゴォン!!


 壊れた存在が吹き飛ぶ。


「ぼさっとすんな!!」


 マルタが吠える。


 だが。


 吹き飛んだ個体がすぐ起き上がる。


 周囲が息を呑んだ。


「嘘だろ……」


 ベラスが震える。


「痛覚が壊れてる……」


 別方向。


 今度は二体同時。


 ピップが叫ぶ。


「今だ!!」


 旅人たちが荷馬車を押す。


 ガガガガ!!


 街道の中央へ馬車が並ぶ。


 道幅が狭くなる。


「よし!!」


 壊れた存在たちは、一気には来れない。


 一列になる。


 ノアが前へ出た。


「止める」


 一体目。


 踏み込み。


 ノアが半歩ずれる。


 腕を掴む。


 回転。


 関節制御。


 ガギッ!!


 壊れた存在が崩れる。


 即座に二体目。


 首へ触れる。


 重心崩し。


 膝破壊ではない。


 動線停止。


 崩れる。


 マルタが目を見開いた。


「なんだそりゃ……」


 ノアは壊していない。


 でも。


 立てない。


 完全に戦闘不能。


 壊れた存在たちは暴れる。


 だがノアは、必要以上に力を入れない。


「すご……」


 ピップが呟く。


 だが。


 次の瞬間。


 後方から悲鳴。


「きゃあああっ!!」


 別方向。


 崖側。


 壊れた存在が回り込んでいた。


「しまっ――」


 ディンが青ざめる。


 子ども連れの荷馬車へ向かっている。


 ノアが振り返る。


 距離。


 間に合わない。


 その瞬間。


 ユナが前へ出た。


 ローブの奥から、小さな石を投げる。


 地面へ。


 パリン。


 白い煙。


 壊れた存在が止まる。


「え?」


 ピップが目を丸くする。


 ユナが小さく言った。


「……閃光粉」


 壊れた存在たちの動きが乱れる。


 光に反応した。


「今!!」


 マルタが飛び込む。


 大斧が横薙ぎ。


 ドゴォッ!!


 二体まとめて吹き飛ぶ。


「おらぁぁぁっ!!」


 地面が揺れる。


 マルタは強かった。


 豪快。


 でも。


 ただ振り回しているわけじゃない。


 ちゃんと守る位置に立っている。


 ノアはそれを見る。


 戦い方。


 守り方。


 人によって違う。



 だが。


 数が多い。


 霧の奥からさらに赤い目。


 ベラスが叫ぶ。


「まだいる!?」


 ノアが見る。


「十四」


 全員が絶句した。


「増えてんじゃねぇかぁぁ!!」


 ピップが半泣きになる。


 鐘は止まっている。


 なのに。


 なぜ。


 ノアは気づく。


「……違う」


「え?」


「これは命令じゃない」


 壊れた存在たちの動きが違う。


 鐘の時より乱れている。


 つまり。


 自律。


「残ってる」


 マルタが眉を寄せた。


「何がだ」


 ノアは赤い目を見る。


「本能」


 腹が減る。


 光へ集まる。


 生きていた時の癖。


 そういうものだけが残っている。


 だから。


 危険。


 予測できない。



 壊れた存在が一斉に飛び込んできた。


 野営地が崩れる。


 火が散る。


 馬が暴れる。


 悲鳴。


 ノアが前へ出る。


 だが。


 全部は止めきれない。


 一体。


 二体。


 三体。


 処理が追いつかない。


「ノア!!」


 ピップが叫ぶ。


 ノアは振り返る。


 ピップが松明を掲げていた。


「火だ!!」


 ノアの目が開く。


 谷の村。


 老人の言葉。


『本能は残っとる』


 ノアは焚き火を見る。


 そして。


 荷馬車の油樽。


「……使う」


「え!?」


 ノアが樽を持ち上げた。


 周囲が絶句する。


「ちょ待っ、そのサイズを片手で!?」


 ノアは地面へ投げる。


 ドガァン!!


 油が広がる。


 そして。


 松明。


「ピップ」


「お、おう!!」


 投げる。


 火が走る。


 ゴォォッ!!


 炎の壁。


 壊れた存在たちが止まる。


 赤い目が揺れる。


 本能。


 恐怖。


 まだ残っている。


「下がった!!」


 護衛たちが叫ぶ。


 マルタが笑った。


「頭使えるじゃねぇか!!」


 ノアは火を見る。


 熱い。


 危険。


 でも。


 守れる。


「……止まった」



 だが。


 その時だった。


 霧の奥。


 さらに巨大な影。


 重い足音。


 ズシン。


 ズシン。


 全員が止まる。


 赤い目。


 今までより高い位置。


「……熊?」


 ピップの声が裏返る。


 霧の中から現れたのは。


 巨大な獣だった。


 だが。


 普通の熊じゃない。


 片目が潰れ。


 肉が裂け。


 骨が見えている。


 それでも動いている。


 赤い目で。


 ノアを見る。


「……壊れてる」


 熊が咆哮した。


 街道中が震えた。




後書き


今回は、


* 初の街道共闘

* ノア以外の戦い方

* 「本能だけ残った壊れた存在」


を描きました。


そしてラスト。


ついに“壊れた獣”が登場。


旅はさらに危険になっていきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ