59.異形の正体判明! 黒い塊は未来へ繋がるタイムマシンだった
翌朝。
神域の大広間には、主だった将たちがすでに揃っていた。
劉備、関羽、張飛、趙雲。
紅陽、紅仁。
そして張世平や織、かすみまでもが席に着いている。
廠はゆっくりと立ち上がり、皆を見渡した。
「今日は、俺たちの“出自”について話す」
その言葉に、場の空気がわずかに揺れた。
紅陽と紅仁は静かに頷き、織は廠の横でそっと手を握った。
廠は深く息を吸い、語り始めた。
「俺はかつて劉禅という者に転生していた。劉備殿、あなたが本来の歴史でもうけたあなたの子供にだ。紅陽、紅仁もまた、同じく別の時代から来た者だ」
ざわめきが広がる。
「織は、張飛殿が本来の歴史でもうける貴方の娘だった」
「え?」
廠は続けた。
「俺は、今回で三度目の時代なんだ。この時代に来た時に聞こえたんだ」
廠は拳を握りしめ、静かに言った。
「『異形を倒せ』、と」
劉備が息を呑む。
「やはり、廠殿は“導かれて”いたのですな」
廠は頷き、昨日見た黒い塊のことを語った。
「そして、あの黒い塊あれは“巣”ではない。異形を生み出す源でもない。あくまでも仮説だが、タイムマシンだ」
場が静まり返る。
張飛が目を丸くした。
「たいむ……何だって?」
織が補足するように言った。
「時間を越える装置よ。未来から過去へ、過去から未来へ、物を送る…そういうもの」
趙雲が息を呑む。
「では…異形は未来から?過去から?」
廠は頷いた。
「おそらく、どちらもある。あの塊は異形を回収していた。つまり、異形はどこか別の時代へ移動している」
劉備は深く頷いた。
「なるほど。神域の存在、紅陽殿たちの力、廠殿の力。すべてが“時間”と関わっていたのか」
関羽も腕を組み、静かに言った。
「むしろ、そう考えれば全てが繋がる。神域が異形を拒む理由も、廠殿の力も」
張飛が大きく頷いた。
「つまりだ!どこの世界に送られてるかは知らねぇが、異形は別の時代から来て、別の時代に帰ってるってことか」
紅仁が地図を見つめながら言う。
「問題は…その時代がどんな世界なのか、ですね」
廠は静かに言った。
「わからない。だが、ひとつだけ確かなことがある」
全員の視線が廠に集まる。
廠は槍を握りしめ、言い放った。
「異形は、滅ぼさなければならない」
紅陽が頷く。
「殿、我らはそのためにここにいる」
劉備も、静かに言った。
「廠殿。我らも覚悟はできております。異形がどこから来ようと、人の世を守るために戦うだけです」
張飛が拳を叩きつける。
「未来だろうが過去だろうが関係ねぇ、出てくるなら全部ぶっ倒すだけだ」
関羽は静かに目を閉じた。
「異形が時を越えるなら…我らは“今”を守るのみ」
趙雲が槍を構えた。
「廠殿。次の戦いは、これまでとは違うものになりますな」
廠は深く頷いた。
「そうだ。だが、俺たちならできる。異形を滅ぼし、この時代を守る。それが、俺たちの使命だ」
軍議の空気が、静かに、しかし確実に熱を帯びていく。
こうして、廠たちは“異形殲滅”を改めて誓い、次なる戦いへと歩み始めた。
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兗州北部。
曹操軍は異形の大群と対峙していた。
だが、その瞬間は突然訪れた。
「殿! 異形が…後退しています!」
荀彧の声に、曹操は眉をひそめた。
「後退? 包囲されているのだぞ」
だが、異形は後退ではなかった。
まるで“何かに引かれるように”、一斉に同じ方向へ走り出したのだ。
「……何だ、あれは」
程昱が指差す。
「殿、見てください。あの黒い塊のようなものに、吸い込まれていきます」
異形の死骸、生き残り、巨大な個体までもが、光に包まれ、跡形もなく消えていく。
曹操は剣を握りしめた。
荀彧が息を呑む。
「殿、これは人の力では理解できぬ現象です」
曹操は静かに言った。
「だが、廠ならば知っているかもしれぬ。すぐに神域へ使者を送れ」
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江東・長江。
孫策が叫んだ。
「父上! 半魚人どもが、逃げていきます」
孫堅は目を細めた。
「何だと」
長江の水面が渦を巻き、その中心に黒い球体が浮かび上がる。
周瑜が驚愕の声を上げた。
「殿、あれは、鄴で見られたという“黒い塊”と同じものでは?」
半魚人の群れが次々と吸い込まれ、水面は静寂を取り戻していく。
孫堅は剣を収め、静かに言った。
「廠殿なら何か知っているかもな。知らせよう」
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雍州の荒野。
呂布は千騎を率いて異形の大群と戦っていた。
だが、突然、異形が動きを止めた。
「……?」
呂布が槍を構えたまま見つめると、異形たちは一斉に同じ方向へ走り出した。
「逃がすか!」
呂布が追おうとした瞬間、地平線の向こうに黒い光が立ち上がった。
陳宮が叫ぶ。
「呂布殿、あれは」
異形が光に触れた瞬間、まるで“存在そのもの”が消えるように消滅していく。
呂布は槍を下ろし、呟いた。
「……戦う相手がいなくなっただと」
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神域の本営。
廠たちが軍議を終えた直後、三方向から同時に伝令が駆け込んだ。
「曹操殿より急報! 異形が光に吸い込まれ消失したとのこと」
「江東より報告! 孫堅殿の戦場でも同じ現象が」
「雍州より呂布殿の使者! 異形が一斉に消えたと」
大広間がざわめく。
劉備が廠を見る。
「廠殿。これは、もはや偶然ではありませんな」
「異形は…回収されている。未来か、過去か、別の世界かはわからない。だが、次に現れる時は、もっと大きな“波”になるかもしれない」
紅陽が息を呑む。
「殿、もしや本隊が?」
廠は静かに言った。
「備えるしかない」
神域の空気が、静かに、しかし確実に張り詰めていった。




