6話 今はなき故郷が同じ者達 1
はぁ……妙な気配を遠くで感じたので視覚を強化してみたらまさかのところを見てしまった。念のために竜装で弓を作り構えていたけど、懐かしい奴だったので辞めた。あの女神は最後まで試練に反対していた奴だから根っから悪側ではない。それはそれとして敵として向かってきていたので他の十二支神含めて叩き割ったがな。
その時は殺すことは出来なかったが今は神殺しはできるからやり合うのであれば必ず殺す。うーん……馬神が降ろされているってことは他の十二支もいるだろうから警戒しないといけないな。流石に俺の正体には気が付いていないみたいだから少しだけ安心だわ。バレていたとしても馬神ならすぐには来ないだろうな。一番温厚な奴を初手で引いたから良かった。
フードを被っていて顔が確認出来なかったが……おそらくは龍の巫女だな。しかも今代ではなく相当前の巫女が転生してきたのだろう。転生者は昔も今もそこそこ居るから別に問題はそこじゃない。転生した奴が問題だ。俺のことを見分けられる奴だった場合はヤバいから口封じしないといけない。そもそもあの美稲だったらまた殺さないといけなくなるのは嫌だ。何が楽しくて親友の妹をまた殺さないといけない。
「・・・元凶を探してみるか」
俺が産まれた時代はここまで魑魅魍魎がはびこっていなかった。ダンジョンなんて4ヶ所しかなかった。まぁ当時はダンジョンなんて呼び名ではなく試練の何々って奴だったしな。俺は一切入ったことなんて無かったから知らないが入った奴からは天国や地獄など、感想がわかれていたな。こんな世界になってからダンジョンに入ったが不思議な空間ってだけで特にこれといって何もなかったな。異世界なら結構ああいう感じの場所は多かったし。
「隊長、入ってもよろしいでしょうか?」
「・・・副隊長か。大丈夫だ」
「黒竜討伐と……学園の入試の日程が決まりました」
「それで?」
「黒竜討伐は隊長一人で明後日です。入試はその一週間後になります」
「分かった。ありがとう」
「失礼いたします」
副隊長が出て行ったのを見届けた後……俺はベッドに腰掛け「無理じゃね?」と呟いた。一週間後ってアホなのかな? 黒竜討伐が明後日になったのは別にいいけどさ、一人ってどういうことよ。赤竜を殲滅してまだ三時間しか経ってないのに速攻で決めすぎじゃん。あの配信とかいうものを貴族共が見て俺のことを潰そうとしてやがるんだろうな。どの世界でも時代でもあったことだから別にいいんだけどさ、なんかムカつくから無傷でやってやるか。
入試に関しては……ロイにでも聞けばなんとかなりそうだから黒竜討伐後にでも勉強を見てもらうか。これからは、修行をしないとな。ロイ特製の弱体化アイテムは悪いが……俺の技術にはあまり効果がないみたいだからな。せいぜい魔力が抑えられるだけで気や魂までは抑え込めてはいない。これで弱体するってんだからどれだけ現代の奴らが弱いのかがわかるよねぇ。おっと、軽く荷物をまとめて山籠りしないと。
俺は副隊長に近くの山に2日は籠ることを伝えて修行場に着いた。ここには黒竜よりも弱いがさっきの赤竜共を虐殺できるくらいのがうじゃうじゃいるし気温や天気などが毎時間変わる。修行場にはもってこいの環境だ。・・・ただ山の中には入れないなぁ。クソ強い奴の気配が山頂から感知できてしまっているし、植物以外の気配が一切ない。修行にはもってこいの環境だったのだが流石に相手にするのが面倒なのがいるとなると撤退だな。
【鈍ったのぉ? 輝石よ】
「なんで……お前が居___」
背後から懐かしい声が聞こえたので振り返るとそこには黒目黒髪の爽やかな青年がいた。大昔によく握り飯を食いながら話した友が…………何も変わらない姿のまま居て疑問が出てきてしまった。だから何故ここにいると聞こうと声に出した瞬間、俺は吹き飛んだ。何も反応できないほどの速度で蹴りをくらったのだ。あの野郎、俺の動揺を誘うために敢えて名前を呼びやがったな。
【平和ボケでもしたのかぃ? 儂より強くなくてはのぉ?】
「黙れ……お前はそんな喋り方じゃないだろ」
【・・・それはお前にも言えるだろ。輝石】
確かに俺の喋り方はこれじゃない。親友を殺した後にその口調や一人称を変えた。だからそれを指摘されると俺は何も言い返せない。だけどその殺した親友が目の前に居て動揺なんてしない奴がいるわけがないだろ。転生したなら分かるがそういうわけではない。近くで見たから分かったがこの気配は……“イシガミ”だ。何故、お前がそれになっている? と問いただしたいが今はやめておく。
また殺し合いしないといけないのか……雅人。俺は一度殺した友をまた殺したくないから頼むから何もしないままでいてくれ。そんな願いは虚しく
【儂はお主と殺し合わないといけぬ】
と冷たく言い放った。お前は……そういう奴だよなぁ。自分の使命は操られたとしても絶対にまっとうするクソ真面目だよな。だから俺はその覚悟に応えないとな。
「雅人……思う存分、ワシと遊び尽くさぬか?」
【覚悟は決まったのか。ならオレも全力じゃないとな】
俺は右手に刀、左手に斧を持って……雅人はその逆で右に斧、左に刀を持ってゆっくりと距離を縮める。雅人の奴は本気で殺し合う気はないみたいだな。おそらくは誰かに監視されているからこんな風に演技しているんだろう。一体、誰に監視されているのかは分からないがロクな奴じゃないことは確かだな。色々と面倒なことが多すぎるだろ。黒竜討伐や学園への入学、友を操っている奴らの捜索。
【オレ、雅人は】
「ワシ、輝石は」
殺し合いという名のじゃれ合いをする前に、俺らがいつもやっていた。誓いをする。
【地に流れる】
「天に流れる」
俺と雅人の斧と刀がぶつかる。衝撃波だけで大地が揺れる。雅人の斧が俺めがけて振り下ろされるので俺は刀で下から振り上げる。雅人は身体を捻りながら上へ避ける。俺はしゃがみながら左へ避ける。雅人の斬撃は山を裂き、俺の斬撃は天を破る。距離を一旦あけお互いに確認して口角をあげる。
【あいも変わらずデタラメだな】
「ヌシも言えんじゃろ」
【「・・・殺す」】
お互いに手の内を見せないように相手が知っている攻撃方法を繰り広げる。周りへの被害なんてお構いなしにただ相手を殺す気で、手を抜きながら攻撃を繰り返す。大技を使わずに斧と刀だけでやり合っているので相当手を抜きている。
「それで、お前が生きている理由は?」
【それは応えれぬよ。儂から言えるのは___】
〔お二人ともおやめください〕
どこからか狐のお面を付けた巫女がこちらに歩いてきた。声が聞こえるまで一切、気が付かなかった。ありえないと言いたいところだけど雅人が攻撃の手を止めたので俺も止めざるおえない。この女は妙な気配がするな。龍の巫女だとは思うが流石にこんな気配ではなかったはずだ。少なくとも今代のはだが。
〔輝石様、ご満足でしょうか?〕
【お主にじゃまされなかったらのぅ】
「・・・お前らはなんだ?」
雅人が何故、輝石と呼ばれた? 雅人が目で何もきくなって訴えてきたから敢えて正体を探るように言ってみたが……どう出るのかわからないな。俺のことを殺そうとしてこないあたり何かの神の使いって感じなのかね。雅人を呼び戻しに来たって感じのね。
〔これ以上、被害を出してはほしくありません〕
俺の質問はスルーなのね……この感じ妹ちゃんでは無さそうだな。しっかしこの気配は知っている筈なのだが思い出せないな。雅人の出現も気になるが一番、気になって仕方ないのはこの女だ。巫女見習いだった妹ちゃんとは違ってホンモノの雰囲気がある。
【廻之離殿、時間切れのようじゃ】
〔のようですね。“イシガミ”の中でもうしばらくお待ちください〕
【うむ。ゼロビト殿、楽しめたぞ】
「は? おい待っ___」
雅人は消えた。正しくは顕現時間は切れたので元の場所に戻った。廻之離……お前は俺らと同じ故郷で妹ちゃんの師匠で龍の巫女。俺がこの手で細切れにした男だ。なのに何故、生きてる? 転生したのか? それとも生き返れたのか? しかもお前がどうして雅人と俺を間違えるようなことになっている? ありえない筈だろ。
〔ねぇ雅人〕
恐ろしく冷たくて低い声で雅人の名前を呼ぶ。俺は反応出来ずにその場で固まってしまった。流石に此処までコイツから敵意を向けられたことがなかったので驚きが勝ってしまった。雅人はコイツに一体何をしたんだよ。廻之離の護衛役だったろお前は。
〔なんで輝石くんと同じ目と髪の色しているの?〕
はぁ? 俺は元々このい__まさか認識していないのか。雅人なら催眠術くらいなら簡単に出来るだろうがここまで影響はさせれないだろ。せいぜい一瞬混乱されるくらいのモノしか出来ないって本人も言っていたのに何故ここまでくらっている?
〔しかもさぁ魔巫も転生してるしさぁ〕
「してるのか!!」
〔知らなかったの? ははっどんまいだわ〕
「どこにいるか知ってるんだな?」
〔教えてあげないわよ。ワタシも帰るからぁ〜〕
何がなんでも探してやる。君に謝りたいことがあるんだ。もし何も覚えていなくても。




