第49話 「二つの黒い影」
某月某日。
時計の針は、夜の十八時五十五分を指している。
日暮れが早いのか、すでに周りの景色は暗く、静かである。
場所は、都内にあるジャパンサッカースタジアムだ。
ジャパンサッカースタジアムは、日本国内では三番目に大きな総合競技場である。
その大きさは、東京ドームの一・二倍に相当し、収容人数は約七万人を超える。
敷地内には、陸上用のトラックからサッカーの試合が出来るフィールドまで整備され、スタンドの内部や外部にまでいろいろな設備が備わっている。
サッカーの試合で使用されるフィールドは、天然芝で覆われ、交際試合にも使用される程である。
夜と言うこともあり、ナイターの照明が競技場内を隅から隅まで照らしている。
そして。
そのジャパンサッカースタジアムのフィールド内に、二人の男が立っていた。
一人は、香川浩介である。
またの名を、「快楽の狂戦士」「サディスト香川」とも言う。
身長・百八十五センチ。
体重・百五キロ。
年齢・二十六歳。
頭髪は黒色で丸坊主だが、顔は目鼻口が整っていてハンサムで、どこかの雑誌のモデルにでも十分なれそうな外見である。
首は太く、胸板は尋常ではないほどの厚さを誇っている。
腕もかなり太く、血管が隆々に浮き出ている。
特徴は、左右の耳に付いている五個のリング型ピアスである。
日本裏社会の「暴武」部門のルーキー達の中でも、頭一つ飛び抜けた強さを誇っている。
服装は、上半身は派手なアロハシャツを着ていて、下半身は黒色の皮製のズボンを穿いている。
もう一人は、戸倉一心だ。
またの名を、「暴力の絶対者」「ゴッドハンド戸倉」とも言う。
身長・百七十六センチ。
体重・百キロ。
年齢・四十歳。
銀色の長い髪を後ろで束ね、金縁の眼鏡をかけている。
特徴は、その大きな掌であろうか。
成人男性の二倍はあろうかと言う程の大きな掌を持っており、その握力は二百キロを軽く超えるのだ。
日本裏社会の「暴武」部門の頂点に君臨し、暴力の世界で彼を超える逸材は存在しないとまで言われている。
服装は、白いスーツに黒色のシャツを着ていて、ネクタイは真っ赤な赤色である。
靴は白色のエナメル靴を履いている。
「しかし~よくこんな場所を~貸し切れましたね~」
香川浩介は、フィールドに敷き詰められた天然芝を蹴った。
「夜の数時間程度ですからね。簡単なことです」
戸倉一心は、軽く言ってのける。
「さすが戸倉さん~凄いっすわ~」
香川は、フィールドからジャパンサッカースタジアムをぐるりと一望する。
余りの広さに心細ささえ感じる程だ。
「西牙の奴は~ちゃんと来ますかね~?」
香川は戸倉を横目で見た。
「彼は来ますよ。一番最初に会った時に、私に騙されていますからね。ああいう人間は、侮辱されることを一番嫌いますからね・・・」
戸倉はズボンのポケットに両手を入れた。
ゆるやかな風が、フィールドの天然芝を軽く撫でる。
競技場の二階スタンド辺りにある大きな針時計は、十九時を指した。
その時。
競技場の正面入り口に黒い人影が現れた。
選手達が試合に向かう時に出て来る入り口である。
黒い人影は背中にナイターの照明を一斉に浴びている為に、誰であるのかがまったくわからない。
そして。
その黒い人影の後ろに、もう一つ。
いや、もう一人の人影が同じ様に動き出す。
そう。
黒い人影が、全部で二つ現れたのである。
「ん・・・?!」
戸倉一心は顔を横に向けると、競技場の入り口に目を向けた。
ナイターの照明が強烈過ぎて、目を細める。
「誰だ~?あれは~?」
香川浩介も、同じ様に両眼を細める。
二つの黒い人影は、ゆっくりとした歩調で前進し、戸倉と香川のいるフィールドに向かって来る。
じゃりっ。
じゃりっ。
先頭を歩いている黒い人影に比べて、少し後ろを歩いている人影はかなり大きい。
じゃりっ。
じゃりっ。
徐々に近付いて来る二つの黒い人影。
ナイターの照明をを浴び、二つの人影から影がフィールドに伸びる。
「・・・・・」
戸倉一心は、じっくりとその二つの人影を見た。
「ん~?」
香川浩介も体を正面に向け、その二つの人影を見る。
そして。
戸倉一心と香川浩介は驚愕するのである。
「ば・・・馬鹿な・・・?!」
戸倉一心は両眼を大きく見開いて、口をあんぐりと開ける。
「な~な~何~?!」
香川浩介も両眼を大きく見開いて、驚きの表情を崩さない。
二つの人影。
一人は、言わずと知れた西牙丈一郎である。
身長・百八十二センチ。
体重・九十三キロ。
年齢・二十六歳。
顔は目鼻が綺麗に整っていて、肌は浅黒い。
鼻頭には横1直線に深い傷があり、髪は茶色に染めてはいるがボサボサで、白い帽子を被っている。
特徴は、人間の常識を超えた身体能力と、怪物的な肉体の潜在能力である。
その筋肉は野生の肉食動物を凌駕し、体脂肪率は二パーセントを切る程である。
服装は、黒色のトレーナーに黒色のジャージを着ている。靴は、動きやすいスポーツシューズを履いている。
そして。
もう一人の人影は。
なんと!!




